重友が5年ぶりVで世界陸上代表に名乗り 収穫と課題に瀬古リーダーは更なる注文

中尾義理

「悪いときに終わりたくない」と意欲再燃

重友梨佐が5年ぶりとなる大阪国際優勝。今夏のロンドン世界陸上に大きく近づいた 【写真は共同】

 今夏に開催される陸上のロンドン世界選手権女子マラソン日本代表選考会を兼ねた大阪国際女子マラソンが29日に行われ、重友梨佐(天満屋)が前半、先頭集団から離れたものの、じわりじわりと追い上げ、35.5キロ地点でトップに立ち、2時間24分22秒で優勝。2012年のロンドン五輪代表を手に入れた初優勝以来、5年ぶりの輝きだった。

 代表即時内定条件のうち、日本陸上競技連盟(日本陸連)が定める派遣設定記録2時間22分30秒には届かなかったが、後半追い上げ型の逆転優勝でロンドン行きに大きく前進した。

 この5年の間には、ロンドン五輪78位や14年大阪国際63位があれば、北京世界選手権代表に選ばれた15年大阪国際2位もあり、リオデジャネイロ五輪が懸かった前回は5位ながら、優勝した福士加代子(ワコール)に8分23秒差をつけられるなど、泣き笑いのドラマに満ちていた。

 重友は「悪いときに終わりたくない。自分に負けたことになるから」と、時には折れそうになった気持ちを修復し、意欲を再燃させ、走り続けてきたのだ。

ネガティブスプリットの試み

 今回の大阪国際で重友は、これまでの自分を変えようとしていた。その思いは日本陸連が試みる、五輪や世界選手権でメダルを争う戦略としてのペース設定方針に後押しされた。

 それが前半より後半を速く走る「ネガティブスプリット」だ。

 五輪や世界選手権などメダルが懸かった大一番では、力のある海外勢は後半にペースを上げ、あるいは揺さぶり、激しく競り合う。「ネガティブスプリット」がメダルの条件になっていることが多いのだ。

 女子マラソン日本勢は、昨夏のリオデジャネイロ五輪で代表3選手が14位(福士)、19位(田中智美/第一生命グループ)、46位(伊藤舞/大塚製薬)と低迷し、五輪では3大会連続入賞なし。それまでの五輪4大会連続でメダルを獲得してきただけに、危機感を強めた日本陸連は20年東京五輪でマラソンが輝きを取り戻すべく、マラソン強化戦略プロジェクトを立ち上げ、新しい強化方針のひとつとして、後半の駆け引きに加われる地力の養成に力点を置き、大阪では「ネガティブスプリット」の展開を作ろうと、ペースメーカーの設定が変更された。

 前回5キロ16分40秒(1キロ平均3分20秒)だったペースを17分05秒〜10秒(1キロ平均3分25秒〜26秒)とし、先導する距離は最長30キロから中間点までとした。ハーフの通過設定は1時間12分00秒〜30秒。今夏の世界選手権の代表選考における派遣設定記録2時間22分30秒をクリアするには、当然、ネガティブスプリットでなければならない。代表をめざす各選手にその力量はあるのかが問われた。

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著者プロフィール

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

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