鷹の代表3選手が語る北京五輪への熱い思い

田尻耕太郎

先発としての活躍が期待される両左腕

 北京五輪の野球日本代表に、福岡ソフトバンクからは和田毅、杉内俊哉、川崎宗則の3選手が選出された。いずれも国際舞台での経験があり、主力として期待されている。そんな彼らが日本代表に、そして北京五輪にかける熱い思いを語った。

 和田は2004年のアテネ五輪に続いて2大会連続の出場となる。アテネでは予選リーグ1試合と3位決定戦(いずれもカナダ戦)に先発して、2試合とも勝利投手になっている。しかし、和田は「それは過去のこと。北京ではゼロからのスタートだと思っています」と気を緩めない。
 今季はここまで8勝をマークしているが「不安定な内容」と反省の言葉ばかりだ。昨年オフに左ひじを手術した影響で開幕に間に合わなかったものの、4月には先発ローテ入り。それ以来その立場を守り抜いているが、完投はわずか2試合のみ。過去5シーズンで27完投(左ひじ痛のまま投げた昨季の2完投を含む)をマークしている左腕にはやや寂しい数字だ。とはいえ、代表チームでリリーフに回ることは考えにくい。先発の軸としてチームを支えることになるだろう。

 杉内は早くから代表入りを熱望していた。00年のシドニー五輪に続く2度目の五輪出場になるが、当時はチーム最年少の19歳、社会人野球の三菱重工長崎の投手だった。それでも、大事な予選リーグ初戦の米国戦、延長に入りなお同点という場面でマウンドに送られた。
「一番若い僕を信頼してくれて、投げさせてもらえたことが本当にうれしかった」
 しかし、延長13回に痛恨のサヨナラ弾を浴びた。その悔しさは今でも忘れていない。ちなみに、その後登板した南アフリカ戦では好投したが、今の杉内にその記憶はなかった。覚えているのは打たれたときの、あの思いだけだ。
「メダルも取れなかった。リベンジする意味でも金メダルを目指して頑張ります」
 今季の福岡ソフトバンクでは「エース」として先発の柱となっているが、日本代表でそのポジションが確約されているわけではない。しかし、杉内は先発入りへ意欲を見せている。「先発ならば絶対に抑える自信がある」と強くアピールした。

普段着野球でビッグプレーを

 川崎は、もう日本代表の常連と言っていい。06年のWBCと昨年のアジア最終予選ではいずれもレギュラーとして全試合に出場した。WBCで見せた“神の手”スライディング、アジア最終予選での3割6分4厘の高打率など大舞台では印象に残る活躍をしている。その秘訣は何なのか。
「そんなものはないよ。五輪だから特別緊張するわけではない。ホークスでやっているときもいつも緊張しているから。ホークスでやっている姿を、そのまま見せるだけですよ」
 その強いメンタルと持ち前の明るいキャラクターは、日本代表の星野仙一監督も高く評価していると聞く。今季はパ・リーグ安打数で断トツ1位を走るなど、体調的にはここ数年で一番いい。北京五輪でも、後世に語り継がれるようなビッグプレーを見せてくれるに違いない。

 また、彼らに五輪代表として戦うことや、選ばれた意味も聞いた。
「五輪とは、ひと言では言い表せられないくらい大きなもの。代表に選ばれたから簡単に『やった!』と言えるものではないと思います。これから少しずつ、その意味をかみしめていくと思います」(和田)
「すごく重たい。普段緊張しない僕が緊張しますからね。自分の力以上のものは、出そうと思っても出ない場所。いつも通りの投球スタイルで、僕の場合はとにかく力を抜いて投げるだけです」(杉内)
「プロに入ったころは五輪出場なんて想像したこともなかった。日の丸を背負って野球ができるのは重圧がかかることだけど、選んでくれた星野監督に感謝したいです。選ばれたからには試合に出たい。補欠でいいなんて選手はいません」(川崎)

 それぞれの思いを胸に、3人の若鷹が世界に羽ばたいていく。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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