マッスル・ハウスに“黒いカリスマ”蝶野が出現
レッドカーペット・プロレスに総勢47選手が挑戦

 DDT・マッスル坂井がプロデュースする「マッスル・ハウス6」が6日、後楽園ホールで開催され、超満員札止めとなる1850人を動員した。

 今大会は開催1カ月前に坂井が「親しらずからバイ菌が入り、下あごの骨が壊死しかける」という蜂窩識炎(ほうかしきえん)で緊急手術を行い、約3週間にわたり入院。大会2週間前に退院はできたものの、まだ肝心の親しらずの抜歯も終わっていないという状況から準備不足が心配されていたが、観客動員は過去最高を記録した。


 これまではセットなどを組む関係で客席が置かれていなかったホールの北側ステージ席を初めて開放。代わりに、リングから北西に向かって立体の花道が設置され、この花道の全ぼうが明かされるや、なんと全48試合、総勢60人以上がリングに登場した。


これまでもマッスルには鈴木みのる、高山善廣らサプライズゲストが参戦してきたが、今大会ではなんと新日本プロレスのレジェンド、蝶野正洋が初登場。短時間ながら痛烈なインパクトを残した。

1分間のレッドカーペット・プロレスで迷勝負続出

 今大会では「1分間で笑わせる」をテーマに大人気のお笑いネタ見せ番組「爆笑レッドカーペット」になぞらえ、「1分間でプロレスのシングルマッチを行う」という画期的な試みに挑戦。手動で動く「ザ・フラワーロード・オブ・レッドカーペット」(レッドカーペットの花道)に乗って選手が入場し、制限時間1分のシングルマッチ(引き分けならジャンケンで決着)が次々と繰り広げられた。


 出場選手は726、ジャイアント馬謖、アントーニオ本多、金的桜ヶ丘、タートルヘッドBJ、藤岡典一、TAKEMURA、Mr.マジック、松永智充、GENTARO、セック鈴木、オナルド・ファック、クズ・ハヤシ、ペドロ高石、大家健、ヤス・ウラノ、ボボ・ガマンジル、軍団ひとり、スペルマ・デルツィン、大塚愛撫、趙雲子龍、ガッツ石島、DJニラ、酒井一圭、タノムサク鳥羽、テント・ハリゾー、JOM太郎、UZ、プルプルH、リャン・ウーピン、オナン・オナスティ、A・K、BIMAwithアンソニー・W・大家、“ハリウッド”ストーカー市川、NOSAWA論外、MAZADA、ダンブー松本withサシミ、サソリ、ゴージャス松野、ジャンボ菊、ハチミツ二郎、虎龍鬼、佐野直、石川修司、高木三四郎と、なんと総勢47人(セコンド含む)。


 CIMAをモチーフにした学生プロレスのBIMAと、大家と王子をミックスしたアンソニー・W・大家、そして本物のストーカー市川という、「プロレス界のタイフーンの目になる」トリオの結成や、GENTARO、ヤス・ウラノら学生プロレス出身レスラーvs現役学生たちの対決など、ここでしか見られないようなレア(というかマニアック)な顔合わせが次々と実現。実に44試合に及ぶ激闘の末、東京ダイナマイトのハチミツ二郎が最後の相手となる高木三四郎を丸め込んで5人勝ち抜きを達成。次に控えていたベルトハンター×ハンター・矢郷良明にチャンスを与えることなく、飯伏幸太の持つIMGPヘビー級王座挑戦権を手に入れた。

サソリが飯伏からIMGP王座を奪取

しかし、休憩中にハチミツのギャラが1試合1万円ではなく100万円だったことが発覚。すでに5試合を行ってしまったことから、急きょタイトルマッチだけはキャンセルさせて、別の挑戦者を立てることになった。

 とりあえず、先ほどのレッドカーペットに登場したレスラーたちを集め、偶然にも客席に座っていた占い師兼お笑い芸人の小笠原まさや氏に、「今年もっとも売れるレスラー」を占ってもらった結果、「生真面目でロマンチストなさびしがりや」のサソリが飯伏の持つIMGPヘビー級ベルトに挑戦することに。

 20人以上をセコンドにつけて試合に臨んだサソリは、坂井の嫌がらせ、男色ディーノのディープキス、DJニラレフェリーの超高速カウントというアシストを受けて飯伏からベルトを奪取。見事新王者となった。


