代表入りが期待される新参のストライカーたち 横尾愛の「ようこそフランス・リーグへ!」
ついに終結した“イグアイン論争”
レアル・マドリーに移籍したイグアインはフランス代表への招集を断り、アルゼンチン国籍を選んだ 【Photo:AFLO】
イグアインはアルゼンチン人の両親の元、フランスで生まれた二重国籍の選手。当時、アルゼンチンのリバープレートでプレーしていたイグアインの存在を知ったドメネク監督は、フランスサッカー協会の公式サイトで「あの年齢で、あのレベルでプレーしようと思ったら、才能がないと無理だね」と語り、少なからず興味を示していた。さらに、イグアインが「僕はフランス人だ」とメディアに公言しているのを聞き、こうも言っていた。
「……彼の2つ目の才能は、フランス人になりたがっていることだな」
それでもドメネク監督は、最初は慎重だった。本当にハイレベルの才能を持っているのか、それともすぐに消えてしまう選手なのかを見極めるために、「一度エスポワール(ユース代表)に呼んでみるのも悪くない」と、むしろ悠長に構えていたのである。
だが、翌年の2月7日に行われる親善試合の相手がアルゼンチンに決定したとたん、ドメネク監督の行動は加速する。「呼ぶなら早いほうがいい」とばかりに、エスポワールを飛び越えて、A代表のギリシャ戦(11月15日)への招集に踏み切ったのだ。イグアインは生まれこそフランスだが、育ったのがアルゼンチンであるため、フランス語はまったく話せない。それでも「フットボールは世界共通の言語だから、大丈夫だよ」というのが、ドメネク監督の見解であった。
ところが招集を受けたイグアインの答えは、「11月13日に会見を開いてお返事します」。しかし13日は、フランス代表の集合日だ。当日にブエノスアイレスで会見を開いていたら、答えが「ウイ」でも合流に間に合わない。「体よく断られたな」という予想は的中し、10日には早くもフランス代表への招集を辞退するファクスが協会に送られてきたのである。
「今すぐ(国籍を)選べとは言っていない、話し合うためにおいでと言っただけなのに」とドメネク監督は嘆いた。ならば、2月7日のアルゼンチン戦で、もう一度イグアインがフランス代表に興味を持つかどうかアタックしてみるまでだ。ドメネク監督がイグアインに会うべく、マドリーに赴いたのが今月26日。答えは再び「ノン」だった。イグアインは正式にアルゼンチン国籍を選択すると表明し、年をまたいで続けられた“イグアイン論争”は、ここにようやく終了したのだった。
リーグアンでゴールを量産する無名のストライカー
「フランス代表に入りたがって」いて、「同じぐらい才能を持っている」かもしれない攻撃的なポジションの選手たちは、折しもリーグアンで激しい得点王争いの真っ最中だ。ドメネク監督は、果たしてこの中から新しい選手を選ぶだろうか?
第22節を終えた現在、8ゴールを挙げてフランス・リーグで得点ランキングのトップに立っているのは総勢7名。7ゴールの5名がそれに続く。フランス人選手は5名おり、さらにその中に、今までほぼ無名だった選手が2人。無名だったのも無理はない、2人とも昨シーズンまで1部にはいなかったのだ。すなわちバランシエンヌのFWスティーブ・サビダン(8ゴール)、ロリアンのFWアンドレ・ピエール・ジニャック(7ゴール)である。