宇治山田商・宮原に漂う大器の雰囲気 三重に潜む快腕が見据える「その先」

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角度のあるストレートは最速143キロ。打者から空振りを取れるのが魅力だ 【写真=佐藤真一】

 投手とはコントロールが生命線である。この課題を克服し、最終学年で一気に花を咲かせようとしているのが、三重に潜む143キロ右腕・宮原大樹(宇治山田商高)だ。

体は大きいが器用さも併せ持つ

 187センチのオーバースローから投げ下ろす、角度のついた直球は最速143キロ。タテ、横のスライダーなど、多彩な変化球も自在に操る期待の大型右腕が宮原だ。

「真っすぐが決まったときは、バッターが振り遅れるか当たってもファウルになるので自信を持って投げています。変化球も得意で、決め球に使えるスライダー。落差がありカウントが取れるカーブ。そして、スプリットはここぞという場面で使えるように精度を上げています」

 そんな宮原の素材の良さには、指導にあたる村田治樹監督もほれ込んでいる。

「身体能力というか、もともと、持っている芯の力は群を抜いていると感じています。まだまだピッチングのコツはつかめていませんが、1試合に何球かは目を見張るようなボールを投げますし、バッティングでも詰まった当たりがセンターの頭上を越えてフェンスに直撃したことがありました。そして、感性が非常に良く、見よう見まねでやった動きをすぐに取り入れることができるので、バント処理で三塁に送球するプレーなどはとても上手にこなします。体は大きいですが、器用さも併せ持っている選手ですね」

 昨春の三重県大会3回戦(対三重高)では本人も「これまでの試合のなかでベストピッチ」と認める素晴らしい投球を見せた。実は前日に行われた松阪高との2回戦では、10三振を奪いながらも9四死球。球数もかさんだ翌日の試合だったが、「力が抜けて逆に良かったです。三振は4個しか取れませんでしたがコントロールが良く、打たせて取るピッチングができました」と1失点完投。この好投で宮原は一躍、脚光を浴びることとなった。

『一番良いのはけん制球』からの脱却へ

 しかし、村田監督が「公式戦で良かったのはこの試合だけ」と話すように、ピッチングはなかなか安定してこない。続くいなべ総合高との準決勝では再び6四死球と乱れ、11安打15失点で4回途中KO。夏の県大会前の6月には肩を痛めてしまい、調整不足のまま菰野高との初戦に先発したものの、4回を投げて3失点。5回、先頭打者に中前打を許したところで無念の降板となり、チームも7回コールド負け(0対7)を喫した。「3年生の夏を終わらせてしまって、とても悔しかった」と、唇をかむ宮原。この不安定な投球の原因は「力み」にあるという。

「三振を取りにいったときやピンチを迎えたときにどうしても力んでしまうタイプで、村田監督からは『お前が投げるボールで一番良いのはけん制球だ』と。確かに一塁にけん制球を投げるときは良い回転をしているボールが投げられているので、とにかくリラックスを心掛けて力を入れるのはリリースする瞬間だけにしています」

 また、安定した投球フォームを作ることも必須だ。

「中学時代は体をひねったトルネード気味のフォームで、上半身だけで投げていたのですが、今は足を上げたときにしっかりと右足だけで立ち、体全体を連動させて投げるようにしています。それから、これまではインステップだったので、投球時はつま先をセンター方向に向けることを意識するようにしました。今はこの投げ方を体に覚え込ませるためにキャッチボールからボールが垂れていないかとか、シュート回転していないかをチェックし、伸びのある球を投げる感覚をつかめるように注意を払っています」

 フォームを安定させるためには、下半身の強化も欠かせない。

「ウエート・トレーニングでは、110キロのバーベルを担いでスクワットをしていて、かなり体が強くなってきたように感じています。昨夏からは体幹トレーニングも本格的に始めたのですが、これまではボールを投げた後、一塁側に体が傾いてしまうことがあったので、真っすぐ正対できるようにしていきたいです。それから、体重を増やしたいので一日に5〜6食は食べています。そのおかげで高校入学時から体重が7キロほど増えてオフシーズンに入る前は78キロになり、ボールに重みが出てきました。今後も食トレに励んで83キロくらいまで増やしたいです」

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