【UFC】 静かなるP4P王者D・ジョンソン 冒険の2017年を目指して――
最強戦士、つかの間の休息
7月の大会をケガで欠場したデメトリアス・ジョンソンが、久しぶりの防衛戦に臨む 【Zuffa LLC】
UFCがフライ級を創設してから4年間、ジョンソンの夏の過ごし方といえば、次の試合に向けた練習に打ち込んでいたか、実際に試合に出場するというものであった。しかし、今年は7月の「UFC 201」でウィルソン・ヘイス(ブラジル)戦の予定があったものの、ジョンソン自身がケガをしてしまい欠場を余儀なくされたのだ。
「不幸中の幸いとでもいうのか、これで4年ぶりの夏休みを取ることができた。家族とゆっくり過ごせたことはよかったね。たまには休みを取って、自分のことや家族のことだけを考えて過ごすのも悪くない」
「僕は自分の『Twitch』アカウントを充実させたり、2人の息子とディズニーランドに遊びに行ったり、モンタナ州でキャンプを楽しんだりしていた」
『Twitch』とは世界最大級のゲーム専用配信サイトのことだ。ジョンソンのゲーム好きは有名で、11月にはUFCファイターとして初めて、『e Sports(eスポーツ)』の運営企業とスポンサー契約を結んでいる。
「もうほとんど、MMAから引退したみたいだったよ。MMAの世界での出来事をまったく気にすることなく、家族と過ごしていた」
おかげでケガもすっかり癒えた。
世界中のチャンピオンがジョンソン包囲網
【Zuffa LLC】
番組でトレーニングパートナーだった2人の対決は互いに相手のことを知り尽くしているとあって、テイクダウンを狙う展開となる。第2ラウンドであと一歩のところでサブミッション勝ちを逃したエリオットが勢いを緩めず攻め続け、3対0の判定(3人のジャッジとも30−27)で文句なしの勝利を決めた。
2015年にUFCを解雇された後、3連勝してTitan FCのタイトルを勝ち取り、今回のTUFに参戦したエリオットが絶望のどん底から一気にジョンソンとのタイトルマッチ挑戦権を手中に収めたのである。
デメトリアス・ジョンソンがエリオットを迎え撃つUFCフライ級タイトルマッチをメインイベントに、日本時間12月4日(日)に開催される「TUF 24フィナーレ」はまさにフライ級祭り。恒例のTUFコーチ対決、ジョセフ・ベナビデス(フライ級1位、米国)対ヘンリー・セフード(フライ級2位、米国)もセミメインイベントとして行われる。
TUFといえばこれまで、若手選手がUFCとの契約を目指して競い合うコンセプトの番組だったが、今回はジョンソンの対戦相手を探すために戦うという異例の座組となった。これはとりもなおさず、ジョンソンが強すぎて、フライ級の上位ランカーを一掃してしまったために、もはや挑戦者がいなくなっていたからなのだ。
2012年3月にUFCにフライ級が創設されて以来、デメトリアス・ジョンソンは唯一のUFCフライ級チャンピオンである。
前回の試合(「UFC 197」)では、無敗の五輪金メダリスト、セフードを3分もかからずに料理してしまった。このセフード戦での勝利により、ジョンソンのタイトル連続防衛記録は「8」となった。UFCのタイトル連続防衛回数は、ジョンソンとジョン・ジョーンズ(米国)が8回、ジョルジュ・サンピエール(カナダ)が9回、そしてUFCレコードはアンデウソン・シウバ(ブラジル)の10連続防衛である。
ジョンソンは8連続防衛のうち、5戦で試合をフィニッシュ。ジャッジのスコアカードでも、2013年1月のジョン・ドッドソン(米国)戦で2度のフラッシュダウンを喫した第2ラウンドを除き、全ラウンドを制している。そのドッドソン戦でも、ジョンソンはすぐに復活して試合に戻り、残り3ラウンド半を優勢に戦い抜き、全会一致の判定勝ちを収めた。チャンピオンとしてこれまでオクタゴンで合計1時間51分8秒にわたって戦ってきたジョンソンにとって、危ないと思われたのはこのわずか1分足らずだけのことだったのだ。
こうしたほぼ完璧な戦績で、ジョンソンはUFC公式ランキングのパウンド・フォー・パウンド(P4P)部門(同一体重であると仮定したランキング)で、怪物ジョン・ジョーンズや、今をときめくコナー・マクレガー(アイルランド)を押さえて現在第1位に陣取っているのである。