歴史的な「4回転合戦」と「精神戦」 羽生、宇野、宮原が挑むGPファイナル

 シーズン前半の世界一を決定する「グランプリ(GP)ファイナル2016」が現地時間12月8日から、フランスのマルセイユで開催される。GPシリーズを勝ち残った男女上位6名ずつのトップ選手によるハイレベルな争いが期待できる。日本からは、男子は羽生結弦(ANA)と宇野昌磨(中京大)、女子は宮原知子(関西大)が参戦。また同時開催となるジュニアのGPファイナルにも本田真凜(関西大中・高スケート部)と紀平梨花(関西大学KFSC)、坂本花織(神戸FSC)が出場しており、見逃せない一戦となりそうだ。

男子はフリーで4回転5本の選手も

4連覇が懸かる羽生結弦。昨年の同大会では世界歴代最高得点を更新しており、その再現が期待される 【写真:アフロスポーツ】

 男子は、昨年から大きな時代の変革期を迎えている。2010年バンクーバー五輪で4回転を跳ばない五輪王者が誕生してからわずか6シーズン。4回転ジャンプは「複数種類」「複数本」が当たり前になった。しかもショートプログラムで4回転2本という選手が一気に増えた上、フリースケーティングでは5本も挑戦する若者まで現れている。4回転の大技を次々と繰り出し合い、歴史に残る4回転合戦が繰り広げられることだろう。

 もちろん優勝候補筆頭は羽生だ。昨季の同大会では330.43点という歴史的なハイスコアをマークし、この記録を打ち破る可能性がある選手は、世界には皆無という状況。羽生自身も新シーズンを迎え、自身の記録との戦いになっている。今季は新たに4回転ループを加え、フリーでの4回転は、昨季の3本から4本へと増加。もしすべてのジャンプが決まれば、昨季マークした世界記録をまた更新することは確実だ。

 一方、羽生と同門のハビエル・フェルナンデス(スペイン)も譲らない。昨季は世界選手権で314.93点をマークしての金メダル。300点超えを果たしているのは羽生とフェルナンデスのみという2強時代に突入している。フェルナンデスの4回転は「ショート2本、フリー3本」で昨季と同様の組み合わせ。昨季はまだ全ジャンプをパーフェクトでこなしていないため、今季はジャンプの成功率と質を高め、さらなる進化を目指している。

 また長いこと男子のトップグループに君臨している25歳のパトリック・チャン(カナダ)も、五輪前のシーズンということもあり今季は調子を上げてきた。これまでは4回転ジャンプに頼らない、基礎スケーティングと表現力が強みだった。しかし昨季からの劇的な4回転“複数化”時代において、2種類目の4回転の練習に取り組み、フリーでは4回転3本を入れている。ジャンプが決まれば、高い演技構成点が期待できるチャンも表彰台候補だ。

宇野が300点超えの王者に挑戦

羽生、ハビエル・フェルナンデスといった300点超えを達成している王者たちに挑むのが宇野昌磨だ。どこまで2人に迫ることができるか 【坂本清】

 日本からは、4回転フリップをギネス認定された18歳、宇野が出場する。トウループとフリップの2種類の4回転を武器に、300点超えの王者たちへと挑む。すでにスケートアメリカのフリーでは「4回転3本」を成功させており、仕上がりは上々。どこまで王者たちに迫れるか。メダルも期待される。

 話題を呼んでいるのは、今季シニアデビューの17歳、ネイサン・チェン(米国)。4種類の4回転を持つジャンプの天才である。フリーで「4回転5本」に挑戦しており、もしGPファイナルで成功させれば、前代未聞の「基礎点」そして「総要素点」が記録されることだろう。

 また27歳のアダム・リッポン(米国)は、シニア9年目にして初のGPファイナル出場。長年苦しんだ4回転ルッツをいったんやめて、今季は4回転トウループに切り替えたことで、成功率は上がっている。独創的な振り付けと、音楽を身体全体で表現する力があり、エンターテインメント性ではトップといえる選手だ。

 それぞれ4回転の本数、正確さ、そして表現力など、違う個性をぶつけあう一戦となるだろう。

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