函館大・阪内監督の30年前の忘れ物

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「30年ぶり2回目」での初勝利

【函館大 4対1 広島経済大】 「最高です。30年前に忘れて行ったものを取りにこれました」。
 そう言ってウイニングボールを掲げる函館大・阪内俊喜監督からは笑みが絶えなかった。それもそのはずで、選手時代に出場した30年前は千葉工大に0対5と完封負け。4番を打っていた阪内監督自身も無安打に終わり、悔しい思いをした。
 今回、函館大はそのとき以来2回目の全日本選手権。今度は指揮官として母校を全国に連れてきて、しかも勝利を挙げたのだ。うれしくないはずがない。

指揮官を喜ばせた選手の成長

 試合展開も理想に近いものだった。初回、リードオフマン・富田将人(4年=二松学舎大付高)が初球を狙い打って左翼線に二塁打。2番の小野辰之介(3年=平塚学園高)がバスターでランナーをサードに進め、続く長谷川拓哉(1年=聖望学園高)のタイムリーで先制。さらに2回に1点、3回にも2点を加点し、4対0。序盤で主導権を握ることに成功した。
 
 守っては先発・佐藤公彦(4年=鶴岡工高)が完投勝利。唯一の失点も8回1死三塁から内野ゴロの間に奪われたもの。この場面であえて深めの守備シフトを敷いたのは「点差を考えて学生が判断した(阪内監督)」という。これはまさに函館大のスローガン“ハートは熱く頭は冷静に”を象徴している。選手たちは、自分が目指す野球を体現するまでに成長していた。それが阪内監督を喜ばせた。

番狂わせへそろう足並み

 しかし、勝ったことを喜んでばかりはいられない。次の対戦相手は優勝候補の一角・東洋大だ。阪内監督が「向こうは横綱ですから」と語れば、佐藤も「東都リーグのほうが格上」とあっさり認める。その一方で「逃げないで勝負したい」と両者は口々に言う。相手は強いが決して怯まない。足並みは、そろっている。

「番狂わせも期待できますね?」
 筆者の問いに阪内監督は「とんでもない」とかぶりを振った。しかし、直後に「同じ大学生同士ですからね。実力を出し切れば分かりませんよ」と言って前を見た。表情こそ穏やかだったが、その目は決意に満ちていた。 

<了>
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