守備力の福岡第一、桜花学園は総合力のV ウインターカップに見た高校バスケの今

平野貴也

3冠のプレッシャーをはねのけた桜花学園

女子は桜花学園が3冠を達成。選手層の厚さと総合力を見せつけた 【坂本清】

 女子は、桜花学園(愛知)が2年ぶり21度目の優勝で女王の座に返り咲いた。前回大会では、女子では初となる3年連続の3冠達成が懸かるプレッシャーに苦しんだ部分もあり敗れた。しかし今大会では、決勝で前回優勝の岐阜女子(岐阜)を67−65の接戦で下して今季3冠を達成した。桜花学園は、決勝戦の先発5人が全員U−18女子日本代表。選手層の厚さと総合力で、猛追した岐阜女子を振り切った。

 決勝で昨年同様にファウルトラブルに陥りながら、ゲーム最多の25得点をたたき出した桜花学園の主将、馬瓜ステファニーは「去年は消極的になって負けたので、今年は(ファウル数が重なっても)積極的に攻めようと思っていた。昨年は明らかに自分のせいで負けた。今年は、『お前のおかげで勝てた』と言われるくらいに頑張ろうと思っていた」とコート上のインタビューに応えて涙を流した。

 一方、僅差で連覇を逃した岐阜女子の主将、藤田歩は「2度負けて、ディフェンスで厳しく当たることをやって来た。追いつくところまではできていたけど、突き放されてからはできなかった」と肩を落としていた。

崩せなかった2強体制

赤穂ひまわり(左端)を擁する昭和学院だったが、2強を崩すことはできず 【写真:加藤誠夫】

 優勝争いは、完全に2強が主役だったが、選手個人では3位になった昭和学院(千葉)の赤穂ひまわりが圧倒的な活躍を見せた。双子の雷太も男子の市立船橋の8強進出に貢献しており、赤穂ツインズが東京体育館で躍動した大会だったとも言える。住友金属や松下電器でも活躍したビッグマンだった赤穂真さんを父に持つバスケット一家の次女は、身長184センチの体格を生かし、個人成績で圧倒的な数字を残した。得点、リバウンド、フリースロー成功率、ブロックショットの4部門でトップ。4強の中で唯一6試合(ほかは5試合)を戦ったことも影響しているが、得点とリバウンドでは2位に49点、49本の差をつけており、ダントツだった。

 ただし、逆に言えば赤穂がいても2強に並ぶことができなかったという現実がある。今季は、3冠すべての決勝が桜花学園と岐阜女子の顔合わせだった。混戦模様だった男子とは対照的に、女子は2チームが突き抜けた存在であることが結果として如実に表れた。

 3位となった昭和学院を率いた鈴木親光コーチは、準決勝で岐阜女子に敗れた後で「あのレベルに慣れるのに時間がかかってしまう。両チームは同じ東海地区で何度も対戦して刺激を受け続けている。われわれも関東で切磋琢磨(せっさたくま)して、2チームに食らいついてチャレンジできるように選手を育てたい」と2強との差を認めつつ、追い上げる気概を示した。女子は今後も2強が続くのか、昭和学院や大阪薫英女学院(大阪)、8強で敗れた札幌山の手(北海道)、開志国際(新潟)が2強体制に割って入るのかが注目される。

Bリーグが選手たちの新たな目標に

 最後に、大会において競技面のほかにも新たな動きが見られたことを記しておく。まず、最優秀応援賞の新設だ。大会を主催する日本バスケットボール協会の主導によるもので、来場者や報道陣による投票で、男女アベック出場を果たして互いに声援を送っていた県立広島皆実(広島)が選出された。近年、高校スポーツは主体的な応援が広がりを見せており、賞の設置は拍車をかけるものになるかもしれない。

 ほかに、男子では9月に新たなプロリーグ「Bリーグ」が誕生したため、優勝した福岡第一の1年生ルーキー松崎裕樹らが将来の目標としてBリーグ入りを視野に入れていた。リオデジャネイロ五輪で女子が活躍し、男子はBリーグ誕生と、今年話題の豊富だったバスケットボール界。その未来を担っていく世代が、この大会を通じてどのように歩んでいくのか、非常に楽しみだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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