欧州8強出そろう 頂点に立つのはどの国だ!? =ユーロ2008決勝トーナメント展望

攻撃的なチームが決勝トーナメントへ

ここまで4ゴールと絶好調のスペイン代表ビジャ(手前) 【REUTERS】

 ユーロ(欧州選手権)2008はグループリーグの24試合が終わり、19日から決勝トーナメントが始まる。大会をここまで振り返ってみると、全体のレベルは高く、おおむね楽観視できるものだと言えるだろう。参加16チームを見ても、攻撃的な布陣を採用している国が少なくなく、試合を盛り上げている。そして今大会は、そうしたチームに準々決勝への扉が開かれているように思われる。

 それぞれにスタイルは異なるものの、ポルトガル、オランダ、スペインの3チームはここまで好調な戦いぶりを披露しており、視界は良好だ。だが、ユーロ2004でギリシャの優勝を目撃したわれわれは知っている。力の拮抗(きっこう)するヨーロッパの大会では、常に“サプライズ”はつきものだと。

 幸運なことに、今大会のグループリーグでは、バリエーション豊かな戦術やシステムが見られた。分析するのに格好の材料がそろっているわけだが、中でも魅力的なフットボールを見せているのは、前述の3カ国だ。ダビド・ビジャとフェルナンド・トーレスの2トップがゴールを量産しているスペイン、ポジションチェンジが激しく、カウンターのさえるオランダ、偉大なるMFデコが攻撃を操り、クリスティアーノ・ロナウドら決定力のあるFWを擁するポルトガル。いずれも、相手ゴールにたどり着くため、効果的に攻撃を組み立てている。

ポルトガルの最大の試練は、ドイツとの準々決勝

4年前の悔しさをバネに成熟度が増したポルトガルのロナウド(中央) 【REUTERS】

 ポルトガルは、主力にテクニックに優れた選手が多く、チームとしてもまとまっている。自国開催で準優勝を果たしたユーロ2004でのパフォーマンスに、さらに深みが加わったと言えるだろう。ギリシャとの決勝に敗れ、人目もはばからず涙を流していたC・ロナウドも、いまや誰もが認めるエースに成長。成熟度が増し、世界最高の選手と呼ばれるまでになった。遅咲きのMFデコは、中盤からゲーム全体を見渡し、柔軟性溢れるプレーを繰り出す。また、その後ろに控えるプティ、ジョアン・モウティーニョ(今大会のサプライズの1人だ)も攻撃を支えている。守備の強固さも大陸屈指と言える。

 しかし、ブラジル人監督ルイス・フェリペ・スコラーリのチームにとっての最大の試練は、準々決勝の“くせ者”ドイツとの一戦になるだろう。2006年ワールドカップ(W杯)以後、ドイツ監督のヨアヒム・レーブはユルゲン・クリンスマンからチームを引き継いだが、前任者時代からコーチを務めており、戦術に大きな違いはない。国際大会で優勝こそ果たしていないが、常に上位に顔を出している。

 かつての西ドイツ時代のようにスターぞろいというわけではないが、ミヒャエル・バラック、ルーカス・ポドルスキ、ミロスラフ・クローゼらタレントを擁する。バラックはチェルシーに移籍してしばらくは調子を落としていたが、シーズン終盤には完全復活。ポーランド生まれのFW2人も爆発力を秘めている(クローゼは今大会はまだ眠ったままだが)。グループBでクロアチアの後塵こそ拝したが、そのダイナミックなフットボールは決勝にまで上り詰める力を持っている。

クロアチアとトルコは対等

クロアチアが誇るゲームメーカー、モドリッチが攻撃を支える 【REUTERS】

 グループBを3連勝で首位通過したクロアチアは、ヨーロッパにいながら最も南米スタイルを持つ国だと言えるだろう。若きスラベン・ビリッチに率いられたチームは、3位に入った1998年W杯に続き、再びサプライズを起こした(10年前、ビリッチはクロアチア代表選手としてピッチに立っていた)。チームの屋台骨を支えるのは、テクニック溢れるゲームメーカーのルカ・モドリッチとニコ・クラニチャルだ。
 クロアチアは、準々決勝でトルコと対戦する。奇跡のような逆転勝利で決勝トーナメント進出をつかんだトルコは4年前のギリシャのような存在と言えるが、もっと手ごわいことは確かだ。

 ミランの監督を務めるなど、経験豊かなファティフ・テリム率いるトルコは、今大会3度目のアップセットをもくろんでいることだろう。グループリーグ第2戦のスイス戦では、ロスタイムのゴールで勝ち越し。最終戦でも、残り15分で2点のビハインドを跳ね返す大逆転勝利を飾った。初戦のポルトガル戦に敗れた後の2連勝で、トルコは精神的に勢いづいている。失うもののない彼らは、クロアチアとも対等に戦えるだろう。勝者は蓋を開けるまで分からない。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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