東海大、1イニング16得点の記録的猛攻=第57回全日本大学野球選手権5日目リポート

矢島彩

「これ、ひっくり返したらおもしろいな」

逆転2ランを放った近藤(右)。東海大は1イニング16得点の記録的な猛打を見せた 【島尻譲】

【東海大 17対7 明大】  東海大が1イニング10安打16点の猛攻で、圧勝した。この記録は第45回大会で青山学院大が記録した9点を大きく上回るものだ。5回裏に“16”の2ケタの数字が窮屈そうに浮かび上がる。大学野球の全国大会ではあまり見られないスコアボードだ。
 怒とうの攻撃だった。東海大が0対6と6点を追いかける5回、敵失(けん制悪送球)で2点を取り返してからベンチの雰囲気が変わった。「これ、ひっくり返したらおもしろいな」。ベンチで誰かがつぶやいた。その後、水江賢太郎(4年=市尼崎高)のタイムリーで3点差に迫り、なおも1死二、三塁として、マウンドには2番手の岩田慎司(4年=東邦高)。春のオープン戦で完封負けを喫した投手だ。東海大は待ってましたと言わんばかりに燃えていた。

相手の得意球を打ってホームラン2発

「打てないという開き直りの気持ちで打席に入れ」(横井人輝監督)
 力が入りすぎることもなく、各打者はスライダーを狙っていた。得意球を打ってKO、そんな青写真を描いていたからだ。この試合、岩田の初めての打者となる4番・石谷潔(4年=岡山理大付高)がそのスライダーをセンターへ2点タイムリー。1点差に迫った。つづく近藤恭平(3年=市岐阜商高)の打球は右翼への逆転2ランになった。ここで打ったのもスライダーだった。
「後ろにつなぐ流れに乗っていけた。ホームランは狙ったわけではないです」
 大盛り上がりのベンチからは「まだまだ足りないぞ!」の声が聞こえてきた。一方の岩田はいつものキレを失い、1死も取れずに降板した。
 勢いはとどまることを知らない。この回2度目の打席に入った6番・横田崇幸(4年=東北高)。野村祐輔(1年=広陵高)から左翼席中段に突き刺さるダメ押し3ランを放った。
「リーグ戦序盤は全然打てずに迷惑をかけた。それでも使ってくれる監督さんに応えたかった」
 春のリーグ戦、日体大と勝ち点をかけた試合で9回裏に4点を入れて逆転勝ちした。横井監督は選手と一緒になって涙を流したという。横田は「監督は熱い人。ずっとついていきたいくらい頼れる人です」と目を輝かせる。

 昨年は早大に敗れて準優勝だった東海大。直後に横井監督が就任した。横田は「去年は優勝まで遠く感じたけど、ことしは五分五分だと思う。でも、絶対優勝します」と、気を引き締める。リーグ戦を投手力で勝ち上がった東海大だが、今大会は打撃陣も好調。橋本渉主将(4年=東海大山形高)が「全国大会では打って勝つのが目標」とはっぱをかける打撃陣が決勝も大暴れするつもりだ。

<了>
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著者プロフィール

 1984年、神奈川県出身。『アマチュア野球』、『輝け甲子園の星』『カレッジベースヒーローズ』(以上、日刊スポーツ出版社)や『ホームラン』(廣済堂出版)などで雑誌編集や取材に携わる。また、日刊スポーツコム内でアマチュア野球のブログを配信中

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