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コラム〜水上の若きサムライたち〜

究極のストーリーを演出したスーパースター 山崎智也(後編)

山崎 智也(やまざき ともや)選手

2013年2月15日更新 文:黒須田守(BOATBoy) 写真:中尾茂幸(BOATBoy)

ドラマチックすぎるハッピーエンド

ついに黄金のヘルメットを奪取!
ついに黄金のヘルメットを奪取!

 2012年、山崎智也はここ数年にはないペースで賞金を加算し、賞金王戦線では常に好位置につけていた。4月にはびわこでGIIモーターボート大賞を制覇。さらに6月にはSGグランドチャンピオン決定戦で準優勝。SGで優出する回数も減ってきていた山崎にとって、この準優勝は巻き返しのノロシを上げるものでもあった。
 さらに、8月には地元・桐生で開催されたSGモーターボート記念でも準優勝を果たしている。その優勝戦では、2周1マークで2番手を走っていた峰竜太を逆転。鮮烈かつ豪快なツケマイで峰を沈めた走りは、スタンドに大きな歓声を巻き起こし、「これぞ山崎智也の走り」と改めてその実力とスター性を誇示するものとなっている。2着だったとはいえ、このMB記念優勝戦は多くの人に、山崎の健在ぶりをアピールするものとなった。
 そうして、山崎は6年ぶりの賞金王決定戦出場権を得ることになる。獲得賞金ランクは、まさにボーダーの12位だったが、06年以来久々に最高峰の舞台に立つ。本来いるべきだった場所に、山崎智也が戻ってくる。その事実自体が、ボートファンの心を震わせたのは間違いなかった。

 その賞金王前検日の前日、妻である横西奏恵の電撃引退が発表された。山崎は、横西の思いも背負って、絶対に優勝しかないと心に決めて、ボートレース住之江に登場した。さらに、「まさかこんなに大ごとになるとは」とスポーツ紙等の横西引退の扱いに驚きつつも、それがまた山崎の心に火をつけた。ここで優勝を果たしたら、最高にドラマチックなストーリーに仕上がる。「カミさんが舞台を整えてくれた」と山崎は口にし、さらに優勝への意を強くしたのだった。
 そうして迎えたトライアル初戦、6号艇で登場した山崎は、4コースまで動いて勝利への執念を見せつけた。基本枠なりからのレースが多い山崎が前付けを見せたことは、明らかに「いつもと違う山崎智也」とファンの目には映った。トライアル第2戦、山崎は抽選で1号艇を引き当てる。初戦でコンマ29という遅いスタートだったことを悔い、その反省をきっちり活かして、山崎は好スタートから逃げ切りを収める。その姿もまた、山崎の闘志を感じさせるには十分なものと言えた。
 第3戦では、山崎の“もってる男”ぶりが見られた。ピット離れ、1マークで失敗し、いったんは6番手を走った山崎は、そのままシンガリ負けを喫していたら、優勝戦進出に赤ランプが点るところだった。山崎自身、ダメかもしれないと考えたという。ところが、3周1マークで2番手争いを演じていた坪井康晴が転覆、これに峰竜太が巻き込まれるかたちで後退し、冷静かつ巧みに転覆艇を避けた山崎は番手を2つもあげて4着となったのである。このラッキーな、いや見えない手に導かれたかのような順位浮上で、山崎は優勝戦進出を当確とする。舞台は、完全に整えられたのだ。

12年の賞金王は劇的すぎる結末
12年の賞金王は劇的すぎる結末

 優勝戦の日、山崎は「現状維持ではダメだ」と思い切った調整に着手している。これもまた「いつもと違う山崎智也」だったかもしれない。この調整は奏功した。優勝戦のチャンスを実感させるモーターの仕上がりを引き出したのだ。それはたしかに調整の結果かもしれないが、実際は渾身の調整を強い思いで決意した、その心の部分が導いたものと言えるだろう。
 優勝戦、圧倒的な人気を集めていたのは、トライアル3戦を2勝、2着1回とほぼ完璧な成績で戦い抜いた松井繁。絶対王者が、地元で、機力も万全で、しかも1号艇とあらば支持を集めるのも当然。住之江を包むムードは、完全に「松井圧勝」であった。
 山崎はその状況で、「これで松井さんを破って勝ったら、もう一丁カッコ良くなれる」と考えたのだという。怯むのではなく、勝利の価値がさらに高まったと意を強くしたのだ。
「神様がドラマチックを望むなら、僕が優勝するでしょう」(優勝戦共同記者会見より)
 偉大すぎる妻が引退し、その思いを背負って登場した賞金王。一度は優勝戦への道が断たれたかもしれない苦境を神がかった逆転劇で乗り切り、最強の男がポールポジションにすわるなか、クリスマスイブというきらめいた一日に、鮮やかに頂点へと駆け上がる。
 1マーク、山崎のまくり差しが松井のふところを捉えた瞬間、住之江のスタンドは、いやそれをテレビなどで見つめていた全国のボートファンは、つまりはボートレース全体が、一気に華やいだ。
 山崎智也が、本当にドラマチックなハッピーエンドを演出してしまった!
 住之江には、愛する妻と娘が駆けつけていた。ウイニングランを終えた山崎は、祝福する横西奏恵と熱く抱き合い、その“出来すぎ”のストーリーを完結させた。
 スーパースター・山崎智也がついに賞金王決定戦制覇。ただでさえビッグトピックであるこの勝利は、山崎の手によってあまりに劇的な感動を生み出したのである。

山崎 智也
山崎 智也 (やまざき ともや)選手プロフィール

登録番号3622。71期。群馬県出身。1974年3月11日生まれ。A型。 主な優勝:97年全日本選手権(唐津)、98年笹川賞(桐生)、03年全日本選手権(戸田)、06年笹川賞(戸田)、07年賞金王シリーズ戦(福岡)、10年賞金王シリーズ戦(住之江)、12年賞金王決定戦(住之江)

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