新3強時代へ、鍵を握るのはサンパオリ? スペインリーグ前半戦 監督通信簿

首位レアル・マドリーが差を広げた前半戦

リーガ・エスパニョーラ前半戦の各監督の評価は? 【Getty Images】

 リーガ・エスパニョーラは17日間のウインターブレークを終えて、1月6日(現地時間、以下同)に行われるエスパニョール対デポルティーボから再開する(3日〜5日には国王杯を戦ったチームもある)。

 前回の「監督通信簿」が掲載された昨年10月半ば時点では、首位のアトレティコ・マドリーから6位アスレティック・ビルバオまで、わずか3ポイント差だった。それから約2カ月が経過し、首位に立つレアル・マドリー(勝ち点37)から6位アトレティコ・マドリー(勝ち点28)まで9ポイントに差が広がっている。

 混戦模様から一転、多少のポイント差が生まれたことで、それぞれのチームを率いる監督の評価も上下動した。一躍評価を高めたのは、今月4日にレアル・マドリーの監督就任1周年を迎えたジネディーヌ・ジダンである。

 フランス人指揮官は昨年末まで、同クラブを率いて公式戦53試合を戦い、40勝11分け2敗という成績を収めた。その間、チャンピオンズリーグ(CL)とUEFAスーパーカップ、そして昨年12月に日本で開催されたクラブワールドカップで優勝。さらに4日の国王杯5回戦ファーストレグでセビージャに3−0の勝利を収め、公式戦の連続無敗試合を「38」に伸ばした。

ジダンには称賛の声が絶えず

クラブワールドカップでも優勝し、タイトルを追加したレアル・マドリー。ジダンには称賛の声が絶えない 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 驚異的なペースで結果を残すジダンには、称賛の声が絶えない。「レアル・マドリーの監督として夢のような1年を過ごした」と書いたのは『ベインテ・ミヌートス(20minutos)』紙だ。また『アス』紙の編集長を務めるアルフレッド・レラーニョも「ジダンの登場で(レアル・マドリーに)平穏と成功がもたらされた」と絶賛。そして、『マルカ』紙はレアル・マドリーの監督・選手たちの2016年の通信簿を発表し、ジダンには10点満点中10点をつけた。

「確かに私は非常に幸運な男だ。それは正しい」と本人が認めるように、ジダンが勝ち運に恵まれているのは確かだろう。実際、これまでに獲得したタイトルはいずれも、延長戦やPK戦まで戦った末に獲得したもの。「勝負は紙一重」と言われるように、どの決勝戦でもレアル・マドリーは“敗者”となる可能性があった。しかし、タイトルマッチだけでなく普段の試合から驚異的なペースで勝利を重ねていくのだから、「運だけで成功をつかんだ」と言うことはできないはずだ。

 7日のグラナダ戦、12日のセビージャとの国王杯セカンドレグに負けなければ、レアル・マドリーの連続無敗試合は「40」に到達。15年10月から16年4月にかけて39試合連続無敗を続けたバルセロナが持つ“スペイン記録”を更新することになる。つい数カ月前には「勝っているだけ(負けないだけ)」と揶揄(やゆ)された時期もあったが、これほど長く負けなかった監督は数えるほどしかない。その事実は、ジダンの偉大さを雄弁に物語っていると言えるだろう。

レアル戦で評価を下げたエンリケとシメオネ

バルセロナのエンリケ(右)とアトレティコ・マドリーのシメオネ(左)。両指揮官は、この2カ月間で共に評価を下げた 【写真:ロイター/アフロ】

 一方、バルセロナとアトレティコ・マドリーの両指揮官は、この2カ月間で共に評価を下げた。決定打となったのは、いずれもレアル・マドリーとの直接対決だ。

 バルセロナは12月3日に行われたホームでのクラシコ(伝統の一戦)で、試合終了間際に同点弾を許して1−1のドロー。また、アトレティコ・マドリーもホームでのダービーで0−3と完敗。さらにルイス・エンリケとディエゴ・シメオネは結果だけでなく、試合に向けた策という点でもジダンの後塵を拝した。

 特に前者には試合後、「クラブ伝統のスタイルを放棄している」という批判の声が多く寄せられた。エンリケは“グアルディオラ後”に苦労していたチームにカウンターという新機軸を持ち込み、就任1年目で3冠を達成。さらに2年目の昨季も国内2冠を成し遂げるなど申し分ない成果を残してきた。

 しかし、今回の試合ではフィジカル戦に挑んだことが裏目となって、「バルサらしくない」(『エル・パイース』紙)と地元メディアやファンの間で不満が噴出。なかでも『スポルト』紙は、「ルイス・エンリケはペップ・グアルディオラではないし、今後彼に並ぶこともない。グアルディオラはアイドルだったが、エンリケは“ただの”監督である。バルセロナでの将来はチームの成績次第だ」と辛らつな評価を下している。

 ここにきて、後任人事に関するうわさが飛び交い始めているのも、エンリケへの風向きの変化と捉えられる。同監督は今季いっぱいで満了となる契約について、シーズン終盤に答えを出すという態度を貫いているが、クラブ側は早期の回答を要求しているもよう。その温度差につけ込むように、メディアは日々、さまざまなうわさを報じており、こうした外野からの声にうまく対処しながらチームを勝利へと導くことが、エンリケには求められている。

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著者プロフィール

1984年生まれ、徳島県生まれ。マニュアル制作会社に勤めた後、2011年夏からフットメディアに所属。J SPORTSのプレミアリーグ中継や『Daily Soccer News Foot!』などに関わり、ライター・翻訳をメインに活動する。学生時代にはバルセロナへ1年間留学。ルームメイトがアルゼンチン人だったこともあり、南米コミュニティーのなかでフットボールのイロハを学べたことが今の財産。

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