ヤクルト廣岡は山田2世か池山2世か 周囲も認める逸材は野球漬けの日々

長谷川晶一

天性の華を持つホームランバッター

ヤクルト期待の若手・廣岡大志は今キャンプでバットを振り込む 【写真は共同】

 全体練習が終わり、沖縄の太陽も少しずつ西に傾いていた頃、浦添市民球場のサブグラウンドには4人の内野手が特守を行っていた。

 そこにいたのは、背番号「1」、「3」、「5」。そして「36」。東京ヤクルトの山田哲人、西浦直亨、川端慎吾とひとケタ選手ばかりが並ぶ中で、期待の新鋭・背番号「36」の廣岡大志は先輩選手たちの中で、ひときわ大きな声を出して白球を追いかけていた。

 プロ2年目となる今年、廣岡は自身初となる1軍キャンプに招集された。19歳の青年にとって、大先輩たちに囲まれて緊張もしていたはずだ。それでも、「1軍定着」、「レギュラー奪取」のためには絶好のアピールの場だった。指揮官もまた、廣岡には期待しているのだろう。真中満監督自らノックバットを持ち、将来のスター候補を鍛え上げる。

 今キャンプにおいて、廣岡の存在感はずば抜けていた。身長183センチ、体重81キロという恵まれた体格のせいだけではない。バットを持てば豪快なフルスイングで、グラブを持てばダイナミックな動きで、ファンの目をくぎ付けにしている。先の特守でも、大先輩の中でも臆することなく、ハッスルプレーを披露し、ファンからの声援を受けていた。

監督もOBも絶賛

 今季初の対外試合となる2月13日の韓国・ハンファ戦。廣岡は「7番・サード」でスタメン起用された。本職はショートだが、少しでも多くのポジションをこなせた方が、1軍定着の可能性も高まる。今はまだポジションにこだわる時期ではないだろう。

 3回無死で迎えた、この日の初打席。廣岡は持ち前のフルスイングを披露すると、打球は大きな放物線を描いてレフトスタンドへ消えた。長い手足から繰り出される豪快なスイング。空振りを恐れない勇気。華のあるたたずまい。天性のホームランアーチストとして、将来を期待させるには十分な一発だった。

 試合後、真中監督は「まだ課題はあるけれども、これからまだまだ伸びるはず」と絶賛し、臨時コーチを務めているミスタースワローズ・若松勉氏も「高卒2年目で、あれだけのパンチ力を持っている打者はそういない」と驚き、この日視察に訪れていたOBの宮本慎也氏は「天性の長距離砲の資質を感じる」と分析した。

 それでも本人は、「このキャンプではバットを上から振る意識をしているけれど、まだまだです。試合でも練習のようなスイングができるように頑張ります」と反省を忘れない。

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著者プロフィール

1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターに。05年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。著書に『いつも、気づけば神宮に東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『生と性が交錯する街 新宿二丁目』(角川新書)、『基本は、真っ直ぐ――石川雅規42歳の肖像』(ベースボール・マガジン社)ほか多数。

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