ソフトBを同点に導いた「ある走塁」 岩村明憲氏の日本シリーズ解説2018

スポーツナビ

ソフトバンクが同点とした代打・デスパイネの一打。岩村氏はこの直前にあった「ある走塁」に着目した 【写真は共同】

 プロ野球の頂上決戦「日本シリーズ」第1戦が27日にマツダスタジアムで行われ、広島、福岡ソフトバンクともに譲らず、延長12回で2対2の引き分け。日本シリーズ初戦の引き分けは32年ぶり3度目で、4時間38分にわたる激闘だった。

 試合は初回に菊池涼介のソロと松山竜平の適時打で広島が先制。対するソフトバンクは5回に代打・デスパイネの内野安打に菊池の失策が絡み、同点とする。その後は両軍チャンスをつくるも、リリーフ陣が踏ん張りを見せ、規定により引き分けに終わった。

 スポーツナビでは、東京ヤクルトやMLB・レイズなどで活躍し、短期決戦の経験が豊富な岩村明憲氏による日本シリーズのポイント解説をお届けする。

中村晃の走塁に見たプロの仕事

 以下は岩村氏の解説。

「今年の日本シリーズはピッチャーが鍵を握ると思っていまして、特に先発の出来次第でゲームの行方が左右されると見ています。そういう意味では、広島の先発・大瀬良(大地)君の立ち上がりは良かったですね。その大瀬良君が2点を失い同点となった5回に、『これは』というプレーがありました。ソフトバンクの中村(晃)君が三本間で挟まれたときの走塁です。

 無死一、三塁の場面で三塁走者に中村君がいて、7番・西田(哲朗)選手の打球は目の前に転がるサードゴロ。中村君はそこで簡単にあきらめることなく、相手の挟殺プレーを何度か往復させて、二、三塁の状況を演出しました。誰でもできることかもしれないけれど、プレッシャーのかかる場面でしっかり仕事をしたのです。結果的に、デスパイネの内野安打と名手・菊池君の悪送球につながるわけですから。あの場面で一、二塁になっては話にならないし、一、三塁でもゲッツーになっているはず。中村君の最後まであきらめない走塁は良かったと思います」

ソフトバンク捕手陣の頑張り

9回2死一塁、代走・上本の盗塁を阻止した甲斐(写真左)。「甲斐キャノン」と呼ばれる強肩を日本シリーズでも発揮した 【写真は共同】

「あと、ソフトバンクは甲斐(拓也)、高谷(裕亮)両捕手の頑張りも目に付きました。9回には甲斐捕手、11回には高谷捕手が相手の盗塁を阻止。あれは大きかったですよね。ともにサヨナラの走者だったし、ましてや高谷捕手は(加治屋蓮投手の)ワンバウンドのカーブを捕って、刺しているわけでしょう。2人は今季の盗塁阻止率が12球団中1位と2位なので驚きはないかもしれないけれど、広島は機動力を使うチームなだけに、次戦以降はちょっと走りづらくなるかもしれませんね。

 最後に、今日はMLBのワールドシリーズで延長18回まで試合をやっていただけに、日本シリーズは本当に12回まででいいのかな? と感じました。球場に見に行ってる人はもちろん、テレビなどで見守っている人でも……少し消化不良な感じは否めないのかなと。頂上決戦だからこそ、どういう形で決着が付くのかな? と楽しみにする人は多いと思うんですよね。ルールなので致し方ない部分もありますが、いい試合だっただけに12回で終わることは残念でした。

 とはいえ、今日でほとんどの投手がマウンドに上がれたことは良かったですね。広島もソフトバンクも短期決戦の経験者が多いので、今更かもしれないですが、野手も含めて多くの選手が出場したことは明日以降に向けて意味のあることだと思いますよ」
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