ロッテ・井口「もっと野球専用球場を」 21年の知見から求めるボールパーク化

週刊ベースボールONLINE

広い福岡ドームのフェンスを「越せ!」

プロキャリアのスタートは福岡ドーム(ヤフオクドーム)から。フェンスを越すべく練習を積み重ねることで、バッティングの成長を促されたという 【写真=BBM】

――あらためて井口選手のキャリアを振り返りながら、球場のお話を続けていきたいのですが、国学院久我山高(東京)では2年の夏に甲子園に出場しています。

 甲子園ですか。1回戦で負けてすぐに帰ってきちゃったので、「行ったかな」くらいの感覚しかないですね。正直、あんまり甲子園にあこがれはなかったので(笑)。プロに入ってオープン戦とかで行ったときも、「意外と狭いな」と思ったくらいですね。甲子園はもっと大きいイメージがあったので。

――そういう意味では青山学院大で東都リーグを戦った神宮球場のほうが思い入れはある。

 そうですね。ずっと神宮でやっていたので、今行くと神宮のほうがいろいろ思い出すことはありますね。やっぱりプロやアトランタ五輪を目指して頑張っていたときの球場なので。大学野球の聖地でもありますし、学生野球の原点と言えるかもしれないですね。

――ダイエーでプロ入りして、まだ完成して4年目の福岡ドームが本拠地になりました。

 もちろん福岡ドームはプロで一番最初の球場でしたし、こんなにでかい球場でいつになったらスタンドにホームランが打てるんだろうと思いながら練習していましたね。

――最初に感じた「広いな」という印象はその後、変わっていったのでしょうか。

 広いなと思いながらもバッティング練習では常にフェンスを越そうと思いながら、「越せ!」と言われながら練習していて。少しずつ、球場に合わせるように自分もそれなりになっていったので。自分のバッティングもあの球場があったからこそだったのかな、と思いますし、あの球場が本当に自分を成長させてくれたと思いますね。もっと早くホームランテラスを作ってくれていたら、もうちょっと打てていたのかな、とかね(笑)。

――メジャーから日本に復帰し、ロッテに入りました。千葉マリンは屋外で、風という特徴のある球場です。

 そうですね。今はドーム球場も多い中で、風が吹いたり、雨が降ったり、芝が濡れていたり。コンディション的には、ほかの球団から比べると本当にタフにならないと勝てない球場だなと思いますね。その分、ファンの方の応援は熱くて、ありがたいですけどね。

――やはり選手としてプレーするにはドーム球場のほうが負担は少ない。

 ドームのほうが楽でしょうね。開幕から最後まで半袖でできますし。やっぱり風だったり太陽だったりに当たると、疲れ具合はまったく違ってきますから。ドームだったら夏場でも空調が効いていますし、コンディショニングのつくり方とかも違ってくる。でも、だからこそ、このチーム(ロッテ)で優勝することに価値があるんだって思っていますけどね。

――これまでにアトランタ五輪、日本シリーズにワールドシリーズと、数々の大舞台でもプレーされています。試合ごとの球場の雰囲気の違いというのはどう感じていましたか。

 う〜ん、自分の中では試合に入ってしまえばどの試合がどうこうということはないんですよね。それがワールドシリーズであろうが、日本シリーズであろうが、開幕戦であろうが。この試合がどうだということを試合中に考えることはないので。ただ、試合前のセレモニーとかは、アメリカだとジェット機が飛んできたり、日本とはスケールが違うなっていうのはありますけどね。

Koboパークは選手に近い球場

井口が「観客ファースト」の球場としてたびたび引き合いに出したKoboパーク宮城 【写真=BBM】

――井口選手が、これからさらに日本の球場に求めていきたいものは何ですか。

 選手目線で言うと、個人的にはやっぱりもっと近くで見てもらいたいというのがありますね。生の臨場感をより近くで感じてもらいたい。マリンは少しファウルグラウンドが大きいので、もう少し近くで見てもらいたいなというのは正直なところですね。アメリカの球場に限らず、日本の球場も最近はどんどんファウルグラウンドが狭くなっているので。近いほうが応援の声もより聞こえてきますしね。お客さんとしても、もっともっと近くで見たいっていう人はいっぱいいると思うので。

――そういう点も含めて、いいなと思う球場はありますか。

 やっぱりKoboパーク(宮城)とかはすごく近く感じますよね。パ・リーグの球場はフェンスが高いところが多いですし、その点でもKoboパークはフェンスも低いから、お客さんも低い目線で試合を見ることができる。広島(マツダ広島)なんかもそうですよね。Koboパークの左中間のフェンスをさらに低くしているのとかはいいですよね。だからその点ではヤフードームもせっかくホームランテラス席を作ったのなら、フェンスではなくて下まで全部金網にしてしまって、本当にグラウンドレベルでお客さんが試合を見られるようにしてしまえばよかったのにって思いますけどね。どうしてもお客さんではなく選手優先になってしまいますからね。ぶつかってもいいようにラバーフェンスにしたり。それにフェンスがないと広告も入れられなかったり、簡単ではないのは分かるんですけどね。

――まだまだ日本の球場もやるべきことがあるということですね。

 そうですね。今はブルペンもファンから見えないところにある球場が多いですからね。グラウンドの中の見えるところにあったほうが面白いですよね。「今、誰が肩をつくってるぞ」というのが見えれば、お客さんも互いのチームの作戦面まで考えながら見ることができますし、単純にピッチング練習を生で見ることができる。面白みが減ってしまっているかなと思います。

――Koboパークをはじめ、ボールパーク化ということが日本でも言われるようになってきました。

 今はビジョンにいろいろな映像が出てきたり、Koboパークは観覧車ができたり、家族全員で来ても楽しめるようになってきていますよね。野球だけではなく、そういう方向性はこれからも目指していくべきだと思います。あとはイニング間をどう盛り上げるのかというのは、もっとやっていけたらいいでしょうね。アメリカでは野球もそうですけど、バスケットボールもNBAとかを見に行くと、プレーの間の盛り上げ方というのは本当にうまい。どうしても日本の野球は3時間の中でお客さんが暇をしている時間がまだまだ長いなと思うので。そういうところでもっと盛り上げることができれば、さらに球場の一体感が生まれると思います。

――Koboパークは天然芝ですが、グラウンドについてはいかがでしょうか。

 極端な話、すべて土のグラウンドにしてしまえばいいんじゃないですか。もう一度、原点に戻る。甲子園もそうですけど、今のKoboパークとかは本当にきれいな天然芝ですから、全然イレギュラーしないんですよ。屋外の球場はもちろん、室内の球場も今の技術ならできないんですかね。まあ、多くの球場がほかのイベントで使用されたり、多目的に使われているので、そこが一番難しいところなんですけど。そう考えると、やっぱり野球専用の球場がもっと増えてくれるといいなと思いますね。

(取材・構成=杉浦多夢)

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