コラム〜水上の若きサムライたち〜

世界に誇るボートレースの偉人 加藤峻二(後編)

加藤 峻二(かとう しゅんじ)選手

2012年4月15日更新 文:黒須田守(BOATBoy) 写真:中尾茂幸(BOATBoy)

SG最年長優出

笑顔も深い!
笑顔も深い!

 70歳にして現役を続ける加藤峻二は、さまざまな最年長記録をもっている(更新している)わけだが、とりわけファンを感動させたのは、2003年春の「SG最年長優出」であった。
 ボートレース平和島で開催されたSG笹川賞。当時加藤は、61歳5カ月である。還暦を超えてSGに出場するというのが、そもそもとてつもないことであるが、この笹川賞で加藤は驚愕の記録を残したのである。
 初戦3着、2戦目5着、3戦目3着とした加藤は、4戦目で1着をあげている。そして予選最終走となる5戦目で3着となり、準優勝戦に進出。この時点ですでにSG最年長準優出であり、ファンを騒然とさせたものである。
 準優勝戦、6号艇での出走となった加藤は、もっとも不利と言われる大外6コースからスタートし、道中は2~3番手となっている。そこからが凄かった。2番手を走っていたのは、モーター好調だった川﨑智幸。加藤はその川﨑と壮絶な2番手争いを演じることとなったのだ。正直に言えば、ターンスピードでは川﨑のほうが上である。さすがにまだ30代前半だった川﨑にはスピードではかなわなかった。モーターのパワーでも加藤は分が悪かった。しかし、勝負への執念では加藤は決して負けていなかった。有利に進める川﨑に、加藤はあきらめることなく必死で喰らいつき、僅差で追いかけ続ける。川﨑を逆転すれば加藤が優出すると、その予感に興奮したファンは、自分が買っている舟券のことなど完全に忘れて、加藤に声援を送り続けた。平和島のスタンドは、興奮のるつぼとなっていた。
 3周2マーク、加藤の執念とファンの声援がシンクロしたかのように、川﨑の内を加藤が差し切った瞬間、轟音のような歓声が巻き起こった。加藤が2着に浮上した、ということは加藤が優勝戦に進出した! 61歳5カ月の加藤峻二が、最高峰レースであるSGで優出を果たしたのだ。平和島に駆けつけたファンは、自然と立ち上がって拍手を送っていた。加藤に浴びせられるスタンディング・オベーション。あれほどまでに一体となったボートレース場のスタンドというのは、そうそう見られるものではない。
 優勝戦でも加藤は健闘、最終的には5着に敗れたが、いったんは2番手を走り、年齢が半分ほどの烏野賢太や今垣光太郎と大接戦を演じている。優勝した平石和男にも多くの歓声が送られたが、加藤にも惜しみない拍手が降り注いでいた。

ダッシュ戦でファンを沸かせる
ダッシュ戦でファンを沸かせる

 それからも加藤は奮闘を続け、A1級を長くキープ、07年名人戦では優出を果たしている。09年に成績を落とし、B1級へと陥落してからはなかなか成績が上がってこないが、それでも10年名人戦には施行者推薦で出場し、その年から名人戦出場権利を得た(48歳になった)今村豊と予選で真っ向勝負を演じている。今村が勝利を収めているが、加藤は今村に敗れたことを本気で悔しがり、枯れることない勝利への追求心を見せつけていた(それを知った今村も、感動の面持ちで加藤に勝てたことの喜びを語っている)。
 そして、2012年1月12日。加藤は現役選手として、ボートレース平和島で古希の誕生日を迎えた。第2Rに出走した加藤は、2着。勝つことはできなかったが、舟券には絡んでファンの喝采を浴びている。同日、ファンの前で行なわれたバースデー・セレモニーではたくさんの歓声を浴び、「80歳まで走ってくれ!」「明日は勝ってくれよ!」などの声に笑顔を見せた。また、落語家の立川談春師匠も駆けつけた記者会見では、「これからもまだまだ頑張る」と表明。現役レーサーとして勝利を追い求めていく決意を披露している。そう、加藤峻二はまだまだ現役として走り続ける! ボートファンはこれからも、我らが誇る偉大なる巨人のレースを見続けることができるのだ。加藤への敬意を、水面に向かって注ぐことができるのだ。幸せなことである。
 その加藤が、4月24日にボートレース下関で開幕するGI名人戦に出場する。もちろん、古希のGI出場は史上初めての快挙である。加藤より2つ年下の万谷章と揃い踏みでの参戦となる名人戦は、歴史に残る一戦となるだろう。名人戦は、48歳以上のみが出場できる匠たちの祭典。ベテランたちが若々しいレースで、ファンを歓喜させる戦いだ。それだけでも見逃せない一戦なのだが、今年はそこに加藤峻二がいる。ふたたび今村豊とのガチンコ勝負も実現するだろう。万谷と1着2着を分け合うシーンがあれば、それは当然、史上最年長ワンツーである(あわせて138歳!)。ボートレースファンはもちろん、そうでない人たちにとっても、絶対に見逃すことのできないシリーズだと断言する。加藤峻二の存在は、誰にとっても、勇気と希望とパワーを与えてくれるものなのである。

加藤 峻二
加藤 峻二 (かとう しゅんじ)選手プロフィール

登録番号1485。5期。埼玉県出身。1942年1月12日生まれ。A型。 おもな優勝:70年総理大臣杯(住之江)、77年笹川賞(住之江)、77年モーターボート記念(浜名湖)。

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