五輪戦士たちの穴を埋める若鷹は誰だ!?

田尻耕太郎

新外国人野手の補強はならず

 最後の「1枠」を埋める新外国人選手は来なかった。今季の補強期限だった7月31日、福岡ソフトバンクは育成選手だった吉川元浩を支配下選手登録し、2008年型のホークスはようやく最終形を迎えた。球団はぎりぎりまで外国人野手の獲得に奔走したようだが、契約には至らなかった。
 しかし、新たな外国人選手は必要だったのだろうか。個人的には吉川の登録に賛成したい。プロ11年目。昨季オフに巨人を戦力外になりホークスに拾われた。1軍での実績は06年に放った2安打のみだが、ここまでウエスタン・リーグトップの8本塁打を放っている長打力は魅力だ。また、今季は若手選手の台頭が例年より目立っている。長谷川勇也や中西健太はその代表格だ。王貞治監督は球宴前までの戦いを「(故障者の続出で)苦しい戦いだった。だが、だからこそ若い選手たちが出てきた。悪いことばかりではなかった」と総括した。外国人選手の加入はチームの活性化につながるかもしれないが、新たな息吹を摘んでしまう危険性もある。今季のチームの流れからすれば、若い力に期待したいところだ。

高卒ルーキー岩嵜の潜在能力に期待

 8月3日から後半戦が始まる。首位に5.5差の3位からの逆襲――。しかし、8月下旬までは杉内俊哉、和田毅、川崎宗則の五輪戦士たち抜きで戦わなければならない。
 先発ローテ2人の穴は、パウエルやガトームソンら外国人投手で埋める手はあるが、あえて若手投手に期待したい。まず名前を挙げたいのが高卒ルーキーの岩嵜翔だ。岩嵜は7月23日のオリックス戦(ヤフードーム)で電撃デビュー。先発としてマウンドに上がり3回3失点で降板したが、最速は147キロをマーク。さらに強打者のカブレラに対して初球から90キロ台のカーブを投げ込む度胸の良さを見せた。結果だけを見ればほろ苦いデビュー戦だったが、捕手の高谷裕亮は「いつもとは全く違う。アイツはこんなものじゃない。そういえば2軍で最初に投げた試合もこんな感じだった。2度目は大丈夫ですよ」と話していた。25日に出場選手登録を抹消されたが、その後も1軍に帯同する「英才教育」を受けた。王監督も「物おじせずよく投げた」と投球内容を評価しており、2度目の1軍マウンドは遠くないはずだ。

 さらに3年目での1軍デビューを狙う大型左腕もいる。身長191センチで「ランディ」の愛称で呼ばれる大田原隆太だ。今春のキャンプで初めてA組入りを果たしながら不調でファーム暮らしを続けていたが、6月過ぎから好調に転じて現在はファームで先発ローテーションの一角を担っている。
「キャンプでは自分のペースを見失ってしまいました。去年はシーズンが進むにつれて調子を落としたけど、ことしは逆。大事な時期に好調でいられることは自信になります」
 ちょうど1年前に「星野ジャパン」入りしてプレ五輪に出場した逸材でもある。「杉内さんと和田さんが抜ければ左投手は必要とされますからね」とニヤリと笑った。

川崎の抜けるショートは大激戦

 一方、川崎の抜けるショートは激戦区だ。最有力はチームトップクラスの俊足を誇る明石健志か。打撃センスも非凡で、チームメートからも「アイツは天才」という声が上がるほどだ。また、打撃で王監督から評価を受けているのは仲澤忠厚。守備で高評価の森本学は先日の練習中にボールを顔面に当てて骨折。手術も受けたが、すでに練習を再開しており、奇跡の復活に向けて気合を見せている。ファームには本間満もいる。金子圭輔は外野との二刀流でチャンスをうかがっている。王監督は「相手の投手や状態を見て起用する」と話しており、全員にスタメンのチャンスはある。

※次回の掲載は8月29日の予定です。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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