偉大なGKへの道を歩むカリーソ=今季のリーベルを支える若き守護神

カリーソの活躍による快進撃

古巣で活躍を見せるカリーソは偉大なGKへの道を歩み始めている 【 (C)Getty Images/AFLO】

 カリーソは、リーベルのクラブ史上名高い2人のGKのうちの1人と同じ苗字を持っている。その名はアマデオ・ラウル・カリーソ。45年にプロデビューを果たし、リーベル一筋で68年に引退した選手である。一時はアルゼンチンのフットボール界で無失点記録を更新していたGKのパイオニアでもあった。
 23歳のファン・パブロ・カリーソはリーベルの下部組織出身で、自然とトップチームに引き上げられ、2005年にプロデビューを飾った。当時の監督だったダニエル・パサレラは、ヘルマン・ルクスに代えてカリーソを正GKに据えた。現在はマジョルカに所属しているルクスは、04年のアテネ五輪で優勝したアルゼンチン代表のゴールマウスを守っていた実力派だった。

 この若き守護神はトップチームに定着してから、取り立てて自らの実力をアピールする必要はなかった。なぜなら、カリーソはフットボーラーにしては特異な性質の持ち主で、とりわけその物静かなたたずまい(ピッチの内外で)と俊敏さには特筆すべきものがあるからだ。また危険に対する察知能力にも優れており、相手のチャンスを摘むことにも長けている。カリーソの動きの質は、テニスプレーヤーのロジャー・フェデラーのそれに似ていると言えるかもしれない。彼の動きはとても柔軟で、スローカメラの映像を見ているようである。

 PKのシーンを例にとってみる。カリーソは体全体をある1点に投げ出しながら、両足は別の方向に置いたままであることが多い。あたかもすべての可能性に対応できるかのように。そして、ほとんどの場合において、彼はボールの方向に飛んでいるのだ。“別の”方向にボールが蹴られたときにも瞬時に反応し、ボールに触れている。

 リーベルはカリーソに多くを負っている。GKとしての活躍のみならず、後期リーグではリーダーシップも発揮してチームに貢献。04年の後期リーグ以来、もう7シーズンも無冠に終わっているリーベルにとって、リーグを折り返して首位に立っている今季はチャンピオンに帰り咲く絶好のチャンスである。また、12年ぶりのコパ・リベルタドーレス優勝への期待も高まる。何しろリーベルは49回も参加していながら、たった2回(86年、96年)しかタイトルを獲得していないのだ。

 今後リーベルにとってポイントとなるのは、監督のシネオネによる戦術的な仕事でもなければ、チーム内での信頼関係でも、若きMFディエゴ・ブオナノッテやウルグアイ人ストライカー、セバスティアン・アブルーのコンディション維持でもないだろう。それは、ひとえにGKカリーソの存在である。今季のリーベルはゴールラインからすべてが始まり、カリーソのスーパーセーブで終わっている。すでにアルゼンチン代表にも名を連ねているカリーソは、疑いの余地のない名GKとなりつつある。

<了>

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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