【UFC】逆境を跳ね返せ! ブラウンとヘンドリックス UFC生き残りをかけたそれぞれの戦い

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ルイスの指名にブラウン激怒「本物の戦いを見せてやる」

トラヴィス・ブラウン(右)は現在5連勝中と絶好調のデリック・ルイスと真価の問われる一戦に臨む 【Zuffa LLC】

 日本時間2月20日(月)に開催されるUFCファイトナイト・ハリファックスのメインイベントでは、トラヴィス・ブラウン(米国)対デリック・ルイス(米国)のヘビー級戦が行われる。
“ブラック・ビースト”ことルイスはガブリエル・ゴンザーガ(ブラジル)、ロイ・ネルソン(米国)らを下し、現在5連勝中と絶好調。前回、12月にオールバニで行われたUFCファイトナイト・ニューヨークでシャミル・アブドゥラヒモフ(ダゲスタン共和国)を一蹴したルイスは、オクタゴン上の勝利者インタビューで次に戦いたい相手を聞かれ、ブラウンとマーク・ハント(ニュージーランド)の名前を挙げた。その口調は必ずしも挑発的なものではなかったが、当のブラウンはこれを侮辱と受け止めた。

「ヤツはランキングを眺めて、与(くみ)しやすい相手として俺の名前を挙げたんだ。これ以上の個人攻撃があるかい。俺は普段、相手を挑発したりするタイプではないのだけれど、そこまで腕試しがしたいと言うのなら、相手をしてやろうじゃないか。本物の戦いを見せてやる」

 ブラウンもかつては、ちょうど今のルイスのように、連勝でヘビー級ランキングを急浮上していた時代があったのだが、最近4戦で1勝3敗と負けが込んでいる。前回(2016年9月「UFC203」)のファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)戦では試合中に指を脱臼、なぜかタイムを取ろうとするなど慌てた様子を見せ、精彩を欠いたまま判定負けを喫してしまった。

 試合後には、ブラウンの所属先であるグレンデール・ファイティング・クラブ(以下GFC)のヘッドコーチ、エドモンド・タヴァーディアンがヴェウドゥムに言葉をかけたところ、カッと来たヴェウドゥムが何とタヴァーディアンに前蹴りをお見舞いするという異例の場外乱闘も繰り広げられた。

ブラウンにとって真価が問われる一戦

 こうした騒動に加え、GFCの看板選手でブラウンの恋人でもあるロンダ・ラウジー(米国)の連敗を受け、このところタヴァーディアンのコーチングは評判が良くない。ブラウンにしても、名門ジャクソン・ウィンクルジョン・アカデミーからGFCに移籍して以降、戦績が落ちているのは事実だ。
 今回の試合に向けてブラウンは、GFCではなくラスベガスにある自分のジムでキャンプを張っており、ブラックジリアンズからグラップリングコーチとトレーニングパートナーを派遣してもらっている。インターネット上では、ブラウンがついにGFCを見限ったとの噂(うわさ)も流れたが、ブラウンによればこれは事実ではないようだ。

「外からあれこれ言うのは簡単だけど、自分の周囲の人たちはエドモンドの格闘技IQはすごく高いって、口をそろえているよ。彼はあけすけにものを言うし、自分の評判に無頓着なところがあるから、外部の人からはそれがイライラするんじゃないかな。自分も彼と少し似たようなところがあるから分かるんだ」

「ブラックジリアンズからだけでなく、エドモンドらGFCのコーチングスタッフにも定期的に来てもらって、トレーニングをしている。今回のキャンプでは、GFCで向上した打撃の技術と、ほかのスキルとの再統合をはかることをテーマにしているんだ。自分にはレスリングやボクシングのバックグラウンドがあるわけではないから、成長の痛みのようなものはある。逆にそれだけに、まだまだ上達の余地はあると思っている。俺の実力を疑う人は好きに疑っていればいいさ」

 勢いのあるルイスを相手に進化した姿を見せつけ、逆風をはねつけることができるのか、ブラウンにとって真価が問われる一戦になる。

負ければ即引退? 正念場のヘンドリックス

元ウェルター級王者ジョニー・ヘンドリックスは負ければ引退の覚悟でヘクター・ロンバードと対戦 【Zuffa LLC】

 UFCファイトナイト・ハリファックスのセミメインイベントはジョニー・ヘンドリックス(米国)対ヘクター・ロンバード(キューバ)のミドル級マッチだ。元ウェルター級チャンピオンのヘンドリックスにとっては今回がミドル級でのデビュー戦となる。
 ジョン・フィッチ(米国)、マーティン・カンプマン(デンマーク)を衝撃のワンパンチノックアウトで下し、ジョルジュ・サンピエール(カナダ)を鼻歌でも歌うかのように楽しそうにいたぶり、ロビー・ローラー(米国)を打ち破ってタイトルを獲得(2014年3月、「UFC171」)した頃のヘンドリックスの強さはまさに猛威そのもの、ヘンドリックス時代が到来したかに思われた。

 しかし、2015年10月の「UFC192」(タイロン・ウッドリー戦が予定されていた)で減量に失敗、脱水症状を起こして試合がドタキャンになった頃からケチがつき始め、UFCファイトナイト・ラスベガス(2016年2月)のスティーブン・トンプソン(米国)戦では自身初のノックアウト負けを喫してしまう。
 さらに、「UFC200」(2016年7月)では計量に失格、0.25パウンド体重超過のままでケルビン・ガステラム(米国)と戦って判定負け、次いで「UFC207」(2016年12月)でも再び計量でつまずき、2.5パウンド超過でニール・マグニー(米国)戦に挑んで判定負けを喫している。「UFC207」前の記者会見では、集まった記者から減量は順調ですかと尋ねられ、「そんなに減量が好きなら、まずはお前らが減量してみろ」と感情をあらわにするなど、やや不安定な一面も垣間見せた。

 これまでウェルター級にこだわっていたヘンドリックスも、3連敗中という苦い現実を踏まえ、ついに今回ミドル級に転向することを決意したわけである。「引退するか、ミドル級に階級を上げるか、選択を迫られた。UFCとの契約はあと1試合残っている。なら、ミドル級で自分を試してみればいいじゃないかと考えた」とヘンドリックスは語っている。

「最悪、これが自分のラストファイトになると思っている。もしこの階級で力を発揮できないのだとしたら、自分はもう終わりだ。ただ、エネルギーにあふれた、納得のいくパフォーマンスができれば、まだ先が続くかもしれない」

 対するロンバートも2016年は、マグニー、ダン・ヘンダーソン(米国)に連続ノックアウト負けを喫し、UFCでのキャリアで徳俵を踏んでいる。2人の人気ベテランファイターのこの一戦は文字通りUFCでのサバイバルをかけた緊迫の大勝負になりそうだ。(文 高橋テツヤ)
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