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コラム〜水上の若きサムライたち〜

今、一度目の旬! 丸野一樹(前編)

丸野一樹(まるの かずき)選手

2016年4月1日更新 文:黒須田守(BOATBoy) 写真:中尾茂幸(BOATBoy)

デビュー戦で1着!

急上昇中の若武者だ!
急上昇中の若武者だ!

 わりと少なくない数のファンが感じていることがある。それは「若手選手はよくわからない」ということだ。ようするに、馴染みが薄い。どんな走りをするのか、どの程度の力量があるのかを知らない。だから、舟券が買いにくい。そんな物言いが、ボートレース場への行き来の道筋や、ボートレース場界隈の酒場などで、よく聞かれる。
 これは、ボートレースの特質によるものでもある。ボートレースが他のプロスポーツと違うのは、アマチュア競技が確立されていないことだ。実際にはアマチュアのボートレースも行なわれているが、どちらかといえば愛好者たちのレースであって、プロへの道とほぼ直結していない。ボートレーサーになるには、福岡県のやまと学校に入所しなければならない――というのは何度か書いてきたことだが、入所した時点ではほぼ全員がズブの素人である。アマチュアで実績を残してスカウトの目に留まり、プロへの道を歩み出す、という野球でもサッカーでもプロスポーツには欠かせない新戦力の獲得方法がボートレーサーにはないのである。
 だから、1年間のやまと学校での訓練を経て、プロとしての技量を身に着けてデビューしたとしても、いざ先輩たちと同じフィールドで戦ってみればキャリアが圧倒的に違う。技術もそうだし、レースでの駆け引きもそうだし、経験が不足しているのだ。ドラフト1位のルーキーピッチャーが1年目から最多勝を獲得する、というようなことはボートレースにはありえない。35年も前に、今村豊がいきなりトップクラスに到達するという出来事はあったが、完全に例外である。現代ボートレースでは今村豊はまず出現しない。
 デビューしてからも、しばらくは――それこそ年単位で――苦戦は続く。先輩たちに揉まれ、多くの敗戦を経験し、それでも喰らいついて技量を磨き、悔しい思いをひたすら続けて、若者たちは強くなっていく。その過程にある選手たちは、やはりしばらくは、なかなかファンの目に留まらない。名前を覚えてもらうには、どうしても時間がかかる。ボートレースのひとつの側面である。
 しかし、本当は、だからこそ若手選手に注目することはボートレースの醍醐味でもある、のである。ここに気づいた者は、いろいろな意味で恩恵を受けるはずだ。まず、若者をまだよく知らないファンが多いから、実はそこに美味しい舟券が山ほどある、ということ。いち早く彼らの特徴を知れば、舟券戦略上は強力な武器になるのだ。そしてもうひとつ、彼らを追いかけ続ければ、その成長を見続けることにもなる。日々強くなっていく若者たちが、成績を上げ、走りに鋭さも加わり、そしていつか強い先輩たちに一泡吹かせる存在になっていく。そんな原石を見つけ、注目し続けることは、必ず大きな感動を得られることにつながる。さらに数十年も追いかけられる宝物のような選手が、自分のなかに生まれるのだ。ファンとして、これは極上の幸せと言える。
 今、そんな感動を味わわせてくれるかもしれない一人。それが近況急成長を遂げつつある、丸野一樹である。

気の強そうな表情を見せることも
気の強そうな表情を見せることも

 丸野一樹は、第109期生としてやまと学校に入所。高校時代に現在の地元プールであるボートレースびわこでレースを見て、ボートレーサーになろうと決意。当時は高校球児ではあったが、身長165cmと野球選手としては小さいほうで、その体格を生かせる職業として、ボートレーサーを意識したようだ。持ち前の運動神経、またガッツもあって、2度目の受験で合格。1年間の訓練を経て、2011年11月にびわこボートでデビューしている。
 デビュー戦は鮮烈だった。出走したレースは、1号艇にA級選手、それ以外はB級選手という、俗に言う“シード番組”。お客さんに、舟券の軸となる選手がわかりやすいようにと組まれるレースで、当然ながら1号艇の1着率が圧倒的に高くなりがちである。デビュー戦の新人がいきなりそういうレースに組まれ、普通であれば苦戦必至なのだが、丸野は違った。6コースからトップスタートを切って一気に内を叩いていき、1号艇のA級選手をも呑みこんで、先頭に立ったのだ。そう、デビュー戦で初勝利!
 丸野は地元ファンをも唖然とさせる大駆けで、ボートレーサーとしてのキャリアをスタートさせたのである。
 いきなり非凡なところを見せた丸野だったが、しかしプロの世界は甘くない。デビュー23戦目に2勝目をあげてはいるが、やはり結果の出ないレースも多かった。舟券にもちょくちょく絡んだのはさすがだったが、大敗も多く、最初の半年で残した勝率は2・84。近年の新人としては優秀なほうではあるのだが、それでも悔しいレースをたくさんたくさん、経験せざるをえなかったのである。
 (後編に続く・・・)4/15(金)更新予定

丸野一樹
丸野一樹 (まるの かずき)選手プロフィール

登録番号4686。109期。支部・滋賀。出身・京都。1991年8月5日生まれ。A型。

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