錦織、完璧を求められたフェデラー戦 フルセット敗戦も高まるGS制覇への期待
休養から復帰のフェデラー 衰えぬ力
休養から復帰したフェデラーと、4回戦を戦った錦織 【Getty Images】
意外な立ち上がりの展開だ。コイントスで勝ったフェデラーが得意のサーブを選んだ第1ゲーム、そのサーブが入らないところを錦織が攻めた。いきなり15−40のブレークチャンスをつかみ、5本目のブレークポイントを奪って先行。さらに第3ゲームも強烈なリターン攻撃で連続ブレークに成功し、一時は4−0、5−1と大きくリードを奪った。
試合開始時の気温は陽光まぶしい29度。センターコートは特に球速の速いコートで、気温上昇でさらに速まると言われる。フェデラーは、第7ゲームの自分のサービスゲームをラブゲームでキープし、リズムをつかんだ。そこから5ゲーム連取で追いつかれた錦織だったが、ここはタイブレークで気持ちを集中して第1セットを奪った。
今年の全豪オープンは人気ひときわで、この日までの前半の動員数で、大会史上初めて50万人を突破。この日のセンターコートには大勢の日本人も応援に駆け付けたが、圧倒的なフェデラーファンで占められた完全アウェーだ。そのサポートに応えるように、フェデラーが第2、第3セットでサーブの圧力を高めて主導権を引き込み、先にブレークして逆転した。錦織は試合後、この流れにやや悔いを残した。
「第1セット、タイブレークでセットは取りましたが、5−2からサービスキープができていれば、第2セットの入り方も違ったと思います。サーフェスが特に速くなったという印象はありませんでしたが、やはりサーブ中心の組み立てをされると厳しいですね」
集中力をなんとか保った錦織だったが……
これだけの相手を前に、これだけの観衆に取り囲まれれば、想像を絶するプレッシャーだろう。フェデラーの復帰を待ちかねていた世界中のファンが固唾(かたず)をのんで1ポイントの行方を見守っていた……そこでトレーナーが呼ばれた。錦織は前哨戦のブリスベン決勝で臀部を痛めており、同じ個所の手当てを受けた。
「フィジカル面では特に問題はありませんでした。少し疲れがたまっていましたが」
試合後の会見では口を濁したが、こうした大一番の土壇場では、痛みよりも蟻(あり)の一穴に現れる、集中力の差。第5セットまで戦ったときの通算成績が15勝5敗と高い勝率を持つ錦織ではあったが、グランドスラムの舞台でフェデラーを相手にすれば、完璧を求められる。第2ゲームを先にブレークされ、その1ブレーク差を必死にキープして追いすがったものの、フェデラーの強烈なサーブは最後まで衰えなかった。
波乱の大会 優勝のチャンスに「もったいなかったですね」
フルセットの熱戦。厳しい状況から粘りを見せた錦織だが、最後は力強いフェデラーのサーブに屈した 【Getty Images】
この後は、5月末の全仏オープンに照準を合わせ、南米でクレーコート2大会に出場予定。若手の台頭に加え、フェデラー、ラファエル・ナダル(スペイン)の復活――道は険しいが、この日のプレーで期待も高まったのではないか。
この日、男女のベスト8の半分が決まったが、女子では第1シードで昨年の覇者アンゲリク・ケルバー(ドイツ)がノーシードのココ・バンダウェイ(米国)に敗れ、男女の第1シードが4回戦でそろって姿を消す大荒れ模様になった。そのほかで勝ち残ったのは、男子がスタン・ワウリンカ(スイス)、ジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)、女子はガルビネ・ムグルサ(スペイン)、ビーナス・ウィリアムズ(米国)とともに、アナスタシア・パブリュチェンコワ(ロシア)が初の全豪8強入りを果たしている。
文:武田薫
◆◆◆ WOWOW番組情報(PR)◆◆◆
全豪オープンテニス
2017シーズン最初のグランドスラム、全豪オープンテニスを全14日間連日生中継。今年最初の王者は誰だ?
2017年1月16日(月)〜1月29日(日)
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