ヒディンクの信念に応えたロシア=ロシア 2−0 スウェーデン
逃げるか、戦うか
スウェーデンに2−0で勝利し決勝トーナメント進出を決め、喜ぶロシア代表チーム=18日、インスブルック 【REUTERS】
「私はがっかりしている。韓国の選手はあまりに勇気が欠けた試合をした。私が一番嫌いなことだ」
オランダリーグのレギュラー級クラスをそろえたオランダに勝ったことは、韓国にとって金星であった。しかし韓国はあまりにオランダの力を恐れ、消極的で守備的なサッカーをしたのだった。
相手にフットボールをさせるのではなく、自分たちがフットボールをしろ。そのための勇気と技術を持て――ヒディンクの言葉に込められた行間は、そういうことだったのかなと、ユーロ(欧州選手権)でのロシアの成長ぶりを見て思った。
初戦でスペインに敗れた後、ヒディンクは「選手がナイーブすぎた」と振り返った。パスは時折きれいに回った。しかし、ビルドアップの段階で難しいプレーを選択し、やすやすとスペインにボールを与えてカウンターを食らうケースも多く、実際にミスが失点に直結した。そうなるとチーム全体が消極的になり、ロシアの反撃も手詰まり感が漂った。若く、未経験な選手が初のビッグトーナメントの初戦で、サッカー大国スペインと当たり、舞い上がってしまったのが見てとれた。
次のギリシャ戦まで中3日。スペイン戦で被った心身の疲労を回復しながら、もう一度戦えるチームに育てるために刺激を与えなければいけない。そんな難しい仕事をヒディンクはしなければならなかった。練習、そしてミーティングは激しかった。
「負けた後、チームには2つの方法がある。逃げるか、戦うか。選手は戦うことを選んだ。私はそのことを誇りに思う」(スウェーデン戦後のヒディンク談)
「今大会はすでに成功と言える」
ギリシャ戦では、同サイド、特に左サイドでの縦へのコンビネーションプレーが光った。しかしスウェーデン戦では、アルシャービンが攻撃的MFに入ったことで、右から左、左から右、外から中央と、ロシアの攻撃を自在にスイッチし、単調なテンポだったサッカーに潤いが生まれた。
「リアクション・サッカーではなく、アクション・サッカーを。5〜6人が後ろで守るのではなく、モダンなフットボールを」
そうロシアのサッカーに期待するヒディンクだったが、ついにスウェーデン戦で一度完成形を作った。ロシアはボールを持ったら、スウェーデンの守備のわずかなギャップを続けざまに突き、大きな穴を作った。スウェーデンの守備はたまらず、ロシアの波状攻撃の前に崩壊してしまった。完全にロシアが試合を支配しきって勝った、ヒディンク会心の試合だった。
スペインに大敗し、初戦でがけっぶちに立たされたロシアだったが、ベスト8進出を達成した。
「今大会はすでに成功と言える」
とヒディンクはスウェーデン戦後語った。
W杯ではオランダ、韓国をベスト4、オーストラリアをベスト16へと導いたが、またしてもヒディンクはビッグトーナメントで結果を残したのだ。
ここ数年のヒディンクはすさまじく、チャンピオンズリーグの常連ながら毎回グループリーグで敗退し続けていたPSVを、ベスト16の常連チームに変ぼうさせた。ヒディンクによって欧州中にトップクラブとして認められたPSVの本拠地アイントホーフェンは、いまやオランダの「サッカーの首都」として知られている。
準々決勝はヒディンクの母国オランダとの対戦。
「共に攻撃サッカーをする。楽しみな激突になるだろう」
とヒディンク。オランダはイタリア戦、フランス戦でチーム力をピークにしてきたが、ロシアは尻上がりに調子を上げてきた。欧州のビッグリーグが長いシーズンを終えたばかりなのに対し、ロシアリーグはまだ11節を終えたばかりで、選手はまだエネルギーを蓄えている。
実を言うと大会前、某誌に僕は「優勝はロシア」と書いた。スペインに大敗した後、先輩記者から「お前に仕事の依頼はもうないな」と言われたものだが、いまやロシアのサッカーは「オランダを食ってしまうのでは」という声も聞こえるほどだ。
名勝負を期待するほど、サッカーは名勝負にならないものだ。それでもオランダ対ロシアは、期待を裏切らない面白い試合になるような予感がする。
<了>
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