悲願の優勝はポルトガルかスペインか=欧州記者のユーロ2008展望

 欧州サッカーのスペシャリストは、しばしば「ユーロ(欧州選手権)はワールドカップ(W杯)よりも過酷な大会だ」というフレーズを好んで使う。もちろん、ブラジルやアルゼンチンといった南米の強豪はユーロには出場しない。しかし、W杯はアジア、アフリカ、北中米カリブ、さらにはオセアニアといった国々も各地域代表として参加する。いくつかの実力国を除けば、彼らは欧州の上位10〜15カ国よりも力が劣ると言えるだろう。ユーロを勝ち抜くのは並大抵のことではない。しかし、今大会は開催国のオーストリアとスイス、そしてギリシャ(前回大会優勝国ではあるが)が入っていることで、過去の大会よりはやや易しいように思われる。

グループA:ポルトガルはファイナリスト候補

C・ロナウド擁するポルトガルにウイークポイントはほとんど見当たらない 【Getty Images/AFLO】

<チェコ>
 チームのインスピレーションの源であるトマシュ・ロシツキ(ひざの負傷)、パワフルな元キャプテン、パベル・ネドベド(すでに引退)を欠くチェコだが、経験豊かな選手と才能溢れる若手がミックスされた陣容となっている。
 監督のカレル・ブリュックナーは、選手たちがどのようにプレーすればベストかを完ぺきに理解している。また、今大会ナンバーワンGKの一人であるペトル・チェフを擁していることは大きい。ディフェンダーはベテランが多く安定感があるが、ヤン・コラー、ミラン・バロシュといったFW陣には、かつての勢いはないかもしれない。だが、今シーズンのチェコ1部リーグで15ゴールを挙げ、得点王に輝いたバーツラフ・スベルコシュは、可能性を秘めた期待の新星だ。

【予想:ベスト8またはベスト4】

<ポルトガル>
 2006年W杯でセミファイナリストとなったポルトガルは、さらに強さを増しているように思われる。強力で経験豊かなディフェンス陣に、クリスティアーノ・ロナウドのようなスターもいる。ルイス・フェリペ・スコラーリ率いるポルトガルにウイークポイントは見当たらない。唯一、真のストライカーがいないという点以外は。
 ブラジル人指揮官は今大会、攻撃的MFのマニシェを招集しないことを決めた。それでもデコ、シマゥン・サブローサ、ナニ、リカルド・クアレスマら、タレントには事欠かない。チームバランスだけが心配だが、いずれにしても今のポルトガルを倒すことは、どのチームにとっても容易ではないだろう。

【予想:決勝進出】

<スイス>
 オーストリアと今大会を共催するスイスは、まずは決勝トーナメント進出が最低限の目標となるだろう。しかし、メンバーにビッグネームはおらず、グループリーグ突破も厳しい状況だ。昨夏にアルゼンチンと引き分け、オランダに勝利したように、強固なチームスピリッツのみがよい結果を得るための後押しとなるに違いない。

【予想:グループリーグ敗退】

<トルコ>
 伝説的ストライカー、ハカン・シュクルが代表メンバーから漏れ、あとはニハト、ハリル・アルティントップらFWに託されることになったトルコ。バイエルンのMFハミト・アルティントップは足の骨折で戦列を離れているにもかかわらず招集され、セルベト・チェティンとギョクハン・ギョニュルも負傷が発覚。チーム状態はいいとは言えない。
 トルコとしては、常に熱狂的な多くのファンの後押しと、今シーズン欧州の舞台で存在感を示したフェネルバフチェ(チャンピオンズリーグでベスト8)の波に乗りたいところだ。名将ファティフ・テリムとベテラン選手の力を結集すれば、トルコがグループAのダークホースとなる可能性を秘めているだろう。

【予想:グループリーグ敗退】

グループB:ドイツ、クロアチアが順当に勝ち抜きか

<オーストリア>
 もう1つの開催国オーストリアは、スイスよりさらに厳しい状況と言わざるを得ない。メンバーにスターと呼べる選手もいなければ、インパクトのある選手さえ見つからない。
 しかし、ヨゼフ・ヒッケルスベルガー監督は過去の反省を踏まえて、16チーム中最も早く、本大会前の合宿をスタートさせた。ホームとして恥ずかしい戦いはできないと、オーストリア・サッカー協会は、国内リーグを早々と切り上げる用意周到ぶり。選手たちのコンディションは上々と言えるだろう。とはいえ、ベストプレーヤーは国外のリーグに所属しており、本大会直前まで各国のリーグを戦っているという矛盾もはらんでいる。ライバルを倒す道は険しい。

【予想:グループリーグ敗退】

<クロアチア>
 昨年11月のユーロ予選最終戦、クロアチアはウェンブリー・スタジアムでイングランドを撃破し歴史的な勝利を挙げ、フットボールの母国を敗退へと追いやった。ほとんどの選手は欧州主要リーグのチームに所属しており、ベテランと若手スターがうまく組み合わさっている。中でも、MFのニコ・クラニチャルは注目すべき選手だ。
 監督のスラベン・ビリッチは、本大会でさらなる“サプライズ”を起こそうとしていることだろう。心配の種はと言えば、かつてユーゴスラビアの時代から指摘されている、パフォーマンスの不安定さか。

【予想:ベスト8】

<ドイツ>
 母国開催となった2年前のW杯でベスト4に進出したドイツは、今回もほぼホームとして本大会を迎えることになる。恐らく、多くのファンが隣国へ駆けつけることだろう。チームはバランスが取れており弱点が少なく、ただシンプルに強い。グループBでの力は傑出しており、準々決勝進出は全く問題ないと思われる。
 シーズン終盤にきて、チェルシーでトップコンディションを保っているミヒャエル・バラックの存在も心強い。ドイツは間違いなく本命の一つだ。わずかな心配は、FWに真のトッププレーヤーがいないことだが、中盤にも攻撃力のある選手はそろっている。

【予想:ベスト4】

<ポーランド>
 ポーランドを率いるオランダ人のレオ・ベーンハッカーは、レギア・ワルシャワ所属でブラジル出身のロジェール・ゲレイロをはじめ、メンバーの半分近くを自国リーグのチームから選んだ。ユーロ初出場のポーランドとしては結果を残したいところだが、3月の親善試合で米国に0−3で完敗。チームが自信を失っているのが気掛かりだ。

【予想:グループリーグ敗退】

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著者プロフィール

1965年10月20日生まれ。1992年よりスポーツジャーナリズムの世界に入り、主に記者としてフランスの雑誌やインターネットサイトに寄稿している。フランスのサイト『www.sporever.fr』と『www.football365.fr』の編集長も務める。98年フランスワールドカップ中には、イスラエルのラジオ番組『ラジオ99』に携わった。イタリア・セリエA専門誌『Il Guerin Sportivo』をはじめ、海外の雑誌にも数多く寄稿。97年より『ストライカー』、『サッカーダイジェスト』、『サッカー批評』、『Number』といった日本の雑誌にも執筆している。ボクシングへの造詣も深い。携帯版スポーツナビでも連載中

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