ベッケンバウアーに壊されたサッカーのセオリー=金田喜稔が語るユーロの記憶

構成:スポーツナビ

ドイツ代表がひしめくケルンの合宿に参加

金田氏は、大学時代に当時の欧州最高峰リーグだったドイツに留学した経験がある 【スポーツナビ】

 僕が代表だったころの二宮(寛)監督は、日本の選手を当時のヨーロッパ最高峰のリーグであるドイツに連れていって、そこのビッグクラブであるボルシア・メンヘングラッドバッハとかFCケルンとかに何人かずつ受け入れてもらったんです。僕は、奥寺(康彦)さんとか、ガンバ大阪の西野(朗)さんたちと一緒にケルンに行きました。
 そこはサッカーを取り巻く環境が違った。芝生のピッチが何面もあるし、フィットネスジムがあって、クラブバスまである。今でこそJリーグにもあるけど、僕らのころにはないから。それがめちゃくちゃかっこいい。「こんなバスに乗れるんかプロは」と思いました。

 当時のケルンは欧州で名のあるヘネス・バイスバイラーが監督で、彼が「キンタ、キンタ」ってかわいがってくれたんです。そこで僕、ドイツのDFにフェイントかけて抜いてシュートとかやってたから、「こいつらたいしたことないなー。これでプロやったら俺も十分できるな」という勘違いもしてたね(笑)。
 ドイツでは、毎日ステーキやサラダの大盛りが食えた。合宿といっても2部練習で、昼には紅茶飲みながらケーキを食べて、それから午後の練習をやる。僕にとったら天国よ(笑)。外出たら芝生だし、トレーニングウェアはロッカーにそろえてある。感動してね、こんな中でやりたいと思った。
 僕はこのとき体がすごくなった。日本に帰ってからびっくりされた。フィジカル(トレーニング)もやったけど、やっぱり飯がいいわけ。筋肉もついて、スピードはもともとあったから、「これはやれるな」という感触はあった。短距離走も、ケルンの連中よりも僕と奥寺さんの方が速かったと思うし、1対1だって抜いて勝っていた。僕は19歳だったけど、ケルンの22、23歳くらいの若手が練習後に僕のところにきて、「フェイントを教えてくれ」って。「そーか、そーか。こーやってのお。お前はちょっと足遅いからできないなー」とか言ってね(笑)。

 ケルンはドイツで優勝するようなチームだからほとんどが代表選手。ディーター・ミューラーもいたし、フローエ、クルマン、コノプカも、シューマッハーもいた。シューマッハーは当時、下手くそでねえ(笑)。あいつ、僕のシュート取れなかったよ。僕は、GKかわしてシュートしてチンチンにしとったもん。こいつは絶対にプロとしては成功しないと思っていた。なぜかというと、GKにしては太いし、瞬発力もないし、陰でたばこを吸っていたし(笑)。当時、奥寺さんがセイコーが初めて出したデジタルの時計を持ってたんですけど、シューマッハーは奥ちゃん(奥寺)のところに行って、何マルクか出すから売ってよと。そんなやつは絶対ダメや、成功せんと思ってたら、守護神になったからね(笑)。やっぱりドイツおったら違うんかと思ったよ。

ドイツ人も驚く奥寺の左足シュート

 当時、ドイツではオーバーラップがすごくはやったんです。サイドの選手がボールを持ったときに、かならずDFや中盤が長い距離を走ってオーバーラップをかける。それを僕らは代表でかなりやらされた。僕はそのとき中盤だったので、オーバーラップをかけて前線の選手を追い越してボールをもらって、ずれたDFと1対1で勝負して抜いてシュートやクロスとか。
 そこから違いが出るのは、インフロントで巻いたボールを蹴れるか。ほとんどのドイツの選手は、GKが出てきても取られないカーブがかかったボールを蹴れていた。ドイツでは、20〜25メートル離れたところで強いインステップのキックを蹴り合うんです。ドイツ人は正確に強いボールを胸めがけて蹴ってくるんです。ボール扱いは下手くそなんだけど、キックに関しては、インフロントキックもドイツの選手が一番うまかったと思います。ドイツ代表には必ず、DFが立っていても巻いてGKに取られないボールを蹴るサイドの選手が左右にいた。基本的な止めて蹴るということに関しては全然レベルが違った。
 今だとアーリークロスと言いますが、あれはドイツが、世界に先駆けてやってましたね。中にいるFWには、ボールが返ってくることを想定した突っ込み方が求められていました。

 でもね、シュート練習のとき、どう見てもドイツ代表の選手たちより奥寺さんの左の方が強かったよ。奥寺さんは後にドイツに行ったけど、合宿でもケルンの連中が「あの左を見てみろ」ってびっくりしていた。ドイツ人の中に入っても奥ちゃんの左足のキックの強さは図抜けてた。あれは僕の誇りだったね(笑)。「もっと蹴れー、奥ちゃん」みたいなね(笑)。

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