主砲・松中も認める2年目の若鷹

田尻耕太郎

2番打者ながらライトスタンド上段のパンチ力

 2年目の若鷹が確かな存在感を示している。外野手の長谷川勇也だ。4月22日の東北楽天戦(Kスタ宮城)に「7番・レフト」で1軍デビューして以来、スタメンを外れたのは1試合のみ。5月1日の埼玉西武戦(西武ドーム)からは2番打者に定着。5月に入りチームが調子を上げる中で、主砲の松中信彦に「長谷川が2番にいることで打線のつながりが良くなった」とまで言わせた。

 2番打者ながらパンチ力もある。4月29日の埼玉西武戦(西武ドーム)でプロ初本塁打をマーク。ライトスタンド上段まで届く特大弾だった。1軍に昇格するキッカケも長打だった。2軍戦で放った8安打の内訳を見ると、本塁打1、三塁打3、二塁打4とすべてが長打だった。持ち味は「強く鋭いライナー性の打球を打つこと」という。さらに、ここ最近は「リラックスした感じで振る。その方が飛ぶことに気付きました」と新たな打撃をつかもうとしている。

離脱した多村の言葉を胸に

 活躍しなければならない理由がある。1軍昇格から3試合目の4月25日の千葉ロッテ戦(ヤフードーム)で“大事故”を起こしてしまったからだ。それは3回表だった。1死二塁、左中間の浅いところにフライが上がった。レフトを守っていた長谷川は猛然と突っ込んだ。絶対に捕る――。
 ここまでチームは連敗中。しかも初回に先制点を許しており、追加点は与えたくない。そして、この日は本拠地デビュー戦。必死になる材料がそろい過ぎていた。捕れると思った瞬間、すぐそこに気配を感じた。センターの多村仁もボール目掛けて突っ込んできた。
「多村さんの声は聞こえました。ただ、その時には遅かった。避け切れませんでした」
 そのまま2人は激突。長谷川はかすり傷ですんだが、多村は右足腓骨(ひこつ)を骨折し、前半戦の復帰が難しいほどの重傷を負った。長谷川は担架で運ばれる多村をぼう然と見つめていた。

 長谷川自身もルーキーイヤーの昨季は故障のためシーズンの大半を棒に振っている。「野球を始めてからこんなにつらい思いをしたことはなかった」というほど苦しんだ。だからこそ、余計に胸が痛んだ。
「ベンチに戻ってから、すぐに多村さんのところに謝りに行きました。多村さんからは『気にしなくていい。気持ちを切り替えて、これからもどんどん(ボールを)捕りに行けよ! そしてオレの分まで打てよ』と声を掛けてもらいました」
 
 ここまで44打数10安打、2割2分7厘と打率は低いものの、5月に入ってからは8得点を挙げるなど、まずまずの結果を残している長谷川。しかし、立場はこれから厳しくなるだろう。同じ外野手の大村直之が7日までの東北楽天3連戦で4打数3安打と調子を取り戻し、スタメン出場をうかがっている。また、昨季2番打者を務めた本多雄一も2軍戦で5試合連続スタメン出場しており1軍復帰は間近だ。
 長谷川の本当の戦いはこれから始まる。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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