“井上尚弥、敵なし”を印象付ける完勝 世界最強ロマゴンとの対決は実現するか?

平野貴也

河野の選択肢を絞りカウンターでし止める

WBO世界Sフライ級王者・井上尚弥が元世界王者・河野公平に完勝し、4度目の防衛に成功した 【写真:ロイター/アフロ】

 もう、戦う相手がいない――。試合を見る度に、その思いは強くなる。

 井上尚弥(大橋)は、また完勝を収めた。12月30日に東京・有明コロシアムで行われたプロボクシングWBO世界スーパーフライ級王座戦は、王者の井上が河野公平(ワタナベ)との日本人対決を6ラウンド1分1秒TKOで制して4度目の防衛に成功した。フットワークと強烈なジャブ、ガードしきれない左ボディブロー。23歳の若き王者は、最初の3ラウンドで相手の選択肢を1つに絞らせ、残された活路に踏み込んだところへカウンターの左フックを一閃して決着を付けた。立ち上がった36歳のベテランには、襲い来る井上のラッシュをしのぐ力など残されていなかった。

 河野は「相手のジャブがストレートのように強かった。相手は若くてスピードもスタミナもある。距離を取るのが本当に上手い。離れていたらやられる。最初の3ラウンドで倒されるかと思った。相手の左ボディーは、ここでガードしていたけど、こういう感じで……少し効きましたね」と右腕をたたんで脇腹を隠したひじを指し示し、ブロックした後に、いわば流れ弾のような形で正面あるいは脇の腹を叩かれたシーンを振り返った。

 待っていたら、やられる。中間距離でも相手の方が速くて不利。前に出るしかなくなった。井上は第4ラウンドから手数を減らして、ステップワークやボディーワークで相手の様子を見る時間を増やした。スピードで劣る河野は、手を出しながら距離を詰めるしかない。井上は「ああいう出方しかないだろうと思った。自分から(前に)行くパターンも持っていたけど、左を合わせるのは、イメージ通り。(左ボディーが当たったときに)行けたけど、パンチの癖や出方を見ながらやっていた」と冷静に振り返った。相手の河野は、これまでにWBAスーパーフライ級王座を2度獲得。9月に防衛戦で敗れるまでは現役の王者だった。それでも、まったく寄せ付けない完勝だった。

河野「彼が世界で戦う姿が見たい」

河野は策を絞られてしまい、前に出るしかなくなった。そこに井上のカウンターが入り、試合が決まった 【写真:ロイター/アフロ】

 もちろん、大橋秀行会長が「河野君は、勝負をかけて倒しに来た。勇気を持って来てくれたから、こうなった」と話したように、河野に勇気がなければ起こらないKO劇でもあった。

 ノーモーションの右など用意して来た対抗策がうまく成功しなかったという河野は「(距離を取っている間に)ボディーで倒れちゃったら、なんだ……という感じになる。相手がガードしながら(こっちの動きを)見ていたのは、分かっていた。でも、だからと言って行かないわけにもいかない。行かなければ、何もしないで終わってしまう。(前に行って)これからというところでカウンターをもらってしまった」と前進を選択した理由を明かした。もう一度やれば勝てると言うのは難しい内容だった。完敗は認めざるを得ない。河野が口にしたのは言い訳ではなく「一人のボクシングファンとして、彼が世界で戦う姿が見たい」という井上へのエールだった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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