復活を遂げた和田が交流戦初優勝に導く

田尻耕太郎

巨人戦に連勝すれば初優勝

 初の栄冠へマジック2。福岡ソフトバンクは残り2試合を連勝すれば、交流戦初優勝をつかみ取ることができる。
 ここまで22試合を消化して14勝8敗は阪神と並んでトップの成績だ。両チームとも残りは2試合。ただし、自力優勝が可能なのは福岡ソフトバンクだけだ。交流戦優勝の規定には「勝率で並んだ場合は勝数が多い方、それも同じならば昨年の交流戦上位チーム」と記されている。昨季の福岡ソフトバンクは9位と低迷したが、阪神は10位だったので、勝敗で並んだ場合は福岡ソフトバンクが優勝となる。

 21日からの2連戦。福岡ソフトバンクは巨人と東京ドームで、阪神は北海道日本ハムと甲子園球場で戦う。巨人と北海道日本ハムはともに首位に1ゲーム差の3位につけており、優勝の可能性が残されたのはこの4チーム。日程の巡り合わせとはいえ、今季の交流戦は過去にない大激戦の様相を呈してきた。今週末は東西の激闘から目が離せない。
 
 優勝にもっとも近い福岡ソフトバンクの中で、交流戦期間中に生まれた言葉がある。「左腕3本柱」。先発ローテの中心となっている杉内俊哉、和田毅、大隣憲司の3投手を指したものだ。杉内と大隣は春先が不調、和田は昨秋に左ひじを手術した影響もありスロースタートだったが、ここにきて調子を上げてきた。先週は3投手が「完投勝利リレー」を決めて、チームでは5年ぶりの3試合連続完投勝利を記録した。大隣は19日の東京ヤクルト戦(神宮)で苦しみながらも7勝目をマーク。勝利のバトンは残る2人に託された。2連戦の初戦は杉内が先発し、交流戦のトリを飾るのは和田だ。

今季初完投で“完全復活”を確信

 杉内の好調ぶりについては「鷹詞〜たかことば〜Vol.11」(6月6日掲載)で記述した通り。一方、チームにとっては和田が調子を取り戻したことが大きい。

 和田はここまで11試合に登板して7勝2敗、防御率3.24の成績を残している。貯金の数はチーム最多。文句なしの数字に思えるが、和田自身は15日の横浜戦で今季初完投勝利を挙げるまでは、「先発をしてもイニングの途中で走者を残して交代したり、6回あたりで交代したりすることが多かった。それでは先発の仕事をしたとはいえない」と不満を感じていた。昨秋の手術の影響もあった。
「体力的には問題ないと思っても、100球前後になると打たれていた。悔しかった」
 しかし、完投した日の球数は132球だった。それも初回の1失点のみで、投球内容は回を追うごとに良くなっていった。
 その“コツ”は杉内と同じ。「力を抜いて投げること」だった。
「軽く腕を振った方が打者は詰まって、力むと打たれました。7、8分で投げることを意識して、(この試合の)3回あたりからは特にその感覚に注意して投げました」
 和田は、自分の中で1つ越せなかったものを越えることができた、と言った。大きな収穫を手にし、自信を取り戻した左腕が「栄光」をかけた巨人戦のマウンドに上がる。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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