苦しい2月を笑顔で終えた小林祐希 「この経験は必ず今後に生きてくる」

中田徹

前半戦は勢いに乗るチームだったが……

ヘーレンフェーンは3連敗を喫するなど、苦しい時期が続いていた 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 今季前半戦のヘーレンフェーンは、ハツラツとしたサッカーで4位と健闘して、オランダサッカーファンのシンパシーを集めていた。ウインターブレーク明け直後もADOデンハーグに2−0と勝利し、続くPSV戦は3−4で敗れたものの、敵地で強豪相手に魅力溢れる試合を見せ、称賛の声が上がっていた。

 しかし、1月29日(以下、現地時間)のフローニンゲン戦を0−0で引き分けてから、ヘーレンフェーンの勢いが止まった。2月5日から18日までの3試合で、ヘーレンフェーンはたった1ゴールしか奪えず、3連敗。いつの間にか順位も8位と大きく下げていた。

 それだけに、25日に行われたホームゲーム、対ローダJC戦では、小林祐希もサポーターのいら立つような気持ちをピッチの上で感じていたという。一方で、ほんのちょっとの好判断で、チームに落ち着きをもたらすプレーに拍手が起こることに、喜びも感じていた。

 左サイドからビルドアップしようとするヘーレンフェーンに、ローダJCがプレッシングをかけた時、小林がダイレクトキックで大きく右サイドへ振って、チームにスペースと時間を与えた時に拍手が起こる。味方GKからのフィードを受けてターンし、近寄ってきた敵の逆をとって前方のスペースへドリブルし、前へボールを運ぶとまた拍手。セントラルMFとして黒子の役割を果たす小林の“小さな好プレー”に盛んに拍手が湧いていた。

「このポジションでも楽しみを見つけられる」

日本であれば「当たり前」と捉えられるプレーに拍手が起こることに喜びを感じている 【Getty Images】

 試合は0−0で迎えた59分、右サイドバックのステファノ・マルゾがサイドチェンジのパスを不用意に蹴ってしまい、ローダJCのストライカーの頭に当ててしまった。かなり危険なミスだったが、小林は冷静にボールを処理して左サイドへパスを展開。ヘーレンフェーンは何事もなかったのかのように攻撃を続け、先制点につながるFKを得た。

「ああいうのをやると拍手してくれるからうれしいですよね。日本だったら当たり前のように捉えられるんですが、“あそこであれ(危険ゾーンでクリアに逃げずに冷静にマイボールにすること)”をやるのは、すごく緊張します。緊張というか難しい。それをサラッとやってプレーを展開させることに拍手がくると、うれしいです。

『このポジションでも楽しさを見つけられるな』と思います。本当はもっと前に行きたいんですけれど、このポジションでの楽しみを見つけるという意味では、サポーターが分かってくれるのはすごくうれしいです。それが点につながったり、つながらなかったりするかもしれないけれど、チームが自信を持つ。それが充満してくれればいいと思います。(勝って)ホッとしましたね。本当に」

 後方からのビルドアップの際、小林は味方センターバック(CB)の間に降りてきてパスを散らす。1−0の時、小林は「慌てるな、慌てるな」と両手でジェスチャーしながらビルドアップのペースを落としていたが、2人のCBは盛んに「そうじゃないだろう」と要求していた。

「彼らは早くサイドに出して攻めたいんですよ。監督が『早くサイドを使え』とCBの2人に言っているから、彼らは言われたことをやりたい。でも、今日はサム・ラーションもアルベル・ゼネリも(ドリブルが相手に)引っ掛かっていた。相手は1人退場しているし、別にそこで無理に突っ込ませる必要もない。そこは『監督が言ってたって構わない。勝ち点3を取れば、監督だって何も言わないから』というようなことを言いました」

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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