4区、5区の距離変更がレース展開に影響 駒大OB神屋氏が箱根駅伝往路を解説

構成:スポーツナビ

青山学院大が堅実なレース運びで3年連続となる箱根駅伝往路制覇を達成した 【写真:アフロスポーツ】

 第93回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が2日、東京・読売新聞社前から箱根・芦ノ湖までの往路5区間107.5キロのコースで行われ、3連覇&大学駅伝3冠を狙う青山学院大が5時間33分45秒で3年連続となる往路優勝を果たした。2位は早稲田大で5時間34分18秒。3位は順天堂大で5時間36分9秒。

 1区では、東洋大の服部弾馬(4年)を先頭にお互いがけん制しあうスローペースの展開。その中で、早稲田大の武田凜太郎(4年)、駒澤大の西山雄介(4年)、青山学院大の梶谷瑠哉(2年)、東海大の鬼塚翔太(1年)、神奈川大の山藤篤司(2年)によるスパート勝負になり、最後は服部が意地を見せてトップでたすきを渡すと、4秒差で青山学院大の梶谷も2区のエース・一色恭志(4年)につなぐ。一色はすぐに先頭で集団を引っ張るが、神奈川大の鈴木健吾(4年)が前に出ると、トップを譲って2位で3区へ。中継所の時点で神奈川大との差が38秒だったが、これを秋山雄飛(4年)が一気にひっくり返して、そのまま突き放す。その後はトップを譲ることなく、4区・森田歩希(2年)、5区・貞永隆佑(3年)も快走し往路を制した。

 一方、早稲田大は2区で6位まで順位を下げたものの、3区の平和真(4年)が順位を上げる。5区の安井雄一(3年)も青山学院大との差を33秒まで縮め、復路での逆転優勝を狙う。

 往路のレースについて駒澤大の元エースで、現在は東京経済大学駅伝監督の神屋伸行氏に、勝敗を決めたポイントや復路への展望を聞いた。

大砲なくとも堅実なレース展開で青学が往路制覇

大黒柱の一色(左)を2区に置いたが、それ以外のメンバーは体調面や経験などを考慮してのオーダーに見られた 【写真:アフロスポーツ】

――青山学院大が3年連続となる往路優勝を飾りました。今回のレースを振り返っての印象は?

 青山学院大は実績を残している大黒柱の一色選手を2区に配置しましたが、そのほかの区間では、調子が良いか悪いか、経験は薄いけどこれからの選手かというような判断基準でオーダーを組んだように見えました。
 1区の梶谷選手、4区の森田選手も無難な走りを見せましたし、3区の秋山選手は状態が懸念されていましたが、しっかり区間賞を取る走りを見せてくれました。
 大砲の一発でどうにかしたいというチームではなく、堅実にコツコツときちんとたすきをつないでいけば勝てる力を見せ、チーム力が高い印象でした。

――各区間を振り返ると、1区では非常にスローペースな入りとなりました。

 昨年は積極的に攻めた青山学院大の久保田和真選手が、速いペースの展開に持ち込んだのですが、今年は決め手になるほどの選手がいなかったのもありました。お互いを意識しあって、「区間賞を取りたい」「良い流れを作りたい」という意識が強く働いたのかと思います。
 ここ数年は速い展開のレースが続きましたが、元々1区はけん制しあうことが多いので、元の1区に戻ったように見えます。

――その中で東洋大の服部選手がトップでたすきをつなぎましたが、後続との差はほとんど開きませんでした。

 レース前は服部選手が1区で大きく差を付けたいという話も出ていましたが、やはり1区でそこまでの重責を担うことはなかなかできるものではありません。服部選手は途中で出ようとする姿は見せましたが、東海大の鬼塚選手らの反応が良かったことで、最低限として区間賞を取るという意識が働いたのだと思います。
 また、4区、5区の距離変更が1区の心理面にも影響していたと思います。昨年までは1区から3区で差を作り、4区で一気に広げて、5区の長丁場に持っていく展開だったと思います。ですが、今回は1区から5区まで満遍なく力を配置する必要があるので、1区が重要というより、きっちり走れればということでけん制したのだと思います。

――序盤にリードを奪うことよりも、遅れてしまうことが致命的なミスになると?

 そうですね。全体にも言えますが、どの区間も堅実にたすきを運んでいくことが大事になり、これが本来の箱根駅伝での走りなのかと思います。

後半の走りに強さを見せた神奈川大の鈴木

一色は万全な状態に見えなかったがしっかりと責任は果たした。一方で神奈川大の鈴木(右)が2区で強さを見せた 【写真:アフロスポーツ】

――2区に関してはどんな印象を受けましたか?

 1区の流れを受け、神奈川大の鈴木選手が力を発揮しやすい展開になったと思います。箱根駅伝予選会でも鈴木選手は強さを見せたので、本番でも自信を持って臨めたようでした。青山学院大の一色選手に関しては全日本大学駅伝の疲れや、次回に控えるマラソンへの調整もあり、箱根に合わせていたという感じには見えません。チームとしても、きっちり走ってくれればいいという感じのレースでした。是が非でも前に行きたい鈴木選手と、きっちり走ることが求められた一色選手の間に意識の差が生じたのかと思います。

――鈴木選手は区間賞を獲得する走りを見せましたが、鈴木選手の強さはどんな部分ですか?

 予選会でもそうでしたが、15キロを過ぎてから、起伏がある残り5キロの中で、逆に伸びてくる走りが見られました。今回の2区も最初の10キロは力試し的な部分があり、(13キロ過ぎにある)権太坂から本格的な2区のレースになります。権太坂に入ったところで後ろを向いて揺さぶるシーンも見せましたが、下りでパッと前に出て、後半の上りも何とも思っていないような走りを見せ、強さを感じました。

 2区は全体的に、力をつけている上級生の選手が確実にたすきを運んだという印象でしたが、その中でも順天堂大の塩尻和也選手(2年)が好走し、チームに勢いをつけたと思います。その結果が順天堂大の往路3位に繋がりました。

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