 ところが、サソリを中心にした「サッソの世界」のメンバーに入れられそうになった坂井、ディーノが「オレたちもトップに立ちたい」と主張したことから、急きょトリプルスレッドによるタイトルマッチが行われることに。今までの一連の流れから急に決定したにもかかわらず、なぜか試合前の煽りVTRもしっかり3人のコメント入りで用意され、試合中に「エトピリカ」が流れ出すと、坂井が試合の打ち合わせを思い出し始めるという、まるで段取りが決まっていたかのような展開となる中、その“打ち合わせ”を忘れたサソリが、一斗缶を手に大暴れ。「けがしててまともに試合できないから、ぶっちゃけヤオ☆ボーイしようとしていた」という坂井を腕ひしぎ逆十字固めで粉砕し、初防衛に成功した。

西口プロレス乱入で禁断の抗争に突入

 もはや満身創痍(そうい)のマッスル勢は、今後は「安全第一。台本重視。筋肉禁止。100回のスクワットより1回の打ち合わせ」をモットーとした展開でお茶を濁そうとするが、そこに、まったく同じスローガンを掲げる西口プロレス勢が乱入。「オレたちとかぶってる」とマッスルを敵視する西口勢は、「1つのリングにアントニオは2人もいらない」「お笑いとかミュージカルは西口が先にやっていた」とケンカを売ると、これを聞いた坂井も「お互いの看板をかけて勝負しろ」と呼応。坂井、ディーノ、アントーニオ本多組vsアントニオ小猪木、ハチミツ、見た目が邦彦組による6人タッグマッチに突入した。


 過去にプロレスリング・ノアの選手と戦ったことがあるという自信から、「大船に、いや、箱舟に乗ったつもりで見ててくださいよ」といきがってみせた坂井だが、虫歯(坂井)、糖尿病(ディーノ)、ノイローゼ(本多)という状態のマッスル勢は西口の勢いに押されっぱなし。小猪木のスリーパー、延髄斬り、ハチミツのスワントーンボムから見た目がの見た目がクラッチという連係攻撃に坂井が3カウントを奪われた。


 試合後、坂井は看板をかけると言った言葉をごまかすかのように西口勢をベタ誉めし、共にプロレス界を盛り上げようと誓い合ってそのまま大会を締めようとするが、突如「CRUSH」と共に“黒いカリスマ”蝶野が登場。

蝶野が残した“黒いメッセージ”の真実とは

 前日に同所で自身がプロデュースする「PREMIUM」を成功させたばかりの蝶野の登場に客席のテンションが最高潮に達するが、次の瞬間、 蝶野が「リングの上でふざけたことやってんじゃねえ」と声を荒げたことから、場内の空気が一変した。


 蝶野は責任者としてリングに押し上げられた坂井に「本気を見せてみろ」と詰め寄り、坂井の張り手でサングラスを吹っ飛ばされると、さらに強烈なビンタをお見舞い。ダウンした坂井に「この団体辞めろ」と一喝、「辞めます」と涙目になりながら即答した坂井の背中に黒のスプレーで「nWo」の文字を書き残して去っていった。


 蝶野のあまりの剣幕に誰もが声を失う中、最初に「あっ」と声をもらした坂井の手に乗っていたのは、あの、生死の境を彷徨いかける原因となり、歯医者が連休に入ってしまったために抜けずにいた“親しらず”。さらに、よく見ると坂井の背中に書かれていた文字は「nWo」ではなく、「nMo」。かつて一世を風靡した「ニュー・ワールド・オーダー」ではなく、「ノー・ムシバ・オーダー(虫歯のない秩序)」という、蝶野なりの思いやりあふれるメッセージであったことが発覚した。


さらに、蝶野が出てきてから去っていくまで、ちょうど1分であったことも判明。これまでさんざん行われてきた48試合よりも、“リアルプロレスラー”の蝶野がもっとも観客の心をつかんだことに、“ひと山いくらの汁レスラー”たちはただただうなだれるばかりだった。

最後はマッスルも西口勢も互いにリスペクトを送り、小猪木の音頭で「小(こ)1、小2、小3、マッスル、マッスル」を決めて一致団結。何だかんだでハッピーエンドを迎えた。


 試合後、大会の総括を語った坂井は、「マッスル」をみんなと共に作り上げる楽しさと、入院生活の辛さを力説。蝶野の登場については「あそこで“辞める”って言わなかったらSTF食らってアウトだった」と、あまりにもあっさりした「辞める」発言の真意を語った上で、今後も好きなことを「マッスル」で好きなことを続けていくと誓った。

高木裕美

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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