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ジャイアントキリングを狙う北のプロビンチャ
コンサドーレ札幌の挑戦

資金力=戦力という現実

「J1残留には、やはり資本力が間違いなく必要。例えば(2007年の)J2を選手、スタッフの人件費の順に上から並べたら、東京V、京都、仙台、C大阪、福岡というようにほとんど順位通りになる。札幌だけが例外。J1も同じで、(自動)降格した2チーム(横浜FC、甲府)は人件費をかけられなかったチーム。ここは必要な部分だと思う」


 昨季のJ2を制し、今季から6シーズンぶりにJ1の舞台に挑むコンサドーレ札幌の三浦俊也監督は、J1を戦い抜くために必要な要素についてこう話した。これは言い換えれば、選手・スタッフ人件費は戦力とイコールであるということ。そして、就任2年目の指揮官の考え方からいけば、08年シーズンの札幌は極めて厳しい戦いを強いられることになる。


 それを予想していたからか、昨シーズン末、三浦監督はJ1昇格を成し遂げながらも、08年シーズンに向けた契約交渉で、資金力不足などを理由に一度は態度を保留した。資金のないチームが、J1に残留することがいかに困難か。最終的には合意に至ったが、04年に大宮をJ1に昇格させ、05年、06年シーズンには苦しみながらも残留を果たしてきた三浦監督は、その難しさをよく知っている。だからこその保留だった。


 今シーズンの札幌の人件費はおよそ10億円。6億円台だった昨シーズンからは上積みされたものの、06年のJ1のデータに照らし合わせると下位の金額だ。このため、三浦監督が掲げる今シーズンの目標は「残留争いをしての、残留」という非常に現実的なもの。母体企業を持たないプロビンチャ(地方のクラブ)であり、累積赤字も多いため、あらゆる部分で使える資金は少ない。そのクラブが、25億円近くの人件費を注ぐ(06年数字)浦和などがいるJ1に挑む。03年末に中長期強化計画である「五段階計画」を掲げ、J1定着を目標としてここまで戦ってきた札幌だが、数字だけでみれば、その目標達成は簡単なことではないように映る。

戦力不足を補う三浦監督の戦術

 札幌のJ1残留のポイントとなるのは、やはり三浦監督の手腕だろう。ここでもう一度冒頭のコメントを振り返ってもらいたい。その中には、「札幌だけが例外」というフレーズがある。そう、昨シーズンの札幌はJ2で優勝を果たしているが、戦力的には決してJ2トップレベルのものではなく、むしろ「J2の中でも中位くらい」(三浦監督)だった。そのチームが、東京Vや京都といったJ2屈指の戦力を有するチームに競り勝ってきたのだ。札幌を唯一の「例外」にしたのは、三浦監督が札幌に持ち込んだ戦術だった。


 三浦監督が駆使するのは、ゾーンディフェンスをベースとした独自の守備戦術。システムは4−4−2でDF、MF、FWの3ラインが常に一定の距離を保つ。FWが前に出ればMF、DFもそれに応じて押し上げ、最終ラインが下がればMF、FWもポジションを下げる。そのポジションバランスを常に維持し、スペースを作らず試合をこう着状態へと持ち込んで相手のパワーやスピードを封じる。そうやってロースコアの展開に持ち込むことで強者との戦力差を埋め、接戦にして勝機を見いだすのだ。


 もしも昨シーズンの札幌が、三浦監督の「守り勝つ」戦術を使わずに、東京Vや京都、仙台といったJ2でトップクラスの戦力を持つチームに対して真正面から対峙(たいじ)していたならば、おそらく札幌の昇格はなかったはずだ。

 J1を戦う今季は、昨季以上に強者との戦力差を埋める必要がある。なにしろ昨シーズンはリーグ中位の戦力だったが、今季はリーグ下位の戦力となる。札幌にとっては、毎試合、ジャイアントキリングを目指すことになるのである。

斉藤宏則

1978年北海道生まれ。北海学園大学経済学部卒。札幌市を拠点に国内外を飛び回る。サッカーでは地元のコンサドーレ札幌、各年代日本代表を中心に、ワールドカップ、五輪、大陸選手権などの国際大会にも精力的に足を運ぶ

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