超人守備の広島・菊池涼介、その素顔 忍者でも猿でもなく「人間だもの」
球界屈指の守備力を持つ広島・菊池 【写真は共同】
昨季は鉄壁の守備で4年連続4度目のゴールデン・グラブ賞を獲得し、目標としていた年間補殺記録の歴代トップ3独占も達成。打撃でも2番打者という難しい役割をこなしながら、181安打をマークして最多安打の記録を手にするなど、チームの25年ぶりとなるリーグ優勝に大きく貢献した。そして、オフには球団の日本人最高年俸となる1億4500万円(推定)で契約を更改。名実ともにチームの顔となった。
菊池のすごさを一つ挙げるとすれば、多くの人は守備の上手さと答えるだろう。彼の超人的な守備を見た人は「忍者のよう」、「猿のよう」といった表現を使って絶賛するが、当の本人はそのことについて「忍者でも猿でもない」と笑いながら否定し、冗談交じりにこう答えている。
「だって、人間だもの」。
驚異的なプレーの源は観察力と洞察力
静岡市内で自主トレに励む菊池 【写真:森田和樹】
今年から取り入れられたメニューに、半径30メートルの円上に8個のカラーコーンを均等の場所に置き、選手たちは円の中心からスタート、正座やあおむけなどの体勢から、ランダムで指示された場所まで走るといった練習があった。即座に状況判断をしないといけない中、イレギュラーな指示が織り交ぜられると、大半の選手は戸惑う様子を見せていた。だが、菊池は一人でサラッとこなしていたのだ。自主トレのトレーナーを務める立林聡氏も彼の順応性の高さに驚かされていた。
しかし、センスだけで野球をやっているわけではないのも事実。「難しい体勢からでも送球できる」という表現をよく目にするが、本人からしたら「自分が送球できる体勢で捕っている」だけであって、例えば倒れ込みながらの送球はたやすいことかもしれない。自主トレのノックの際にも、あえて一歩目を遅らせギリギリで捕球する場面が見られるなど、技術を磨くのに余念がなかった。
その感覚を突き詰めていった結果、失策数はレギュラーをつかんだ2013年から18個、12個、10個、4個と年々減少させることができているのだろう。
また、一緒に車に乗っている際、他の人が気づかないような遠くの通行人や面白い看板などをパッと見つけて、よく驚かされることがある。そういった観察力や洞察力が優れているからこそ、身体能力の高さを最大限に発揮し、驚異的なプレーを連発することができるのだと思う。