大会屈指の右腕に生じた“すき”

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次戦を考えた関西国際大の投手起用

【関西国際大 3対1 道都大】この試合の注目は、関西国際大のエース・榊原諒(4年=中京高)だった。最速149キロのストレートを誇り、大会屈指の好投手と言われ、前評判の高い右腕が開幕戦という舞台でどんなピッチングを見せるのか。
 その中で、鈴木英之監督は2番手の伊原正樹(岡山共生高=4年)を先発のマウンドに送った。これは「次の明大戦を見据えての起用」と鈴木監督は説明する。そして、「理想は伊原が完投してくれることだった」と続けた。2枚看板の1人・伊原で初戦を乗り切り、榊原を万全の状態で明大にぶつける。これが指揮官の目論見だったのである。

崩れ去った青写真

 だが、その青写真は簡単に崩れ去る。道都大打線が予想以上に手強かったからだ。立ち上がりからしっかりとボールを見極め、好球必打に徹する道都大に伊原は思うような投球ができない。失点こそ許さなかったが、毎回得点圏に走者を背負うピッチングが続いた。 そして0対0とゼロ行進の続く5回。先制点を相手にやりたくなかった鈴木監督は、またも2死二塁に走者を進めてしまった伊原をあきらめ、榊原を投入。「道都大、侮り難し」と判断した鈴木監督のさい配だった。
 榊原も「明大戦のことしか考えていなかった」と言う。そんな“スクランブル登板”だったが、このピンチを三振で乗り切り、さすがと思わせる投球を見せた。その後も最速148キロのストレートとキレのあるスライダーを披露。その能力の一端を示した。

実力差埋めた“気持ち”

 しかし、道都大・田渕章吾主将(4年=札幌第一高)が「そんなに速いとは思わなかった。当てれば飛んで行きそうだと思った」と試合後に振り返ったとおり、榊原は試合終盤につかまる。3点リードの8回に4連打を浴びて1点を失うと、9回にもヒットとフォアボールで満塁のピンチ。味方セカンドの好守もあり、何とか無失点でしのぎ、3対1と逃げ切った。関西国際大有利の下馬評だったが、終わってみれば接戦の末の白星。その要因は鈴木監督が「相手のほうが気持ちが入っていた」と語るとおり、意識の違いだった。全力で相手を倒そうとした道都大と、次の試合を考えていた関西国際大。野球におけるメンタル面の大切さを改めて感じる試合だった。

<了>
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