ヨーコゼッターランドのバレー五輪最終予選コラム

ヨーコゼッターランド

“メディア完全シャットアウト”での最終調整

最終調整ではコートを外れる場面も見られた高橋だが、開幕戦にスタメンで出場。写真は第2戦のもの 【Photo:北村大樹/アフロスポーツ】

 5月17日に開幕した北京五輪バレーボール世界最終予選兼アジア予選。全日本女子は第1戦のポーランド、そして続くプエルトリコ戦に勝利。2連勝で最初の休養日を迎えた。アジアで1位になるか、最終予選代表として上位3チームに入るか、北京への道はふたつある日本。アジア勢との対戦を控えているが、出だしとしてはまずまずの2連勝といえるだろう。

 5月3日にナショナルトレーニングセンターで練習を見学させてもらったのが、日本のフル練習を見られた最後の日である。この日以降、大会の放送を担当するホストテレビ局のアナウンサーも全日本OG解説陣も、報道関係者はシャットアウトして開幕まで調整が行われた。バレーボールの取材に慣れているディレクターにとっても「初めてのこと」と驚いたほどである。北京五輪出場へのプレッシャーはどのチームにもあることだが、日本にとっては初戦のポーランド戦にすべてをかけるぐらいの感覚で臨む雰囲気が伝わってきていた。

課題の改善が見られたポーランド戦

試合後、反省の弁を述べた栗原だが、バックセンターからの攻撃を決めるシーンも多く見られた 【Photo:北村大樹/アフロスポーツ】

 さて、開幕前の全日本スターティングメンバーを予想したのだが、セッター対角に入ったのはフタを開けてみれば狩野美雪ではなく高橋みゆきであった。最後に練習を見た時点のチーム練習で乱打を行った際には、1時間を経過しても高橋がコートに入ることは一度もなかったのである。開幕まで約2週間のあいだに日本は何度か高校男子の強豪・東亜学園と練習試合を組んだ。柳本晶一監督は記者会見で、高橋のスタメン起用を最終的に決めたのは開幕1週間前だったと述べた。

 セッター竹下佳江、対角に高橋。荒木絵里香−杉山祥子のセンターラインにエース栗原恵、対角に木村沙織。リベロ佐野優子と従来どおりの布陣で開幕となった。ポーランド戦はスタートから日本が勢いに乗り、気持ちも伸びやかにプレーする様子が見受けられた。攻撃のテンポアップを課題に挙げ、練習ではバックアタックとサイドの攻撃で改善に取り組んでいる場合が多く見られた。相手の高いブロックをかわすために攻撃をしかけるタイミングを速めるのは戦術として有効だが、一歩間違えれば「攻め急ぎ」の状態となって全体が空回りしてしまうことがある。しかし、ポーランド戦に関してはブロックにつかまることもあったが、バックセンターからの木村、栗原のスパイクが決まる場面も以前より多く見られた。
 日本が勝った試合であるから本来ならば日本の良かった点を多々挙げたいところなのだが、第1戦はポーランドの出来があまりにも悪すぎた。昨年のワールドカップで調子が上がらなかったエースのグリンカは体形こそ絞られてきたものの、動きにキレの良さは見られなかった。日本が警戒していたスコブロニスカも大会1週間前にケガをし、ボニッタ監督は大会直前までベストメンバーを組むことができなかったと嘆いた。何よりもスタメンのセッター、サドレクはまったくもってトスが上がらず、代わったスコルパもほとんど機能しなかった。かろうじて3セット目を取ったが、五輪行きを決める大会での試合としては、この日最悪の内容だったのがポーランドだろう。良い素材がそろっているだけに、見るものとしては本当に残念な試合だった。
 初日は第1試合のタイ対ドミニカ戦が全体を通してのベストゲーム。ミスが少なく、ドミニカの成長と向上した安定性が目をひいた。

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著者プロフィール

1969年、米国(サンフランシスコ)生まれ。6歳から日本で育ち、12歳で本格的にバレーボールを始める。早稲田大学卒業後に単身渡米し、米国ナショナルチームのトライアウトに合格。USA代表として1992年バルセロナ五輪で銅メダルを獲得し、1996年アトランタ五輪にも出場した。現在はスポーツキャスターとして、各種メディアへ出演するほか、後進の指導、講演、執筆など幅広く活動している。

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