Dバックス・平野が語る新天地での活躍 首脳陣は絶賛も本人は謙虚に淡々と

鈴木良枝

味方も敵もスプリットを評価

ルーキーながらダイヤモンドバックスの勝利の方程式の一角としてプレーオフ進出を目指す平野 【Getty Images】

 ダイヤモンドバックスは、アリゾナの乾いた空気でボールが飛びやすいチェイス・フィールドを本拠地としているため、三振を奪え、ゴロアウトを取れる落ちるボールを得意とする投手を切望していた。そこがブルペンの補強にとっては欠かせないポイントの1つだった。平野のスプリットは、まさにそのピースにはまったのだ。

「彼は93マイルの素晴らしい速球を持っていて、それをしっかりとコースに投げることができる。そして質のいいスプリットをゾーンに落とす技術を備えている。われわれには今までこういうボールを投げられるブルペン投手がいなかった。彼のピッチングはブルペンにとって新たな武器だし、今の強いブルペンをヨシの鋭いスプリットが支えてくれているね」とロブロ監督は話す。

 ブッチャー投手コーチは平野のピッチングのうまさを指摘する。

「スプリットを有効に使えている。それにはまずストレートをしっかりコントロールできることが肝心だが、彼はゾーンに投げ分けることができる。そして切れのいいスプリットを狙ったところに落とすなど、スマートなピッチングの組み立てができている。スプリットはここでも打者を打ちとるには有効なボールだし、精度の高いスプリットとストレートの制球の良さが成功の秘訣だね。腕の振りの速さ、腕を振るタイミングも絶妙で技術の高さに関心するよ」

 3人のキャッチャーも、平野のスプリットの威力に舌を巻く。

 ヤンキースで田中将大や黒田博樹のボールを受けた経験を持つJ.R.マーフィーは「ヨシのスプリットは一級品だよ。しっかり要求したところに投げられる。バッターには途中まで完全にファストボールに見える。そして最後にプレートの手前でストンと落ちるんだ。コミュニケーションも問題ないよ」と話す。

 アレックス・アビラは「空振りを取れるボールを持っているのが強みだね。とてもクレーバーな投手だと思うよ」と語り、ジェフ・マシスは「ファストボールとスプリットの落差がすごいんだ。ヨシは見事にその2つのボールを操れるんだよ」と絶賛の様子。

 ジャイアンツのブルース・ボウチー監督も平野のスプリットを「打者を惑わすボール」と表現した。2度対戦して、両方打ち取られている主砲のバスター・ポージーは「手元で落ちる質のいいスプリットを持っていて、ストレートの制球もいい」と印象を語った。

 その絶賛されるスプリットについても、平野本人はいたって謙虚だ。

「どうだろう? そこまで絶対的だとは思っていないけど、やはり落ちるボールでタイミングをずらせているなというのは少しある。絶対に空振りを取れるというわけではないけど、しっかりタイミングをずらして、ゴロやフライにしてアウトは取れているかなと。そういう意味では、ストレートと同じ腕の振りで投げられているところはあるのかなと思う。でもまだまだ精度を上げていかないと。そのためにはストレートをしっかり投げられるようにしなければならない」

目標は「優勝目指して頑張るだけ」

 シーズン当初から、平野は環境の変化を楽しんでいるようだった。メジャーの球場はそれぞれ形もブルペンの位置も違う。当然マウンドから見える景色にも違いがある。そして遠征で移動する際は、気温の違いと時差という見えない敵に苦しむことも。しかし「東(への移動)は時間が進むので、何か損したなってなる。若干眠たさはあるけど辛いというほどではない。ホームに戻ってくるのは楽。時間も得したような気分でチャーター機はもう快適。移動に関しては日本よりも断然いい。まだ行っていない街もあるので楽しみ」と余裕さえ感じる。

 首脳陣が期待しているのは、リリーフとして2010年からの8年間で476試合を投げた強靭な身体と、クローザーも務めたメンタルの強さだ。平野のこの実績は1戦必勝となるプレーオフでも必ずや重宝されるだろう。

「今のところヨシはとてもアジャストしていると思う。こっちの野球に適応しなくてはならないこともあるが、すべてを変える必要はない。彼は日本でクローザーとして十分な実績と自信を持っている。キャンプの時から彼には精神的な強さと落ち着きを感じたよ。その自信は持ち続けてほしいし、彼のメンタルは必ずチームの助けになると思う」とロブロ監督は期待を込める。

 平野は今後の目標をこう語った。

「チームの優勝。今はチームの状態も良くなってきているので、僕も置いて行かれないようにしたい。少しでも勝ちに貢献して、1試合でも多く投げられるように体調を整えていくことが大事だと思っている。優勝を狙えるチームだし、その位置につけているので、それを目指して頑張るだけ」

 2年連続プレーオフ進出、01年以来のワールドシリーズ制覇へ向けて、平野が大きなカギを握る存在になるかもしれない。

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著者プロフィール

サンフランシスコ在住。テレビ局勤務。スポーツリポーター、AP、コーディネーター。高校野球の監督だった父親の影響で高校・大学では野球部のマネージャーを務める。大学時代よりプロ野球やMLB中継に携わる。テレビ局のスポーツ局での勤務を経て、その後拠点を米国に移す。現在はサンフランシスコ・ジャイアンツやサンフランシスコ49ersなどスポーツの取材を中心に行うほか、コーディネーターとして幅広くテレビ番組の制作にも関わっている。

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