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コラム〜水上の若きサムライたち〜

独特のプロペラ理論を武器に戦う 中村亮太(後編)

中村 亮太(なかむら りょうた)選手

2012年8月15日更新 文:黒須田守(BOATBoy) 写真:中尾茂幸(BOATBoy)

亮太スペシャル

人懐こい性格でもある
人懐こい性格でもある

 中村亮太が「亮太スペシャル」なるプロペラを編み出したと話題になったのは、彼が出場する06年新鋭王座決定戦の直前のことだった。
 ボートレースのプロペラは翼が2枚。その翼を規定の範囲で伸ばしたり叩いたりして選手は自分なりのプロペラを作り上げるのだが、亮太スペシャルは他選手のプロペラとはまったく異質な形状をしていた。翼の一部を大胆に切り落としていたのだ。こんな形のプロペラでボートを操縦できるのか……そのプロペラを目撃した選手はそう訝しがったし、ファンも見たことのない形状に驚いたものだった。
 そのプロペラは、もともと漫画『モンキーターン』に登場した「洞口スペシャル」なるプロペラに触発された亮太が、考え出したものだった。洞口スペシャルも翼の一部がカットされた形だったが、亮太は大学の流体力学専門の教授を訪れて理論を聞いたり、飛行機の翼のすぐ横のシートを予約して、翼の動きを見るためだけに2~3往復したりするなど、独自の理論を構築するために研究をつづけた。その結果、翼の一部を切断する形に辿り着き、その「亮太スペシャル」で成績もアップさせていった。中村亮太の名前は、まだ実績的には一介の若手に過ぎなかったにもかかわらず、一気に全国区へ。06年笹川賞には委員会推薦で選ばれて、初のSG出場を果たしている。ひとつの発明が、発明した者の地位をも押し上げたのである。
 それからの亮太は、一気にブレイクを果たしたというわけではなかった。どれだけ独特で性能に優れていたとしても、プロペラだけで勝ち抜けるほどボートレースは甘くはない。A級はキープしていたものの、飛躍的な活躍を果たすまでには至らず、いつしか亮太スペシャルへの周囲の関心度も薄れていった。
 それでも、亮太はその間もプロペラ理論進化への思いを萎えさせることもなく、ひたすらに研究や実践を続けた。プロペラの形状はさらに変化していき、普通であれば左右対称であるべき2枚の翼の形が、それぞれ違うものにもなっていった。その左右非対称プロペラこそ、亮太スペシャルの最終形だった、と亮太は言う。その亮太スペシャル最終バージョンを手に、彼はジワジワと実績を積み上げ始める。「ピット離れは普通だけど、それ以外はすべて上位級に仕上がる」という最終バージョンは、成績的には伸び悩んだ時期にも研鑽を続けた操縦技術に力を吹き込んだ。11年三国周年でGI初優出。さらに12年大村周年では地元GI優出。亮太は着実にステージを上げていったのだ。

7月にはSG初1着!
7月にはSG初1着!

 ところが、12年春からプロペラ制度が改正されることになった。前稿でも記したとおり、新プロペラ制度とは「選手持ちプロペラ制度の廃止」。最強の武器にまで磨き上げた亮太スペシャルが、レースではいっさい使えないことになったのである。新しい制度では、翼の切断も認められていない。誰もが、亮太のこれからを心配するのも当然だった。
 しかし、亮太はむしろ、この制度を歓迎していた。
「たしかにカットしたプロペラを使うことはできないけれども、同時に全員が調整の幅を狭められるわけですから、むしろ僕にとっては有利でしょう。だって、僕は誰よりもプロペラを研究して、他の人が見つけられない理論を発見した。僕がプロペラについては、いちばん詳しいんです。全員が同じスタートラインだったら、僕がいちばん有利だと思ってますね」
 脇目も振らずにひとつのものを探求し、それによって得たオリジナルな何かは、たとえそれ自体を利用することはできなくても、必ず他の何かに応用できる。亮太は、亮太スペシャル進化のために必死に努力したことで、亮太スペシャルがお蔵入りになっても動じないほどの理論や知識を手に入れたのだ。そう、いまや亮太スペシャルとはプロペラそのものではなく、中村亮太が手にしたプロペラ理論のすべてを指す。それが、さらに亮太を成長させていくことは間違いないだろう。
 7月のオーシャンカップで、亮太は06年笹川賞以来6年ぶりにSG出場を果たした。6年前には届かなかったSG初1着も、成長した亮太にとっては決して至難ではなく、節間2勝をあげて、水面を沸かしている。これからも亮太は、SGやGIで誰にも負けないプロペラ知識を駆使して活躍するはずだ。
 8月21日~26日には、ボートレース桐生で開催されるSGモーターボート記念に亮太は出場する。そこでどんな走りを見せて、スタンドを沸かせてくれるのか、おおいに注目したいものだ。

中村 亮太
中村 亮太 (なかむら りょうた)選手プロフィール

登録番号4070。86期。長崎県出身。1980年11月25日生まれ。O型。

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