伝統の復活か、サプライズの継続か=欧州記者のユーロ2008展望 第3回
鍵を握るのは選手のコンディション
ユーロ2004は伏兵ギリシャが優勝。今大会は再びサプライズが起こるのか、強豪国が勝利するか 【Getty Images/AFLO】
13回目を迎えたユーロにおける最大の衝撃は、何と言ってもイングランドの不在だろう。フットボールの母国はクロアチア、ロシアの後塵を拝し、予選で姿を消した。プレミアシップはいまや世界一の呼び声高く、今シーズンの欧州チャンピオンズリーグ(CL)でも、決勝に進んだのはマンチェスター・ユナイテッドとチェルシーのイングランド勢だった。プレミアシップのチームの主力メンバーに外国人選手が多いという議論はあるものの、それでもイングランドがユーロ本大会の舞台にいないのは驚きである。
16チームのうち、果たして6月29日の決勝で勝者となるのはどの国だろうか? 鍵を握るのは、主力選手のコンディションだ。長いシーズンの間に蓄積した疲労や、負傷個所の回復具合を考慮に入れる必要があるだろう。特にイングランド、スペイン、イタリア、ドイツといった主要リーグのビッグクラブに所属する選手たちは、カップ戦も含めて多くの試合を戦ってきているのだ。
ユーロ2004でも、シーズン終了後でフィジカル・コンディションを落とし、低調なパフォーマンスに終始した選手が続出した。2年前のワールドカップ(W杯)・ドイツ大会でも同様だった。いまや、各国リーグのスケジュールは、選手たちに休息する十分な時間を与えてはくれない。こうした事情もあり、近年は決して優勝候補とは言えないアウトサイダーが健闘する現象が起きている。あまり海外でプレーする選手のいない中堅国などは、自国リーグを早めに終わらせ、万全の状態で大会に臨むことも可能だ。
ポルトガルの1位通過は堅いグループA
スイスは地元の利を生かして、2年前のW杯でグループリーグを突破した時の再現を狙いたいところだ。チェコは“ネドベド時代”の終焉(しゅうえん)を迎えたが、ルイス・フィーゴが去ったポルトガル同様、能力のある新世代が台頭してきている。そして、前回のユーロ、そして2年前のW杯と2大会連続でビッグトーナメントへの出場を逃したトルコは、ようやく待望の舞台に戻ってきた。過去の教訓を生かし、ユーロ2000で成し遂げたベスト8以上の結果を残したいところだ。
グループBで頭一つ飛び抜けているドイツ
驚きの一つと成り得るのはポーランドだ。予選ではポルトガルを抑えてグループA首位通過を果たした。メンバーのほぼ半分が欧州の国外リーグでプレーしており、予選では拮抗(きっこう)したゲームを粘り強くものにしてきた。
クロアチアは、恐らくヨーロッパで最も南米的なチームと言えるだろう。前回のW杯に出場した選手が経験を積み、ベテランとアタッカー陣を中心とする若手がうまく融合している。本来の力を出せば、グループリーグ突破も見えてくるだろう。オーストリアは、昨年のU−20W杯でベスト4の立役者となったマーティン・ハルニクら若手に才能溢れる選手がいるが、まだまだ発展途上。地の利を生かしても、グループ突破は厳しいか。