「6戦無勝利」=J1第6節 千葉 2−4 大宮

西部謙司
 厳しい結果ですな。これで6戦して勝ち星なしです。大宮アルディージャ戦は後半だけなら惜しいゲームでしたが、前半は全然ダメでしたからね。前半のツケが回って、こういう結果になってしまったと思います。月刊・犬の生活4月号は、「6戦無勝利、どうよ」というテーマでお届けしましょう。

4−4−2の成熟度に差

 ジェフ千葉、大宮ともに中盤フラット型の4−4−2。同じシステムでやっているだけに、両者の成熟度の差が表れていた。

 一番大きな差は守備時の連動性だ。大宮はMFとDFの2本のラインが、横方向へスウェーする動きがスムーズだった。たぶん狙っていたのだろうが、千葉の右サイドバックである市原充喜へボールが入ったときは、ヒュッとMFがスウェーして、ディフェンスラインがシュッと上がる。プレッシングの掛けどころと、そのときの連動性に“こなれた”感じがあった。大宮はずっとこのシステムでやっているせいだろう。

 一方の千葉は、この連動性で見劣りする。ディフェンスラインの押し上げも鋭さがなく、ゾーンマーキングの受け渡しも何となくぎくしゃくした印象。攻めても、15分間はまともな組み立てができていなかった。18分に左MFフルゴビッチのクロスを青木孝太がヘディングで狙ったのが、唯一の決定機に近いシーンだった。

 守っては大宮のデニス・マルケスの軽度の変態ドリブルに手こずる。20分には、大宮のロングボールを斎藤大輔がヘディングで逃れようとして内田智也に渡してしまい、内田のドリブルに対して市原が見え見えのスライディングに行ってかわされ、シュートを打たれる。コースが空いていたので、シュートブロックのために滑ったのだろうが、タイミングが早すぎたし、相手にも読まれていた。残念ながら経験不足というか、駆け引き不足。

 21分、デニス・マルケスが“1人スルーパス”みたいに斎藤をぶっちぎり、左隅へ決めて大宮が先制した。

デニス・マルケスの個人技

 32分、またもデニス・マルケスの個人技が炸裂して0−2となる。183センチ、74キロとガッチリした体格、突っ立った状態からシザース系のフェイントで誘い、DFが引き込まれた瞬間にすり抜けていく。ファーストタッチで失敗しても、セカンドタッチで何とかしてしまう能力があり、確かに強力なアタッカーである。けれども、けっこうクセのある持ち方なので、事前に研究していればあそこまでやられなかったと思うのだが、対策は立てていたのだろうか。

「青木良太や池田昇平の起用も考えたい」

 試合後、クゼ監督はメンバー変更を示唆していた。89分に決められた4点目も、ペドロ・ジュニオールのドリブルを阻止できていない。3失点がドリブル突破からなのだから、1対1に問題があったのは明らかだ。

 千葉は反撃の糸口を探るが、アプローチが単純すぎる。2トップの巻誠一郎、青木孝太に浮き球を蹴り、それをフリックして浅いラインの裏を狙っていたが、大宮のディフェンスはこれぐらいでは崩れなかった。パス回しでも大宮が上回っており、4−4−2同士での回し方に一日の長があった。

 大宮は中盤を密に、ディフェンスラインの高さをキープしてコンパクトに守る。かつて阿部勇樹やストヤノフがいたときには、サイドへの長いパスで攻略していたものだ。密集している場所をパスで破るのは難しいが、そこを飛ばして、サイドに張り出した選手に長いパスを命中させれば、うまくすればワンタッチで縦に突破できる。最終ラインがフラットだから、タッチライン際でオフサイドぎりぎりにボールを受けて縦に運べれば、相手のディフェンスを全員背走させられるのだ。

 ところが、今の千葉にはそういうボールを蹴る選手がいないのか、最初からそういう狙いがないのか、中央へのロブばかりだった。

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著者プロフィール

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『フットボール代表 プレースタイル図鑑』(カンゼン) 『Jリーグ新戦術レポート2022』(ELGOLAZO BOOKS)。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

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