ロシアを変えるヒディンク改革=ギリシャ 0−1 ロシア

中田徹

スペイン戦の大敗から立ち直ったロシア

ズィリャノフ(右から3人目)のゴールで、ロシアは前回大会優勝のギリシャを葬った 【REUTERS】

 ヒディンク監督率いるロシアは、初戦のスペイン戦で1−4と完敗した。それでもヒディンクは、「チームにはクリエーティビティーがあること、そしていい動きがあることが分かった」と、ロシアのポテンシャルの高さを実感していた。ロシアにとって足りないのはトップレベルの経験。ヒディンクいわく、スペイン戦では危険な場所を嗅ぎつける感覚をロシアは欠いていた。

 スペイン戦ではまだまだ学ぶべき点が多いことを露呈したロシアだが、激しい練習とミーティングの実施で選手の自覚を促し、ファイティングスピリッツを出して戦うようギリシャ戦に臨ませた。
 結果はロシアが1−0の勝利。タイムアップのホイッスルの瞬間、ヒディンクはトレードマークのアッパーカットポーズを披露し、喜びを表した。
「スペイン戦の敗戦から、チームはいい反応を見せてくれた。私は今日の試合に満足している」と、急ピッチで成長した選手たちのプレーに充実した表情だった。

 ギリシャ戦に勝ったことで、ロシアはグループリーグ突破のサバイバルレースに生き残った。
 グループDはすでにスペインが1位抜けを決めており、2位スウェーデンと3位ロシアが残り1枠を懸けて6月18日に対戦する。勝ったチームは文句なしに勝ち上がるが、引き分けると2チームが当該成績で並ぶため、得失点差でスウェーデンが勝ち残る。
 スウェーデン、もしくはロシアの準々決勝の対戦相手は、グループC1位のオランダだ。ロシアが突破すれば、オランダ人のヒディンクにとっては感慨深い対戦になるだろう。

ロシアのサッカー界はインフラストラクチャーが整っていない

 今大会一番若いチーム編成のロシアだが、ギリシャ戦ではその若い力が爆発した。初戦のスペイン戦で好プレーを見せたトルビンスキ(24歳)は、ギリシャ戦で先発に抜てきされ、右アウトサイドながら、どんどんポジションを変えてギリシャの守備陣を翻弄(ほんろう)した。MFのビリャレトディノフ(23歳)、左サイドバックのジルコフ(24歳)らも思い切ったプレーを見せて勝利に貢献した。

――若い才能がいっぱいロシアにはいるではないか

 そう記者に尋ねられたヒディンクは、「うちのチームはサイドにクリエーティビティーがある」と答えた。

――ゼニトもUEFAカップを獲得したことだし、ロシアがヨーロッパサッカーでビッグパワーを持つようになるのでは

 という問い掛けには、「まだだ」と答え、「まずはベースを固めないと。ロシアのサッカー界はまだまだインフラストラクチャーが整っていない。トレーニングセンター、新しいスタジアム、何よりトレーニングメソッドを改善しないと。ステップ・バイ・ステップ。基礎的なことから始めないと」と続けた。

 また、広いロシアに散らばっている、才能溢れる若い選手を取りこぼしなく発掘するスカウティングシステムの整備も、今後のロシアにとって大事なことだとヒディンクは考えている。国内リーグのレベルアップも同様だ。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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