男子ジャンプ、昨季不振の原因はスーツ!? 平昌五輪へ、横川HCが掲げる課題とは

折山淑美

“勢力図が変わる年”に苦戦

サマージャンプで存在感を見せる小林潤志郎(写真)。各選手とも冬の本番へ向けて調整に余念がない 【写真は共同】

 2018年平昌五輪まで半年を切った。前回のソチ五輪で団体銅メダル、個人では葛西紀明(土屋ホーム)がラージヒルで銀メダルと2つのメダルを獲得した日本男子ジャンプ陣は、本番の冬へ向けて、サマージャンプで各選手が調整を続けている。

 五輪プレシーズンとなった16−17年は日本勢にとって苦しいシーズンだった。日本代表チームの横川朝治ヘッドコーチ(HC)に昨季の反省と平昌五輪シーズンへ向けた話を聞くと、横川HCは「最後に何とか面目を保ったが、苦しんだシーズンでしたね」と振り返った。

 昨季の日本勢は、シーズン終盤の3月12日、ワールドカップ(W杯)オスロ大会ラージヒルで伊東大貴(雪印メグミルク)が4位になると、19日のビケルスン大会のフライングヒルではエース葛西が2位に入り最年長表彰台記録を更新。26日に行われた最終戦プラニツァ大会のフライングヒルでも葛西が初日に4位、最終日には3位と結果を残した。

 しかし2月の世界選手権では伊東のノーマルヒル10位とラージヒル15位が最高で、ラージヒル男子団体ではチェコと同点の7位と、シーズン全体を通して見ると振るわない1年に終わった。

「五輪前のシーズンというのは、以前から世界の勢力図に変化が起こる年なんです。簡単に言えば昨季は、日本のトップ3人は変わっていないところへ、12〜13人がごっそり上がってきたというのが正直なところです」

拮抗する上位国の技術力

横川HCは各国の技術差がほぼなくなってきたと分析する 【スポーツナビ】

 下が追いついてきた一方で、上位国は拮抗(きっこう)している状況だ。今はオーストリア出身のコーチが計6カ国でHCになっており、有力国で違うのは日本とスロベニアだけ。指導する技術もオーストリアで学んだもので、日本やスロベニアも含めて踏み切りの技術は共通になり、ほとんど差がなくなっている。だから条件さえ等しければ、飛距離はほぼ変わらない。

 横川HCに言わせれば、公平な条件(ほぼ無風、気温マイナス5〜6度、アプローチの整備も完璧)の試合になると、予選に出場する70数名の中で120メートル前後のK点に届かない選手はせいぜい2人なのだという。実際に、本戦で2本目進出となる30位付近に飛距離が同じ選手が10数人いて、着地に失敗したものが落ちるハイレベルな戦いになることが、1シーズンに1〜2回はあるという。

「一見みんな違う飛び方に見えますが、何人もの選手の踏み切りの映像を重ね合わせてみると、上位30人はひとりが飛んでいるようにしか見えないんです。竹内択(北野建設)と総合5位のマチェイ・コット(ポーランド)を比べたら2人が飛んでいるとは思えないほどピッタリだし、全然似ていないように見える葛西とセベリン・フロイント(ドイツ)もほぼ1人が飛んでいるように見えるので」

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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