プレッシャーとサーブ力の差で崩れた植田ジャパン=北京五輪・男子バレー 日本 1−3 イタリア
イタリアに対する過剰な意識が、プレッシャーとなった
歓喜に沸いた2カ月前の五輪世界最終予選、初戦で対戦したのがイタリアだった。セットカウント2−1とリードした第4セット、24−17とマッチポイントに到達したところからまさかの逆転負け。12人全員が「これまで経験したことがない」と語るほどの悔しさが、その後の勝利を生み出す原動力になったことも間違いないだろう。
結果として、最終予選ではそこからチームが奮起し、4大会ぶりの出場権を手にした。 また、この悔しい思いをしたからこそ、オリンピック本大会での対戦が決まって以来、選手の多くが「イタリアに勝って(最終予選の)リベンジを果たしたい」と口にしていた。
どこか特別な感情を抱きすぎていたのかもしれない。
事実、エースの越川優(サントリー)も、初戦を終えた後にこう言っている。
「“イタリア”ということを意識しすぎていたかもしれない」
オリンピックのプレッシャー、そして対イタリアへの過剰な意識から生じるプレッシャー。いくつもの重圧が、日本の抱える不安要素を浮き彫りにさせた。
サーブ力の違いが試合を決定付けた
強烈なジャンプサーブを武器とする越川、石島雄介(堺)、山本隆弘(パナソニック)の3人は、とにかく思い切り、サーブから攻めの姿勢を打ち出す。オリンピックの直前まで開催されていたワールドリーグのみならず、最終予選、さらにさかのぼれば昨秋のワールドカップでも植田辰哉監督は「(ジャンプサーブを打つ)3人はミスを恐れず、思い切り攻めること」と掲示し続けた。
だが、オリンピック本番で、そのサーブが入らない。
反対に、イタリアは攻めのジャンプサーブと、攻撃の的を絞らせるために「誰にどこで取らせる」と狙いを定めたジャンプフローターサーブをうまく打ち分け、日本の守備体型、攻撃体型を面白いように崩していく。
勝敗を決定づけたのは、セットカウント2−1とイタリアリードで迎えた第4セットだった。
序盤は両者がサイドアウトを取り合い、5−5と一方がリードを奪うことなく拮抗(きっこう)した展開が続く。だが、ここでイタリアのサーバーは15番のビラレッリ。最終予選で24−17からジャンプフローターサーブで日本の勝利を打ち消したあのサーブが、また日本を勝利から遠ざけた。
荻野投入も、止められなかった守備布陣の決壊
このローテーション時、植田監督が最優先とする攻撃は「ライトからスピードを生かした越川のストレートスパイク」なのだが、清水もレフト打ちを器用にこなせる選手であるため、どのカードを選ぶかはセッターの朝長に託される。
202cmのビラレッリが高い打点から放つジャンプフローターサーブは独特の軌道を描きながら、日本コートへ。サーブレシーブをしたのは、本来はサーブカットを行わないセンターの山村宏太(サントリー)。朝長はレフトの清水へトスを上げたが、タイミングが合わずイタリアのレシーブから切り返され、5−6。さらにビラレッリが続けてサービスエースを奪い、5−7。流れが、イタリアに傾き始めた。
さらに中盤、イタリアのサーバーはマストランジェロ。本来は強烈なジャンプサーブを打つ選手なのだが、そのジャンプサーブを警戒したシフトを敷いていることを確認すると、ジャンプサーブだけでなく、コート前方を狙ったジャンプフローターサーブを織り交ぜ、日本の守備をかき乱す。石島に代わって主将の荻野正二(サントリー)を投入したが、サーブレシーブの名手をもってしても守備布陣の決壊を防ぐことはできず、3本のブロックポイントを含む6連続失点で9−16、そのままリードを守ったイタリアがセットカウント3−1で勝利した。
確かに不安要素は露呈し、手痛い1敗を喫したことは事実だ。
だが、落胆することはない。
まだ戦いは始まったばかりなのだから。
まさかの逆転負けから、奇跡の7連勝で16年ぶりの出場権を手にしたときのように、攻める気持ちを取り戻せば、結果はきっとついてくる。
燃え尽きるには、まだまだ早すぎる。
<了>
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