2年目の高谷が正捕手にキタ〜!!=鷹詞〜たかことば〜

田尻耕太郎

プロ初のお立ち台から2夜連続のヒーロー

 7連敗、のち、6勝2敗。
 福岡ソフトンバンクが交流戦時の勢いを取り戻した。6勝のうち首位の埼玉西武戦で4つの白星をマーク。首位までのゲーム差は3にまで縮まった(7月17日現在)。今季最悪の大型連敗を喫したチームが好調に転じたのにはワケがある。1つの荒療治が、福岡ソフトバンクを変えた。

 チームの要である捕手に、2年目の高谷裕亮を起用した。大型連敗を止めた7月6日の千葉ロッテ戦(千葉マリン)で6回表に代打で登場してそのままマスクを被ると、その後失点を許さずチームの逆転勝利に大きく貢献した。8日の埼玉西武戦(西武ドーム)からはスタメンで登場。ここまでの7試合、フル出場を果たしている。
 そして、15日と16日にヤフードームで行われた埼玉西武2連戦では大活躍を見せた。初戦はプロ初の猛打賞を記録して初めてお立ち台に立つと、16日にはプロ初本塁打を含む3安打をまたもマーク。そして3本目の安打は、これまたプロ入り初のサヨナラ安打だった。この日は守りでも光るプレーを連発。5回表にパ・リーグ盗塁王ランキング断トツ1位の片岡易之の盗塁を阻止すると、続けざまに今季12盗塁の栗山巧も刺した。試合終盤にはファウルフライを追いかけて、1塁側ベンチに飛び込みながらもボールを離さないガッツあふれるプレーも見せた。王貞治監督への強烈なアピールも成功。「大きなケガなどない限りこのままいけるんじゃないか」と事実上の“正捕手”と認める発言も飛び出した。

社会人から大学へ進学した苦労人

 高谷は2年目だが、ことしで27歳になる。チームの同級生といえば川崎宗則と馬原孝浩。チームの主力を担ってもおかしくない年齢だ。経歴を見ると、小山北桜高から富士重工を経て白鴎大、そして2006年のドラフトで福岡ソフトバンクに入団した。違和感を覚える読者の方もいるだろう。社会人から大学へ。高谷は異色のルートをたどった選手なのだ。富士重工では故障のため満足なプレーができずに2年で退社。その後、浪人生活を経て、大学に進学して野球を続ける道を探ったのだ。故障が癒えた大学時代は大活躍。関甲新大学リーグの記録を塗り替える16本塁打をマークしている。

 苦難や挫折を味わっている高谷の人間性を高く評価する声も多い。ある新聞記者はドラフトの取材で彼に会っただけで「将来は選手会長になれる器だ」と言った。確かに取材の対応も丁寧。話す言葉もしっかりしている。そういえば、2日連続で立ったお立ち台でも「ピッチャーの方が頑張ってくださっているので」(15日)「投げてくださったので」(16日)と話していた。いかにも高谷らしい。ただ、マジメ一辺倒でもなく、ユニークなキャラクターも持ち合わせている。福岡のテレビ局では、織田裕二のモノマネをする山本高広のモノマネ「キタ〜!!」を披露していた。

 勝負どころの夏本番。これからもっとオモシロイ存在になるに違いない。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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