真央「選手である以上、挑戦が必要」 競技者として貫くプライド

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トリプルアクセルは2本ともミス

涙に暮れたGPシリーズ、全日本は12位。しかし、戦い続ける彼女はもう、下を向いてなどいなかった。写真は11月フランス杯 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 浅田真央(中京大)にとって14回目となる全日本選手権は、過去最低の12位に終わった。合計得点は174.42点。優勝した宮原知子(関西大)には、実に40点もの差をつけられ、世界選手権の出場も逃した。

「この全日本では自分の滑りや、目標としていたことを全部やりたかったんですけど、それができなくて残念です」

 ショートプログラム(SP)後には、8位スタートながら笑顔も見せていた。だが、フリースケーティング(FS)後は悔しさをかみしめつつ、何か達観しているような表情を浮かべていた。浅田は言う。

「まだ終わったばかりなので、次という気持ちにはなれないんですけど、今回は自分が今までやってきた最高のレベルで臨みたかったので、その状態にまで戻せたことは良かったと思います」

 その言葉どおり、この全日本ではSP、FS共に自身の代名詞であるトリプルアクセルに挑んだ。同時にプログラムの難易度も上げており、それをこなせる状態にまで調子が戻っていたことを裏付ける。トリプルアクセルは2本とも失敗し、その他のジャンプにもミスがあったものの、演技構成点は宮原に次ぐ2位。地力はしっかりと見せた。

 ジャンプさえ跳べれば点数はおのずと上がってくるのだが、今季はそれがうまくいかない。左ひざ負傷の影響もあるのか、スピード、高さ共にこれまでのシーズンと比べて劣っているように見える。

高得点なだけに失敗すると……

SP、FSの両方で、トリプルアクセルに挑んだ 【坂本清】

 休養明けから復帰2年目のグランプリ(GP)シリーズは、スケートアメリカで6位、フランス杯で9位と不本意な順位に甘んじた。ジャンプは跳ぶのが精いっぱい。フランス杯では演技後に、「すべてが失われた。スケーティングもジャンプも、全部がしっくり来ていない」と、涙に暮れた。

 それを考えれば、全日本までの1カ月ちょっとの間で、トリプルアクセルをプログラムに組み込む状態にまで調子を取り戻すことができたのは、彼女のたゆまぬ努力に他ならない。満足いく練習を積み重ねてきたようで、その手応えもあったのだろう。大会前日には「今季の中では最も調子が良い」と、口調も滑らかだった。SP当日の公式練習では、トリプルアクセルを成功させ、復活への機運は高まっていた。

 しかし、練習と本番は違う。緊張感が高まる中では、まだ跳べる状態ではなかった。SPはシングルアクセルになり、FSでは両足着氷から転倒した。トリプルアクセルはリスクの高い大技だ。跳べれば高得点(基礎点は8.5点)が付き、勢いにも乗れるが、失敗すれば点数にも体力にも影響する。

 女子のSPではダブルアクセル以上を跳ばなければいけないため、シングルでは0点になる。浅田はSPでジャンプ1つ分の点数を失ってしまった。FSでも回転不足と転倒により、GOE(出来栄え点)でマイナス評価を受け、1.80点しか得られなかった。全神経を集中させなければ跳べない大技。それに失敗すると、その後の演技に影響が出るのは当然とも言える。

 事実、浅田がFSで跳んだ他の6つのジャンプで加点が付いたのは、3回転ルッツと3回転ループの2つだけ。あとの4つは回転不足を取られたり、転倒したりとミスが出た。そうした中でも、スピンやステップでレベル4を取るのはさすがだが、それだけにジャンプの失敗が悔やまれる。

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