豪雪の白馬でフリーライドの世界大会 楠泰輔が日本人初のFWT招待選手に

後藤陽一&宮田誠

雪崩のリスクもあり斜面の選定に難航

スタート地点まで歩く選手たち。異例の豪雪により、直前まで会場となる斜面が決まらなかった 【@freerideworldtour / JEREMY BERNARD】

 日本で初めてのフリーライドスキー・スノーボードの世界大会「Freeride Hakuba」が1月17日、長野県白馬村で行われた。

 日本列島を襲った記録的な寒波の影響で、白馬村は連日のように大雪警報が発令される事態となった。1週間前までは雪不足の影響が懸念されていたのがウソのように、一転して白馬村は豪雪地帯の景色へと変貌した。地元の人でもめったにお目にかかれない短期間での大量の降雪に、海外から来た選手は歓喜した。

 しかし、4日間で推定2メートル50センチという異例の豪雪で、当初予定されていた標高約2000メートルからスタートする斜面は、雪崩のリスクが急上昇。会場斜面の選定は難航した。「Freeride World Tour(FWT)」は「セーフティーファースト」を掲げており、国際山岳ガイドを5人含む大会セキュリティーチームが、毎日複数の候補斜面の積雪状況を実際に山に入って徹底的にチェックする。48時間前に会場とスタート時間が発表される通常のタイミングから大幅に遅れ、前日の夕方になってやっと標高約1200メートル地点をスタートにする斜面が会場として発表された。

 白馬村観光局が主体となる実行委員会は、セキュリティーチームの決定を受けて、関係省庁などへの許可の申請やロジスティクスの調整に奔走。ギリギリのタイミングで13日から18日という大会期間(ウェイティング・ピリオド)の中での実施にこぎつけた。

男子スキーは日本選手が優勝

男子スキーで優勝した楠泰輔(中央)は、FWTに推薦枠で招待されることになった 【@freerideworldtour / Jason Halayko】

 午前10時、日本のスノーボードシーンをけん引する長野出身の美谷島慎(びやじま・しん)が1番手として斜度48度の斜面にドロップイン(滑走)。その後、次々と選手が白煙を上げて滑走する。7番手には、スノーボード界のアイコンでもあるトラヴィス・ライス(米国)が登場。他の選手とは一線を画した圧巻のパフォーマンスを披露した。

 世界のスノーボードシーンで圧倒的知名度を持つライスは、過去2年連続で初冬のこの時期を白馬で過ごしている、白馬の山に魅せられたスノーボーダーの1人だ。その活動の大部分を、映像作品を残すことに費やしている彼は、競技大会に出場することはめったにないが「白馬でフリーライドの大会をやるのなら」と、白馬村観光局に自分から出場の話を持ちかけてくれたのだ。

 大会はそのライスが圧倒的なパフォーマンスでスノーボード男子の種目を制し、2位に美谷島が入った。男子スキーでは、楠泰輔(くすのき・たいすけ)が、「Freeride Hakuba」より上位に位置づけられるプレミアカテゴリのFWTから招聘(しょうへい)された海外招待選手を抑えて優勝。海外ではまだ無名に近い日本選手のアグレッシブな滑りは、4カ国から集まったジャッジだけでなく、世界中のフリーライドファンを驚かせた。

 FWTの会長である二コラ・ハレウッズは、アジア初のイベントである本大会をきっかけに、日本の選手を発掘し海外に送り出すこと、さらには日本人チャンピオンを生み出すことを目標にしていることを公言しており、楠は1月末のフランス・シャモニ大会から始まるFWTのツアーに、ワイルドカード(推薦枠)として招待されることを大会終了後の表彰式で発表した。

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