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コラム〜水上の若きサムライたち〜

艇界のアイドル 山崎智也 (後編)

山崎 智也(やまざき ともや)選手

2009年7月15日更新 文:黒須田守(BOATBoy) 写真:中尾茂幸(BOATBoy)

挫折を乗り越えて

ふと見せる真剣な表情も男前だ
ふと見せる真剣な表情も男前だ

 97年全日本選手権でSG初制覇を果たした山崎智也は、同年の賞金王決定戦に初出場。さらに翌年のSG笹川賞で2度目のSG戴冠を果たして、押しも押されもしないスーパースターとなった。売りは、若くして開花したトップクラスの実力はもちろんのこと、艇界きってのイケメンとうたわれたそのルックス。カッコ良くて強い、という理想的としか言いようのない武器をもつ山崎は、艇界になくてはならない存在へと押し上げられていく。
 とはいえ、山崎の航跡が順風満帆だったかといえば、決してそうではなかった。
 短期間にSGタイトルを2つも獲得したものの、並居る先輩たちも甘くはない。3度めの戴冠がなかなか訪れないままに時は過ぎ、年末の賞金王決定戦への出場は果たすだけの安定した活躍はしていたけれども、大きなタイトルはいつしか遠ざかっていった。
 さらに、2001年には大きな大きな挫折を経験する。賞金王決定戦に出場した山崎は、首尾よく優勝戦に駒を進めたのだが、ここに落とし穴が口を開けて待ち構えていたのだ。まさかのフライング……。この勇み足は、優勝を棒に振るという以上の意味をもっていた。SG優勝戦のフライングには、「向こう1年間、SG出場停止」というペナルティが課せられているのだ。すなわち、山崎は翌02年のSG出場権をすべて、剥奪されてしまったことになる。スーパースターが表舞台から消えるという、非常事態。ビッグタイトル奪取の機会は、さらに遠のいてしまったのだった。
 しかし、この男はやはり“持っている”のだった。03年の総理大臣杯でSG戦線に復帰した山崎は、それまでの鬱憤を吐き出すかのように、いきなり優勝戦に進出し、準Vの大活躍を果たす。さらにこの年の秋の全日本選手権で、山崎は待望のSG3度目の制覇を達成するのだ。衝撃のSG初Vから6年、間に長い長いブランクを挟みながら、その冬眠から覚めた途端にタイトル獲得。山崎のスター性には、誰もが目を見張らずにはおれなかった。

時に男っぽいレースで水面を沸かせる
時に男っぽいレースで水面を沸かせる

 それからの山崎は、艇界のド真ん中を闊歩する存在となっていく。賞金王決定戦出場は当然のノルマ。SGでも、優勝には手が届かない時期もあったが、常に主役を張ってシリーズを盛り上げた。06年笹川賞では、ついに4度目のSG制覇。その年、8つのSGレース中5度の優出を果たし、年間表彰で特別賞を受賞することとなった。ちなみに、笹川賞の優勝は史上2人目の、「ファン投票1位での優勝」であった。人気と実力を兼ね備えたスーパースターであることの証明を果たす出来事でもあったのだ。
 ただし、それでもなお、山崎の航跡は順風満帆にはならないのだった。ひとつは、持病となってしまった腰痛である。大活躍の裏では、腰の痛みとの苛烈な戦いがあったのである。05年頃に出会った整体師の治療によって、今ではレースに影響するほどではなくなっているのだが、再発させないためにも、常にケアは欠かせないものとなっている。
 さらに、07年頃から、山崎は謎のスランプに陥る。大レースでの成績がなぜか伸び悩み、この年、常連であった賞金王決定戦出場を逃してしまう。それでも、賞金王決定戦と同日程で開催されるSG賞金王シリーズで5度めのSG優勝を果たし、さすが山崎智也とファンを唸らせたのだが、翌08年はさらに成績は低調となり、この年は1度もSGで予選突破を果たせないほどであった。もちろん、2年連続で賞金王決定戦は不出場。選手生活始まって以来の屈辱を浴びることとなってしまう。
 09年も半分を過ぎ、山崎は今も長いトンネルから脱け出そうともがいている。SGはおろかGIタイトルからも遠ざかり、なかなかメインシーンに登場することができないでいるのだ。しかし、光明は見えている。今年最初の参戦となったSG笹川賞では久しぶりに予選を突破、持ち味だった果敢なレースも蘇ってきている。あと一歩で手が届かないとはいえ、GI戦線での優出も増えてきた。確実に上向き気配なのだ。近いうちに完全復活のノロシを上げ、表彰式などでとびきりの笑顔を見せる日がやって来るだろう。
 アイドルと言われ続けてきた山崎智也も、今年の3月で35歳となった。四捨五入なら40歳、なのだ。だが、「いや、今年からは切り捨てでいきます」と笑う彼は、まだまだ若々しさを保ち、アイドルという称号にふさわしいルックスを維持している。あとは、待望のビッグタイトルを手にするだけ。そのとき、山崎は滋味をもたたえた“皇艇”として、真のスーパーアイドルのふるまいを見せてくれるだろう。

山崎 智也
山崎 智也 (やまざき ともや)選手プロフィール

登録番号3622。71期。群馬県出身。1974年3月11日生まれ。A型。 1992年桐生でデビュー。SG優勝は97年全日本選手権(唐津)、98年笹川賞(桐生)、03年全日本選手権(戸田)、06年笹川賞(戸田)、07年賞金王シリーズ(福岡)。

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