社会人野球の新機軸は豪州にあり!? 選手の伸びしろを広げる武者修行

阿佐智

菊池雄星も腕を磨いたリーグだが…

大会初の完全試合達成など多くのトピックがあった日本選手権。社会人野球はこの後オフに入るのだが、「鍛錬」のためにオーストラリアのウインターリーグへ派遣するチームが出てきた 【写真は共同】

 第43回社会人野球日本選手権はトヨタ自動車の優勝で終わった。この大会が終わると野球シーズンもいよいよ本格的なオフに入る感がある。

 しかし、会社員とアスリートの“二刀流”を求められる選手にとってこの時期は、来シーズンに向けたトレーニングに悩む時期でもある。プロとは違い、シーズンで見つかった課題を克服する時間が限られているのが実情だ。

「鍛錬」が重視された日本の野球界も近年は「実戦こそが最高の練習」という考えにシフトしている。プロ球界も、オープン戦の始まる前の2月半ばから「練習試合」を組むことが多くなったし、オフに入れば、国内の教育リーグであるフェニックス・リーグや台湾ウィンターリーグに若手・中堅選手を派遣、球団によっては中南米のウインターリーグにも選手を送り出すようになっている。

 2010年に復活したオーストラリアン・ベースボール・リーグ(ABL)も選手の派遣先のひとつだ。過去には、福岡ソフトバンク、巨人、東北楽天、埼玉西武が選手を派遣、今やパ・リーグナンバーワン左腕となった菊池雄星(西武)もこのリーグで腕を磨いた。しかし、アメリカのマイナーで言えば“A級相当”とも言われるこのリーグのレベルやABL側の思惑から、プロからの選手派遣は継続的なものになっていないのが現状だ。

MLBとの連携解消から日本へ舵を切る

 今や国際大会の常連となったオーストラリアだが、国内での野球の人気は高くはない。そのため、1989年オフに発足したウインターリーグは10数年で休止してしまった。

 現在のリーグは、この国を人材供給国、あるいは若手選手の育成の場と考えたメジャーリーグ(MLB)が資本金の75%を出資してできたものである。したがって、外国人選手枠のほとんどは、MLB傘下のマイナーリーガーに優先的に割り振られることが多かった。球団によっては、日本をはじめとする東アジアのプロリーグとの提携を模索する動きもあったが、発足当初のABLは常に北太平洋の間を揺れ動いていた。

 しかし、2年前からMLBが資本を引き揚げたことにより、ABLは独立性を高めた代わりに資本の後ろ盾を失うことになった。このリーグのもうひとつの株主、オーストラリア野球連盟としては、国際的地位が年々向上する中、せっかく再出発したプロリーグをつぶすわけにはいかない。限られたリーグの財政の中、質と価値向上のために舵を切ったのが、日本との提携強化である。

 ABLは、これまでもプロ野球からだけでなく、個別案件として独立リーグからも選手を受け入れてきたが、ここにアマチュアトップの社会人チームからの選手も加えようと、昨年夏から動き出したのだ。

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著者プロフィール

世界180カ国を巡ったライター。野球も世界15カ国で取材。その豊富な経験を生かして『ベースボールマガジン』、『週刊ベースボール』(以上ベースボールマガジン社)、『読む野球』(主婦の友社)などに寄稿している。

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