オシム「今度は私が『頑張れ』と言う番だ」=イビチャ・オシム氏アドバイザー就任会見

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夢の方向がそろえば、日本サッカーは前進する

――途中で後任監督が決まってしまった時の気持ち、(要請があるなしにかかわらず)再び監督をやってみたいという気持ちはあるか?

(千田通訳補足:これはジョークなんですけど)私が生き残るという保障がなかったので後任監督を決めたわけではないでしょう。私はどんな場所にいてもサッカーの話をすることが大好きです。どんな仕事をするにしろ、私は日本に来て日本のサッカー界に何かしたという痕跡を残したいと思っています。それは私に限らず、どんな分野の人でも同じことだと思います。ひょっとしたらとんでもない、ひどい痕跡を残すかもしれないと心配していますが。私がそもそも仕事を引き受けたのは、日本のサッカーに何か良い方向での変化を与えようとしたからです。その時、あらかじめ天国の誰かに相談しながら、これをやってもいいかと考えていたわけではありません。自分の考えで変化を与えようと思っていました。

 しかし、私自身(病気に関しては)全く予想していませんでした。残念なことに病気になってしまい、仕事を続けることはできませんでした。ですから、その分、私は別の形で貢献したいと思っています。以前ほどではないかもしれませんが、皆さんの前で冗談をしゃべることもできるようになりましたし、サッカーに関する知識や考えも失われていないと思います。その範囲で貢献したいと思います。ですから、私が今ここまで申し上げた一つ一つの単語を全部シリアスに受け取らないで下さい。

 夢についてですが、夢を見ることは禁じられていません。夢を見たっていいじゃないですか。皆さんも夢を見るでしょう? その夢の方向が少しでもそろっていけば、日本のサッカー界は前進するのではないのでしょうか? そこから変化が始まります。そろそろ、カメラのフラッシュをたくのを控えて頂けませんか? まぶしくなってきました。

 アドバイザーのオファーに関しては感謝していますし、信頼してもらいうれしく思います。信頼関係があり、やりかけた仕事の一部を続けさせてもらうということです。これまで私がやってきた痕跡がこれだと示す時間は、あまりありませんでした。しかし今後は、別の方向でポジティブな変化を与えたいと思っています。そこでよくやったと言ってもらえるなら、それほどうれしいことはありません。

 新しい仕事は新しい責任です。それは、私が引き続き健康であることです。命を永らえるということではなく、私が体を良くすることもそうです。私の人生は戦いの連続でした。選手時代は相手選手と、監督時代は自分のクラブの選手と、そして代表監督になってからは記者の人たちとです。でも、負けたとは思っていません。まだまだ心臓が動く限り、私は働き、戦い続けます。

トゥーロン国際大会での日本代表を見習うべき

――日本代表監督として復帰したいという気持ちは?

 ベンチに座りたいという気持ちはあるが、ベンチで死にたくないという気持ちもある。それはあまりスペクタクルではないでしょう。

――日本選手が学ばなければいけないことは?

 言いたいことはたくさんありますし、そんな単純なものではありません。一般論ですが、日本選手はもっと走らなければいけません。いいサッカーをするためには、もっと走る量を増やさなければいけない。一見、日本の選手は技術があるように見えますけど、それには「?(クエスチョンマーク)」がつきます。つまり、技術レベルをもっと上げなければいけません。
 そのためには、小さい時期から動きながらのプレーをもっと身に付ける必要があります。現代のモダンサッカーはスピードアップしています。それに伴い、考えるスピードを速めること、そして走るスピードも身に付けることが必要です。速いプレーをするためには、もっと高い技術を身に付けなければいけません。これは一般論ですが。

 皆さん難しく考え過ぎてはいませんか? シンプルですけど、そこから始めればいいのです。サッカー強国がなぜ強いかを分析をし過ぎていませんか? (サッカー強国の)まねをしても彼らを超えることはできません。まねは良いことではありません。ですから、日本はコンプレックスから開放されて、自分たちのストロングポイントを自覚することが必要だと思います。

 トゥーロン国際大会で、U−23日本代表はフランスやオランダに勝ったでしょう。あれは良いサインです。あれを見習うべきだと思います。強いチームに対していい戦いができるんだという自信を身に付けることです。もちろん、相手をリスペクトする必要はあります。しかし、サッカーは演劇と違い、あらかじめ勝者が決まっているわけではありません。また、話し過ぎてしまいました……。

――現在、岡田監督のサッカーの印象は?

 私は自分の後任監督について印象を述べるつもりはないです。というのは、私はあなた(質問した記者)のことを深く知らないからです。

――以前の(病気にかかる前の)生活と比べて変わったところは? お酒を飲まなくなったとか。

 代わりに、水を飲んでいます。

――アドバイザーとして、具体的に何をしたいか?

 皆さんからのデリケートな質問に答えることです。失言したらこれから10日間、新聞をにぎわすかもしれませんし。まあ、後任者を困らすことは起こらないようにしなければいけませんね。

――アドバイザー契約は今年12月までだが、その先はどうなるか?

 まず、ドクターの許可を取らなければ何もできません。何か必要な手順を飛ばすことはできませんから。「うさぎを捕まえる前にあれこれ心配するな」ということわざのように、まず日本代表がW杯・南アフリカ大会に行けると確定してから考えます。日本代表が予選を突破すれば、もうアドバイザーは必要なくなるかもしれない。アドバイスがなくても、立派な戦いができるようになるかもしれない。その時に、田嶋さんが新しいポストを用意してくれなら考えてみますが。私にしてみれば、南アフリカで日本代表を見たいとは思っています。ただ、ドクターと妻の許可を得る必要がありますが。

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