猛牛軍団のセットアッパーは19歳 山本由伸が思い描く未来とは!?

ベースボール・タイムズ

西武主砲も驚く140キロ台の魔球

140キロ台半ばのカットボールを手に入れたことで、オリックスのセットアッパーの地位を手に入れた19歳の山本 【写真は共同】

「Meal Pitch」という言葉をご存じだろうか? MLB中継などでしばしば耳にする野球用語で、「Meal=食事」と言うことを考えれば、自ずとその意味は理解できるはず。そう、プロの世界で食べていくために有効なボール、“飯のタネ”ということで、その投手が有するウィニングショットのことを指している。

 オリックスの若きセットアッパーが、まさにその「Meal Pitch」を手にしたことによって、その地位を確かなものにしつつあるのだ。山本由伸、19歳。6月25日現在、27試合に登板して3勝0敗1セーブ、防御率1.00と、今や盤石ともいわれるオリックスのブルペンを支える重要なワンピースとして、首脳陣からの信頼を勝ち取っている。

 では、彼の「Meal Pitch」とはいったい何なのか。それは、140キロ台半ばの球速を示すカットボールである。ストレートと同じ腕の振りから繰り出されるスピード豊かなボールは、打者の手元で小さく変化し、時に相手のタイミングを僅かにずらし、時にバットの芯を微妙に外す。バッターにとっては何とも厄介な“魔球”なのだ。

 5月1日。2点リードで迎えた9回のマウンドに立ったのは、背番号「43」。まだその表情にあどけなさが残る若者が投じたボールに、埼玉西武の主砲・山川穂高は「あんなカットボールは見たことがない!」と驚きを隠そうともしなかった。その3日前にプロ入り初となるホールドをマークした山本は、山川、メヒアから三振を奪ってプロ初セーブを記録。瞬く間に、リリーバーとしての地位を確立したのである。

急遽のリリーフ転向からの快進撃

 岡山県備前市で生まれ、高校は宮崎・都城高へ。甲子園出場はならなかったが、最速150キロを超える本格派右腕として各球団のスカウト陣の注目を集め、2016年秋のドラフト4位でオリックスに入団した。

 プロ1年目の昨季、ファームで好成績を残して実績を積み上げながら、8月に先発投手として1軍デビューを飾り、8月31日の千葉ロッテ戦ではプロ初勝利をマーク。先発投手として、彼の洋々たる前途が開けたはずだった。実際、その後も先発ローテの中に組み込まれることを前提に、シーズン終盤から秋季キャンプ、さらには今季の開幕直後まで調整は続けられていたのだ。

 2年目の今季、開幕を2軍で迎えた山本は、ウエスタン・リーグでも先発投手としての登板を重ね、1軍から声がかかるのを待っていた。ところが、チームの方針転換は素早かった。開幕から苦戦を強いられていた中で、ブルペンスタッフの充実が勝つための最短距離だと考え、ファームでは6試合24イニングを投げて1失点の防御率0.38と“無双”していた山本を救援陣に組込むことを決めたのだった。

「ファームで先発として調整していて、登板日の3日くらい前になって急に、リリーフで行くぞって言われて……。最初は戸惑いましたが、自分にとっても1軍昇格のチャンスだと考えて、何でもやってやろうと思いましたね」

 4月24日の北海道日本ハム戦で今季1軍初登板。近藤健介をセカンドゴロに仕留めた後に、中田翔、アルシアから連続三振を奪うと、そこから5月12日まで9試合連続(計9イニング)無失点という堂々たるリリーバーぶりを披露。首脳陣の信頼を勝ち取り、守護神・増井浩俊につなぐ重要な8回を託されることになった。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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