武豊騎手「日本馬が勝つ日は必ず来る」 凱旋門賞スペシャルインタビュー

JRA-VAN

2013年キズナ以来5年ぶりに凱旋門賞に挑む武豊騎手に、同レースへの思い、海外競馬について語ってもらった 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 10月7日(日)に行われるG1凱旋門賞(パリロンシャン競馬場)に、クリンチャー(牡4歳=栗東・宮本厩舎)が日本調教馬の同レース初制覇を目指して参戦する。『JRA-VAN Ver. World』ではクリンチャーに騎乗予定の武豊騎手に凱旋門賞、さらには数多くの騎乗経験を持つ海外の競馬について語ってもらった。(取材日:2018年9月6日)

ディープインパクトを勝たせてあげられなかった

――武豊騎手ですが今年はクリンチャーで凱旋門賞に挑む予定です。始めに現在のお気持ちをお聞かせください。

武豊騎手(以下、「 」のみ)「クリンチャーは日本のビッグレースで何度も好走をしています。G1を勝ってはいないものの、京都記念ではダービー馬のレイデオロなどG1馬をまとめて負かしたこともありますし、充分に通用するレベルにあると思うので楽しみですね」

――では今年の話は後ほどじっくりと伺うとして、まずは凱旋門賞そのもののお話をお聞かせください。最初に跨ったのは1994年のホワイトマズル。パドックで調教師と打ち合わせをする事もあまりできないまま騎乗したと言われていましたね?

「それも含めて僕自身がまだ色々な面で経験がありませんでしたね。結果は6着だったけど、やはり経験を積んでから乗っていればまた違った結果に導けたかなという印象です」

――1度乗ったことで世界観が変わるような感じはありましたか?

「僕は騎手の子供で厩舎育ちだったから、幼い頃から凱旋門賞自体は知っていました。でも、その頃はただの憧れのレースという感じでした。それがこうやって実際に乗ってみて、悔しい思いをして、目標のレースに変わりましたね」

――サガシティでは3着という結果も立派でしたけど、フランスの重鎮アンドレ・ファーブル調教師からの騎乗依頼でしたね。

「あの年(2001年)はフランスに長期滞在をしていたのですが、凱旋門賞という最大の舞台でファーブル調教師から依頼を受けたのは嬉しかったし、少しでも結果で応えたいと思いましたね」

ディープインパクトの敗戦について「ショックは大きかった」と武豊騎手は振り返る 【Photo by Getty Images】

――その後もディープインパクト、メイショウサムソン、ヴィクトワールピサ、キズナと計6回、凱旋門賞で騎乗されています。

「当然どのレースも勝ちたかったし、それぞれに思い出があります。中でもやはりディープインパクトは無事に走って力を出してあげられれば勝てると思っていたので、ショックは大きかったですね。もちろん競馬だからどんな結果になっても不思議ではないんだけど、凱旋門賞を勝てなかったということより、ディープインパクトを勝たせてあげられなかったことが心残りです」

沢山の国で色々な競馬に乗ってきた経験が生きた

――あのディープインパクトをして勝てなかったというのは事実ではありますが、日本馬のレベルという意味ではいかがでしょうか?

「レベル的にはもう劣っているとは思いません。僕も世界中あちこちで乗せていただき、日本馬のレベルの高さは肌で感じています」

――その上で海外遠征に向く馬、向かない馬というのはありますか?

「もちろんあると思います。ポテンシャルは高いのにレースへ行くと力を出せない馬は多くいますから。そういう馬が環境や条件を変えることで走る可能性はあります。メシドール賞を勝ったジェニアルなどはその良い例だと思います」

――フランスの競馬の方が合うのでは、と早い段階から言われていましたね?

「まず血統的にディープインパクト産駒で母親がフランスで活躍していたサラフィナですからね。そして、左に行きたがるなど癖の強い馬なので、日本で出走するよりフランスのような少頭数でゆったりした流れになる競馬の方がチャンスはあると考えました。メシドール賞なら左側にラチを置く形で走れると思ったのもあって、オーナーや松永(幹夫)調教師に進言させてもらいました」

――4頭立てとはいえG1で好走している馬が2頭もいて、決して楽なメンバーではありませんでした。

「出走馬を知った時は運がなかったかなと思いましたけど、競馬はうまくいきましたね。ラチ沿いを逃げて掛からずに走ってくれましたし、考えていた以上に全てがうまくいって勝つことができました」

――挑戦に踏み切る段階から武豊騎手の経験値が生きたレースだったわけですね?

「勝機があると思って進言はしましたけど、お金を出すのはオーナーです。そういう意味で結果を残せたのはホッとしました。沢山の国で色々な競馬に乗ってきた経験が少しは生きたかもしれませんね」

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