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コラム〜水上の若きサムライたち〜

若きスーパースタート巧者 野中一平(前編)

野中一平(のなか いっぺい)選手

2019年1月1日更新 文:黒須田守(BOATBoy) 写真:中尾茂幸(BOATBoy)

115期チャンプ

若きスタート野郎!
若きスタート野郎!

 ボートレースのスタートは独特だ。「フライングスタート方式」と呼ばれるそれは、いわゆるヨーイドンのスタートではない。ホームストレッチのほぼ中央に設置されている大時計の針が「0」を指した瞬間がスタートで、選手たちは1分40~50秒の待機行動中にコースを獲りながらそのタイミングを合わせにいく。
 もちろん、できるだけ0を指す瞬間にスタートしたほうが有利である。出走している選手それぞれがタイミングを合わせてスタートするといっても、当然選手によって感覚が違い、6艇がまったく同じタイミングでスタートラインを通過することはほとんどない。だから、誰もが他艇より少しでも早くスタートラインを通過したいと考える。それが0を指す瞬間だったら、理想ではある。ただし、0を指すより早くスタートラインを通過するとフライング。また、0を指してから1秒以上遅れてスタートラインを通過すると出遅れとなる。ともにその選手は欠場扱いとなり、舟券はすべて返還される。罰則も重く、選手にとっては忌むべき事態だ。特にフライングはペナルティはもちろん、精神的な圧迫も大きい。だから、フライングの危険性があると感じれば、選手はスロットルレバーを放して減速をはかるし、また「0」の瞬間にタイミングを合わせる選手はまず皆無と言っていい。コンマ01でもズレればフライング、というリスクを冒すのは愚かと言っていい。
 理想は1艇身全速、という言い方がある。1艇身とは、コンマ15秒のこと。モーターボートはトップスピードならおおよそコンマ15秒で1艇身分進むと言われている。すなわち、理想のスタートタイミングは大時計の針が0を指してからコンマ15秒後で、しかもトップスピードに乗せた状態でスタートラインを通過すること、とされているわけだ。これなら他艇から致命的な遅れはなく、しかもスタート後にもスピードを乗せて1マークに突入できる、というわけだ。実際に平均スタートタイミングでコンマ15を出すことができれば上々と言えるし、トップクラスの選手のほとんどがそれくらい、もしくはそれよりも早い平均スタートタイミングを記録するものである。
 とはいうものの、大舞台などでは、もう少し早いタイミングを設定して勝負を懸ける選手も多々いるし、スタート巧者と言われる選手はコンマ15以上の平均スタートタイミングを叩き出すものである。艇界きってのスタート巧者と言われる菊地孝平は、前期の平均スタートタイミングがコンマ11。平均でそれだけのタイミングを記録し、ということはコンマ09以上のいわゆるゼロ台を何度も叩き出しているのだから、そのスタート力は凄い。他にもそういった選手は何人か見受けられ、ファンからも人気を博している。舟券を買う側からすれば、スタートが早い選手はやはり魅力が大きいのだ。
 前置きが長くなったが、本稿の主役・野中一平もそうしたスタート野郎の一人。2019年は大きな飛躍を期待できる注目株だ。

まくり一撃が得意技
まくり一撃が得意技

 野中一平は第115期生として、2013年秋にやまと学校(現ボートレーサー養成所)に入所。訓練生として優秀な成績を残し、1年後の卒業記念レースでは優勝戦に出走。見事に優勝を収めている。その表彰式では、「モンスターを超えます」と宣言して話題を集めた。モンスターとは、往年の名選手・野中和夫のこと。同じ姓をもつ若者が“やまとチャンプ”に輝いたことで、多くの人がモンスターを想起したのだ。野中和夫といえば、SG17優勝という艇界レコードをはじめ数々の記録を打ち立て、史上最強選手の論争ではかならず俎上にあがるスーパースター。養成所を卒業した若者がそれを超えると宣言したのは、多分に言わされた感もあるわけだが(笑)、しかし未来のスターレーサーとなることに大きな期待がかけられたのは確かだ。“平成の野中”は希望いっぱいにレーサーとしての一歩を踏み出した。
 もちろん、プロの水はそう甘くはない。野中はデビュー3走目にいきなりフライングを切ってしまっている。養成所時代からスタート力には定評があった野中だが、それがプロの舞台でかえって裏目に出てしまったかたちだ。
 ただ、この男はただものではなかった。デビュー当初にフライングを切ると、その後は慎重なスタートに終始する若者も少なくないなか、野中は持ち味を発揮せんと度胸をもって早いスタートを決め続けた。デビュー期のうちに初勝利はあげられなかったが、平均スタートタイミングはコンマ14。一流選手並みの数字をマークしたのだ。若きスタート野郎・野中一平は、早くもその片鱗を見せつけて、プロレーサーの道を歩み始めた。
 (後編に続く・・・)1/15(火)更新予定

野中一平
野中一平 (のなか いっぺい)選手プロフィール

登録番号4850。115期。支部・愛知。出身・岐阜。1994年10月17日生まれ。A型。

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